富士通と津田塾大学は、患者へのサービスの質の向上と地域のサービス提供の効率化の両立を目指すソーシャルデザインの共同研究を8月25日から開始した。
AIなどのデジタル技術と実証経済学などの人文社会科学の知見を融合したコンバージングテクノロジーにより、限られた社会資源で質の高い医療や健康サービスを提供できる体制の実現を目指す。
高齢化が進む中で、限られた社会資源を効率的に使い、医療や介護の質を維持できる持続的なサービス提供体制の構築が世界的な社会課題となっている。
しかし、疾病予防や治療、予後などの医療・健康サービスは個別に提供されており、患者の状態や状況に応じて各サービスが全体最適で連携できていたのが現状だ。
また、医療や健康サービスの質を向上しようとすると、多くの社会資源が必要となり、サービス提供の効率が低下するというトレードオフの関係も大きな課題となっている。
これらの課題解決に向けて、富士通のデジタル技術と津田塾大の実証経済学の観点での研究における知見を融合させ、高齢化社会に対応した持続的で柔軟な地域医療提供の実現に向けたソーシャルデザインの共同研究を行うことにした。
地域全体で疾病予防や治療、予後などの各段階に応じて患者が受ける医療や健康サービスの流れ(ケアパスウェイ)をデジタル化し、実証経済学の知見に基づきAIによりケアパスウェイを分析する。
これにより、医療提供体制の偏りや入院の長期化といったボトルネックを抽出し、改善案を探索するケアパスウェイ設計技術を富士通が開発する。
この技術を活用し、両者は医療機関や自治体の協力の下、患者や自治体、サービス提供者への改善提案や、改善案の社会実装に向けた合意を形成するための方法論の確立を目指す。
また、山形大学などと連携し、地域完結型医療の構築が進められている山形県での入院記録や外来診療記録などの医療・健康データで検証する。
その後、共同研究の成果を山形県などの地域医療提供に適用することで、有効性の検証を図る。共同研究は来年3月31日までだが、4月1日以降も継続を予定している。