〈対談・インタビュー〉の記事一覧
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「在宅とは集合住宅」と突きつける2024介護報酬改定ー川名佐貴子さんに聞く🆕

「在宅とは集合住宅」と突きつける2024介護報酬改定ー川名佐貴子さんに聞く🆕

 訪問系介護保険サービスの基本報酬が引き下げられた今年度の介護報酬改定によって、介護はこれからどうなっていくのか。福祉ライターの川名佐貴子さん(元シルバー新報編集長)に聞いた。
 
■医療側に多死時代への危機感
――基本報酬の減額がクローズアップされていますが、それ以外に今回の改定で印象的なことは。
 
 今回のダブル改定から、2040年は死亡数がピークになることを改めて痛感させられた。施設に協力医療機関との連携を義務付け、入院させる前に相談せよとか、できるだけ病院では死なせないという、これまでに以上に強いメッセージを感じている。
 
 それだけ医療の方は、この先の社会の変化に危機感を持っているっていうこと。医療の側には、寿命を迎えている高齢者など助かる見込みのない人が大挙して病院に押し寄せてきたらどうするのか、みたいな問題意識がすごくある。
 
 介護報酬改定でもターミナルケアは拡充されたが、私が3年前に記者として取材していた当時と変わりがない。現場もまだ最期は病院に送ればいいと…

地域包括ケアの今とフレイル予防への期待(下 )

地域包括ケアの今とフレイル予防への期待(下 )

■フレイル予防というミッション
髙橋 介護保険ができた2000年当時と比べて長寿化が進み、介護予防に加えてフレイル予防という概念が定着しています。辻󠄀さんはフレイル予防推進にかかわっていますね。
 
辻󠄀 フレイルとは加齢に伴う虚弱のことですが、これは老いに伴う現象であって病気ではない。もちろん病原性のフレイルもあります。例えば脳卒中を起こして、まひが残るなど心身の状態が落ちるのも、フレイルです。糖尿病も、フレイルを進行させる要素です。
 
 でも、フレイルの根本は、老いたら弱るという自然現象なんですね。この領域には生活習慣病のように特効薬はありません。ただし、フレイルの段階だと、高齢者自身の一定の行動変容だけで進行を遅らせたり、軽減させたりできるという可逆性があります。
 
髙橋 高齢者が亡くなるまでの経過は、辻先生の同僚であられた秋山弘子東大名誉教授の論文で指摘されているとおり、その要因によって大きく3パターンに分かれますね。日本人の死因1位であるがんは…

地域包括ケアの今とフレイル予防への期待(上)

地域包括ケアの今とフレイル予防への期待(上)

■地域包括ケアの各システムのモデルがない
髙橋 2022年3月、「地域包括ケア」の生みの親かつ名付け親である山口昇医師が逝去されました。90歳でした。
 
 山口先生は今から50年近く前、御調国保病院(現・公立総合みつぎ病院=広島県尾道市。当時は御調郡御調町)で「寝たきり老人ゼロ作戦」を始め、その一環として「医療の出前」を実施したことでも知られています。
 
 そして2023年は、介護保険の創設に尽力された池田省三氏の没後10年です。池田氏は介護保険について、創設後も発言し続けましたが、その主張は常にデータに裏打ちされていました。
 
 高齢者ケアに大きな足跡を残したお2人を思い出し、時の流れを感じます。今の地域包括ケアシステムについて、辻󠄀先生はどう見ておられますか。
 
辻󠄀 地域包括ケアシステムの概念が国の政策の舞台に現れたのは、2003年の厚労省の高齢者介護研究会の報告書です。
 
 そして法律上、その考え方が介護保険法の条文に加えられたのは、2011(平成23)年改正で、2014年の医療介護総合確保推進法で地域包括ケアシステムの定義が法律上なされ…

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重症心身障害児と地域で歩む 「訪問の家」の50年③

重症心身障害児と地域で歩む 「訪問の家」の50年③

■ターミナルに向き合う
髙橋 1993年に「朋診療所」を開設されました。そのいきさつや、医療との関わりを教えてください。
 
名里 神奈川県では、障害をもつ子どものほとんどが県立こども医療センターに通います。「朋」のメンバーたちも同様なんですが、ところが18歳なると容赦なく、もうこども医療センターでは診られない、次のところに行ってくださいと言われてしまいます。
 
 次のところとは、一般の総合病院です。だけど、総合病院は障害のある人を診たことがなく、なかなか受け入れてくれません。こども医療センターの後に診てくれる主治医を探すのが大変で、自前のクリニックをもとう、となったんです。
 
 もう1つは、進行する病気で、何回も入退院を繰り返し、どんどん状態が厳しくなってしまうメンバーがいました。その方のお母さんが日浦に「朋はどこまで付き合ってくれる?」と聞いたそうです。診療所を開く前で、「朋」には週に何回か、嘱託医が来るだけでした。
 
 そう聞かれて、日浦は「ずっと付き合いたい。最後まで付き合いたい」と答えました。でも、本当にそうするためには医療機関が必要です。それで、施設内診療所をつくる認可を得て、嘱託医だった宍倉啓子医師に診療所長になってもらいました。所長は、今も宍倉先生です。
 
 今、「朋」のメンバーの主治医はほとんどが病院医師で…

重症心身障害児と地域で歩む 「訪問の家」の50年②

重症心身障害児と地域で歩む 「訪問の家」の50年②

■「散歩に出ますか」への答え
髙橋 日浦さんは「文化としての社会福祉施設」ということを、しばしばおっしゃっています。とても印象深く、重要なキーワードでもあります。
 
名里 この言葉を説明するには、通所施設「朋」をつくった時のことからお話ししないといけません。
 
 先ほどお話ししたように、「朋」はもともと障害者のための作業所でした。当時の福祉制度には重度の障害児者の通所施設はなく、日浦は、重い障害がある人も、昼間通所して幅広い活動ができる場所が必要と考え、横浜市とも折衝していました。
 
 そうしたら横浜市から、そういう場所、すなわち知的障害者のための通所施設をつくったらどうですか、と打診されたのです。
 
 しかもその立地として、戦後、もとは山だった所を高級住宅地として開発した地域を提案されました。その一角が市の所有地だから、そこに通所施設を開設したらどうですかと。
 
 こちらとしてはありがたい話で、ではそうします、となります。ところが、地域住民の反対に遭うんですよ。地域全体が反対していると聞かされます。でも実は、後で聞いたら全然そうではなく、当時の自治会の役員が強硬に反対しておられました。
 
 役員は「福祉施設を建てるというが、文化施設ならいざ知らず、福祉施設はこの高級住宅地には馴染まない」という…

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重症心身障害児と地域で歩む 「訪問の家」の50年①

重症心身障害児と地域で歩む 「訪問の家」の50年①

髙橋 今回のゲストは、横浜市の社会福祉法人「訪問の家」の名里晴美理事長です。「訪問の家」は障害者向けの通所施設やグループホーム、地域活動ホーム、多機能型拠点などの事業と、高齢者向け事業、それに診療所も運営し、先駆的な実践を次々に展開してきたことで知られています。
 
 「訪問の家」は、前身から数えると誕生から50年を過ぎました。創設者である日浦美智江前理事長は、重症心身障害児者の地域生活を先駆的に支援され、名里さんはその後継者です。本日は「訪問の家」の歩みを中心に、障害ある人とともに生きることについてお話しいただきたいと思います。
 
■スタートは「訪問学級」「母親学級」
名里 社会福祉法人「訪問の家」の発端は、1972年(昭和47年)にさかのぼります。この年、横浜市立中村小学校に訪問学級が開かれ、前理事長の日浦美智江がその母親グループの担当となりました。
 
 これは重症心身障害児の学級で、当時の言葉でいう養護学校の学級版とでもいいましょうか。特殊学級というのは、障害が比較的軽い子どもが対象なので。
 
髙橋 障害が重い子どもへの教育は、かつては盲学校・聾学校・養護学校に分かれていて、養護学校には知的障害・肢体不自由・病弱の子が通っていました。障害の軽い子は小中学校では特殊学級に通っていました。
 
 養護学校への就学が義務化されたのは1979年(昭和54年)ですから、中村小の訪問学級は義務化より7年も早かったわけですね。2007年度(平成19年度)より、盲学校・聾学校・養護学校は特別支援学校に、特殊学級は特別支援学級となって現在に至ります。
 
名里 市立小学校に訪問学級を設置し、重い障害のある子どもたちが通う、っていうことを、義務化に先んじて始めました。小学校の一室なので…

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(下)新型コロナを超えて、次のステージへ

(下)新型コロナを超えて、次のステージへ

■リモートが普及して思わぬメリットも
 2018同時改定で、いい方向に歯車が動き出したと思っていました。しかし2020年春…。新型コロナが流行すると感染症法の「2類相当」となり、最初のころはすべて入院隔離だったから、病院は完全な鎖国状態になってしまいました。
 
【ケース3】ある病院では、プライバシー保護のため、看護師は患者を名前でなく番号で呼ぶことになっていた。2020年、コロナが流行して面会禁止に。あるナースは夜勤のとき、高齢の患者に対して「私の声がこの人の、人生の最後の声になるかもしれない」と思った。そう思ったら番号でなんか呼べなくなって、本人の耳元で、ほんとは近づいてはいけないのだろうけど、「Cさん」と呼びかけたという。「辛くないですか、そばにいるから、大丈夫だからね」と。長い時間ではないけど、そう声をかけて、部屋を後にした。
 
 この3年間、とりわけ病院ではコロナの感染対策が至上命題になって、いろいろなことが制限されました。病棟ナースたちは大事なことは何か、気づいたのではと思います。入院という環境がもたらす弊害とか、人として生きることを奪ってしまうとか。
 
 2021年になると、リハビリスタッフがリハの様子を撮影し、その動画を在宅スタッフに送って見てもらう、といったリモートでの連携が整ってきました。カンファレンスも…

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(中)その人らしさを知る極意を教えましょう

(中)その人らしさを知る極意を教えましょう

■入院時情報提供書は有益情報の宝庫
 2018改定の前も、ケアマネジャーから病院への情報提供はされていました。当時、病院側では連携室のMSWがケアマネからの情報を受け取り、保管するわけです。スキャンして電子カルテに落とし込むとか。
 
 MSWがそうやって保存しても、医師や看護師がそれをわざわざ開いて見るのは、退院が近づいてから。入院治療中にこの情報が見られることはほとんどなかったんです。
 
 2018改定後は病院も入退院支援となったので、ケアマネからの情報を早くから重視するようになっているはずです。
 
 ケアマネが作成する入院時情報提供書の書式も、2018年度に改訂されました。これはよくできてて、「3.本人/家族の意向について」には本人の趣味とか生活歴などを入力します。
 
 “教師をしていて定年時は校長だった、やがて認知症が出て、家の中に閉じこもり、自分が自分でなくなる怒りや焦りを奥さんにぶつけることもある。地域の人たちは立派な校長先生という意識で見守っている。デイサービスも初めは拒否傾向があったが、デイのケアスタッフから先生と呼ばれ、最近は穏やかに過ごされている”という具合です。
 
 そんなことが書かれていると、誤嚥性肺炎で救急搬送されてきて、病室では大声出して暴れ、点滴も抜いてしまうような目の前の患者が、実はこういう人生を生きてきた人だとわかります。
 
 ケアマネはこういう思いに寄り添っている、ということも読み取れるわけですね。そしてこれは、やがてACPに繋がっていくと思います。
 
 ただ、ケアマネジャーも記入することを躊躇する部分があります。とりわけ、何を願っているか…

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(上)医療と介護は2018同時改定で重なった

(上)医療と介護は2018同時改定で重なった

宇都宮宏子さんの連載「おうちへ帰ろう」は、前回配信で終了し、今回から、宇都宮さんが地域包括ケアを縦横に語る不定期連載となります。「これからは地域のプレイヤーを見つめたい」は、上・中・下の3回、お届けします。
 
 これまで私は、ひとりでも多くの高齢者が住み慣れたわが家で人生をまっとうできるように、病院からの在宅移行支援に軸足を置いて、医療や介護の専門職と一緒に考え、その手助けをしてきました。
 
 「医療と介護2040」の連載でも触れたように、独立する前は大学病院で在宅医療移行支援に携わっていて、「宇都宮宏子オフィス」を立ち上げたのは2012年。昨年、10周年を迎えました。
 
 2020年春、新型コロナの流行が始まって緊急事態宣言が出され、病院や在宅や介護の現場や療養する本人・家族、そして私の仕事も、さまざまに影響を受けました。
 
 あれから3年。一時期は嘘のように人通りが途絶えた京都の街も、少しずつ、日本人観光客が戻り、外国人観光客が増え始め、賑わいを取り戻してきています。私も以前のように、研修や講演で全国各地を訪れるようになりました。
 
 地域包括ケアシステムは「住み慣れたわが家で人生をまっとうする」ことを実現するためにあると思っています。
 
 「わが家」が「地域」に置き換わってもいいんですけど、要はエイジング・イン・プレイス。その実現のためには、在宅ケアサービスの充実だけじゃなく、地域性や家族や、さまざまな課題をクリアしないといけません。
 
 その課題の中でも、私は病院のあり方が難題と思っていました。病院という空間があまりにも“治す医療”から転換できずにいる、と感じていたのです。在宅移行支援に軸足を置いたのは、そのためです。
 
■ケアマネから病院への情報提供加算、要件変更の意味
 在宅移行支援という仕事をずっとやってきて、1つの節目になったと思うのは、2018年度の診療報酬・介護報酬同時改定です。この同時改定は、病院が変わる転機となりました。
 
 まず介護報酬改定では、居宅介護支援事業所(ケアマネ事業所)に対して、利用者の入院後3日以内に、どんな方法であれ病院に情報提供することに加算をつけました。
 
 ケアマネジャーが病院に情報提供するとつく加算の要件は、従来は「7日以内に、医療機関を訪問して持っていく」でしたが、期限を短縮し提供方法の縛りをなくしたのです。
 
 改定前、「ケアマネジャーは入院時情報提供書を1週間以内でいいから、病院に直接持っていきましょう」だったのが、「faxでもいいから3日以内に送ってよ」となった。
 
 その3日っていうのは、受療した後の生活がその前と変わりそうな人や…

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ホームホスピス宮崎の新たな一歩は 医療的ケア児支援が中心の「全世代型支援」(3)

ホームホスピス宮崎の新たな一歩は 医療的ケア児支援が中心の「全世代型支援」(3)

■報酬が低すぎて広がらない
髙橋 病院・在宅に加えて、短期入所や日中一時での看護が巧みに融合しながら、看護師さんが育ち、その重要なハブの役割をされている。しかも、全世代型ですね。全世代型というのは、小児も高齢も障害も、ケアを必要とするあらゆる人を対象にするので、医療も福祉も利用することになります。そういう面での問題点はありますか。
市原 医療的ケア児のお母さんたちは、極端な話、ぐっすり眠った夜は一晩たりともない、何年もそういう状況です。そういうお母さんが…

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