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第57回 生命倫理の先人から改めて学んだ🆕

第57回 生命倫理の先人から改めて学んだ🆕

■木村利人さんを再読する
 生命倫理(バイオエシックス)の研究者で、日本生命倫理学会の会長を長く務められた木村利人さんの『自分のいのちは自分で決める』(2000年、集英社)を再読した。とても面白い。第1章から第4章まで、順に「生」「病」「老」「死」について述べている。各章から、印象に残る節見出しを拾ってみよう。
 
 自分のいのちを自分の手に取り戻す」(第1章)
 病気は患者自身が治すもの」(第2章)
 「高齢者の生きがいと健康づくり」(第3章)
 「死なせないのが医療ではない」(第4章)
 
 これらすべて、この本が出て25年後の今日、私たちが在宅医療で心していることばかりだ。
 
 この本より10年以上前の1987年に刊行された『いのちを考える:バイオエシックスのすすめ』(日本評論社)には「自然な生の終り」という節があって、経鼻栄養を外すことを認めてほしいと、本人と後見人である甥が裁判を起こす実話が紹介されている。そして終末期の病床に臥す人に何が必要かを、丁寧に丁寧に記述する。
 
 87年といえば、昭和62年だ。それから年号が2つ進んだ現代もなお、胃ろうや経管栄養をめぐって議論がなされていることを思うと、木村さんの先見性に感服するしかない。今日の医療現場に生命倫理は生かされているか、考え込んだ。
 
■臨床倫理の4分割法
 前回触れた医療倫理の4原則(自律性の尊重、善行、無危害、公正)とは別に、臨床倫理の4分割法という考え方もある。それはJonsenらが1992年に示した考え方で…

第21回(最終回) 介護保険と高齢者ケアの“これから”(下)🆕

第21回(最終回) 介護保険と高齢者ケアの“これから”(下)🆕

■外国人の受け入れ課題は
 
 私は「日本語を母国語としない介護人材」という言い方をしていますが、いわゆる外国人介護人材の活用もこれからの大きな課題だと思っています。
 
 ひと口に「外国人介護人材」と言っても、活動に基づき「EPA」「技能実習」「特定技能(介護は1号のみ)」「在留資格・介護」という4つのカテゴリーがあり、それぞれ日本語力や就労可能なサービス種別などが異なります。
 
 訪問系サービスは従来、4種類のうちEPA介護福祉士と在留資格・介護(=介護福祉士の資格をもつ)のみが従事できたのが、2025年4月から、「特定技能」「技能実習」について、〈介護職員初任者研修を修了+1年以上の現場経験あり〉の人には可能となりました。なので、訪問介護や訪問入浴の新たな戦力として期待する声も上がっています。
 
 ただし事業所が外国人を受け入れる際は、「在留資格・介護」の人を除き、受け入れ・サポート機関への支払いが必要です。文化、宗教、風習の違いなど、「多様性への理解」も求められます。
 
■求められる「人材への投資」
 日本が誇る質の高い介護を持続させるには、介護保険の社会保険スキームとは別な形で、人材確保の仕組みを作るしかないと思います。単に介護報酬を上げたり加算をつけたりするだけじゃなく、保険財源以外から「人材確保金」を投入することを提案します。
 
 特養や看多機など施設を整備する場合、建築にかかる費用には、サービス提供基盤の確保という名目で公的な補助が入ります。人材確保はサービス提供基盤の確保に繋がるわけですから、施設整備と同じように公的な補助金を投入しても問題ないのでは。もう介護報酬のみで…

第21回(最終回) 介護保険と高齢者ケアの“これから”(下)🆕

第20回 介護保険と高齢者ケアの“これから”(上)🆕

■地域のニーズに対応して事業者とともにサービスを創る
 介護保険創設から25年。笹井さんは、「地域のニーズに対応して、行政として事業者、すなわちサービスを提供する立場の皆さんと一緒につくってきた、という思いが強い」と振り返る。
 
 介護保険制度がつくられた当時は、家族介護が限界を迎え、介護の社会化が求められていました。制度創設によって措置から保険に変わって25年、ドラスティックな変化もすっかり定着しました。国民にとっては医療・年金の国民皆保険制度とともに「あるのが当たり前の制度」となりました。
 
 これまでもお話ししたように、武蔵野市は措置の時代から地域のニーズに合わせて独自のサービスを組み立ててきました。介護保険導入後も、その伝統を生かしながら豊富なメニューを取り揃えています。仕組みを構築するときは、それなりに苦労しました。
 
 例えば「認知症高齢者見守り支援サービス」。これは武蔵野福祉公社のホームヘルプセンターが提供する武蔵野市独自の介護保険外サービスで、ヘルパーなど介助者が認知症の人と一緒に散歩したり、外食に出かけたり、自宅で趣味活動をしたり、というものです。
 
 介護保険サービスでは、ヘルパーなどの同行支援は日常生活に不可欠な外出(通院や食料品の買い物など)に限定され、それ以外の、喫茶店にコーヒーを飲みに行くような場合は使えません。「認知症高齢者見守り支援サービス」はそういう場合に使え、家族のレスパイトにもなります。
 
 このサービスをつくるときも、ホームヘルプセンターのサービス提供責任者(サ責)と細かく議論を重ねました。今もやりとりを覚えているんですけど、「認知症の方と一緒に外出して喫茶店に入ったとします。そのとき、同行ヘルパーのコーヒー代は誰が負担するんですか。ヘルパーの自腹なんですか」と質問されました。
 
 「それはやっぱり、本人か家族に負担してもらいましょう」「じゃあ、バスに乗って美術館に行く場合の…

第57回 生命倫理の先人から改めて学んだ🆕

第56回 医療現場の「倫理上の問題」🆕

■「倫理上の問題で治療できない」?
 前回に続き、『透析を止めた日』(講談社、2024年11月刊)の話を続けたい。ノンフィクションライターの堀川惠子さんが、腎臓病で亡くなった夫・林新さんの闘病を綴った話題の本だ。
 
 肝臓にも病変が見つかり、肝腎同時移植が検討されたが、結局、主治医は移植見送りの判断をした、というくだりで、「倫理」という言葉が登場する。林さんは肝腎同時移植に一縷の望みを賭け、「最後の希望」と口にしていた。
 
 その直後に、主治医から移植断念を告げられてしまう。「移植しないなら、このまま輸血を続けることはもう……」と告げられ、林さんは〈目を見据えはっきりとした声で質した。「先生、それは、生きたいという僕の意志(原文ママ)に反して、治療をやめるということですか」〉。主治医は答える。〈「いえ、少しずつで……。ただ、このまま点滴を続けるのは倫理上の問題が……」〉。
 
 堀川さんが解説する。〈倫理上の問題――。つまり回復の見込みのなくなった患者を、これ以上、医療の力で生かし続けるわけにはいかないということだ〉。
 
 主治医は、このまま点滴を続けることには倫理上の問題がある、と言い、そのあとの言葉を濁しているが、つまり「倫理上の問題があるからもうこれ以上点滴もできない」という意味であろう。
 
 ちょっと待ってほしい。回復の見込みがなくなった患者を医療の力で生かし続けることが倫理に反するなら、在宅医療はできないということにならないか。在宅医療の対象は…

第18回 実は大改正された介護予防・日常生活支援総合事業

第18回 実は大改正された介護予防・日常生活支援総合事業

 2024年8月、厚生労働省は介護予防・日常生活支援総合事業(以下、総合事業)の実施要綱およびガイドラインの改正を発表しました。法改正を伴わなかったため専門メディアを含めて報道は少なく、自治体職員の理解はまだ十分ではないと感じています。
 
 しかし、この改正は、厚労省が「フルモデルチェンジ」と表現するように、政策の目標は変わらないものの、実施・運営方法において大きな方針転換が行われています。今回は制度改正の詳細ではなく、マクロな視点からその背景と狙いを考察してみたいと思います。
 
■そもそも総合事業の背景と狙いは何だったのか
 2015年度に導入された総合事業は、全国統一基準で運営されていた要支援者(以下、軽度者)向けの保険給付サービスの一部を市町村の予算事業に転換し、提供主体に専門職以外の民間企業や住民活動(ボランティアなど)を組み込むことが大きな特徴でした。この制度導入の背景には、2つの事情がありました。
 
 第1に、軽度者向けサービスの選択肢を増やす必要があったことです。要支援状態とはいえ比較的元気な軽度者は、活動的で日常生活の様子も嗜好も多様です。しかし、通所介護や訪問介護は軽度者が対象であっても保険給付であるため、事業所が工夫してもサービス内容は似通っていました。
 
 保険給付によるサービスは1種類しかなく、軽度者の生活ニーズの多様性や介護予防における本人の動機付けを考えると、個々の嗜好に合わせたケアマネジメントは現実的に難しい状況でした。多様な価値観を持つ団塊世代の利用が増え、サービスの多様化が求められたのです。
 
 第2に、深刻化する介護人材不足への対応として「脱・専門職依存」が求められました。総合事業が導入された当時もすでに要介護者の増加と生産年齢人口の減少が進行しており、従来のように専門職がすべてを担う役割分担では持続可能性がないことは明らかでした。
 
 介護専門職以外が支援を担う方法を模索することが大きなテーマとなりました。そのため、総合事業では従来の保険給付サービスの基準を緩和し、介護事業所以外の参入を促進しました。財源問題も指摘されることがありますが、保険給付(総給付費)に占める要支援者向けサービス費用は約5%であり、削減効果は非常に限定的です。
 
 つまり、専門職に依存することなく軽度者向けサービスの多様化を進めることが総合事業の基本的な考え方でした。
 
 しかし、総合事業の進捗は必ずしも順調ではありません。制度開始から10年が経過しても軽度者向けサービスの転換は進まず、大半は総合事業以前からの保険給付に…

第57回 生命倫理の先人から改めて学んだ🆕

第55回 『透析を止めた日』に目を覚まされた

 医療関係者の間で話題になっている『透析を止めた日』(講談社、2024年11月刊)を読んだ。著者はノンフィクションライターの堀川惠子さんで、NHKの敏腕プロデューサーであった夫・林新さんの闘病や終末が活写されている。堀川さん自身も元NHKディレクターである。
 
 林さんは若いころから多発性嚢胞腎を患い、30代で血液透析を受けていた。状態が悪くなって50歳で生体腎移植を受け、しばらくはQOLも良好であった。数年後、肝臓にも病変が見つかり、肝腎同時移植が検討されるが、実施には至らず。移植した腎臓もやがて機能が落ち、血液透析が再開された。
 
 この段階では透析の効果がほとんどなく、悪化の一途をたどる。そして60歳で生涯を閉じる。堀川さんはそんな夫の傍らで、食生活を支え、通院を支え、末期のすさまじい苦痛を目の当たりにする。その描写は壮絶で、胸が痛くなる。
 
■緩和ケア病棟と血液透析の問題
 堀川さんは本書で重要な問題提起をしている。その1つは、緩和ケア病棟の問題だ。堀川さんは林さんが入院している病院の医師に、緩和ケア病棟に移してほしいと頼むが、断られてしまう。緩和ケア病棟はがん患者しか入院できません、と(正確には、エイズ患者も入院できる)。
 
 私はこのことを知らなかったので、とても驚いた。在宅緩和ケアはどんな病気であっても受けられるのが当たり前だ。ところが病院ではそうでないというのだ。それなら、在宅で腹膜透析をしながら緩和ケアを受ければよさそうなのに、そういう選択肢も示されない。林さんは日本を代表する医療機関や著名な大学病院で治療を受けていたというのに。
 
 つまり、うがった見方かもしれないが、林さんには「腎臓の主治医」はいたけれど、「林さんのかかりつけ医」はいなかった。そう言わざるを得ない。さらに不幸なことに、「腎臓の主治医」さえも不在となってしまうのである。
 
 2つ目の問題提起は、わが国の透析があまりにも血液透析に偏っていることだ。堀川さんは夫の状態を見かねて自ら調べ、身体的負担の少ない腹膜透析(PD)を知ることになる。堀川さんは最初…

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第23回 マイナ保険証と電子処方箋

第23回 マイナ保険証と電子処方箋

 国が進めている医療分野のDX化によって、私たちを取り巻く環境はどう変化するのでしょうか。システムの合理化は必須となり、マイナ保険証も徐々に普及しています。医療制度の中で生き残っていくには、受け入れて使いこなさなければなりません。
 
 医療のDX化は悪いことばかりではなく、良い点もたくさんあります。医療・介護従事者が患者様や利用者様に直接対応できる時間が増えること、最新情報が手元にすぐ届くこと、それに対応して適切な指導ができること、などが挙げられます。
 
 デジタル化を自分のものとし、道具として使いこなす一方で、国は対人関係にも評価を付けています。機械をつかいこなし、これまで以上に直接業務の質を上げ、対人援助に成果を上げていくことが求められます。
 
■マイナ保険証のメリットがわかりにくい
 国はマイナ保険証の普及に力を入れ、2024年12月からは紙の保険証の新規発行が中止されています。マイナ保険証を補完する資格確認書(有効期間1年)が交付されています。
 
 マイナ保険証について、デジタル庁が掲げるメリットは以下の通りです。
 
1. より良い医療を受けることができます。
2. 窓口で限度額以上の支払いが不要になります(高額療養費制度)
3. 引越しや、就職・転職の後もそのまま健康保険証として使えます
 
 厚生労働省が挙げるメリットも似ています。
 
1.データに基づくより良い医療が受けられる
2.手続きなしで高額療養費の限度額を超える支払いが免除される
3.マイナポータルで確定申告時に医療費控除が簡単にできる
4.医療現場で働く人の負担を軽減できる
 
 どちらも1番目は「より良い医療を受けられる」ですが、より良い医療とは具体的にどんなものか、わかりにくく、理解が進んでいないようです。メリットの理解が進まないまま、個人情報の塊であるマイナカードのセキュリティを不安に思う方が多いのではないでしょうか。
 
 そのため、マイナ保険証の普及は国の思惑どおりには進んでいないのが現状です。高齢者のデジタルへの理解度や親和度には個人差が大きく、スマホを使いこなしマイナカードを活用している方もいれば…

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第24回 社会保険料引き下げは誰の首を絞めるのか

第24回 社会保険料引き下げは誰の首を絞めるのか

 「現役世代の手取りを増やす」が、流行りの言葉らしい。そのために、税と社会保険料を引き下げるのだという。その先に何が起きるか分かっているのか? と思ってしまう。
 
 社会保険料を引き下げれば、給付は細る。保険制度は本来、負担と給付が見合うもので、制度を通して所得の高い人から低い人への再分配が行われる。だから、制度が細ったときに影響を大きく受けるのは所得の低い人だ。病気になっても医療を受けられなかったり、老後の防貧機能が薄くなったりしかねない。
 
 税や保険料を軽減して手取りを増やすと言っている人は、いずれ立場の弱い人にダメージが生じると分かっているのだろうか、と思う。
 
■治療断念を誘発しかねない
 象徴的なのが、今国会でもめた高額療養費の引き上げだ。医療費の自己負担に月額の上限を設けて、大病をしても、患者負担が高くなりすぎないようにする仕組みだ。「医療保険のセーフティネット」と呼ばれる。
 
 2025年度予算案に引き上げが盛り込まれたが、がん患者らの強い反対で修正された。長期療養の自己負担は現状維持となる。ただ、全年齢、全所得層で月額上限を引き上げる方針は変わらない見通しだ。
 
 目的は、保険料負担の軽減だという。つまり、病人の負担を上げて、日ごろの負担を減らすわけだ。本末転倒ではないか。
 
 皆保険制度の目的は、元気な時に少しずつ保険料を出しあい、命のかかった重病や大けがのときに不安なく治療を受けられるようにすることだ。家を売ったり、子どもに進学をあきらめさせたりしなければ治療できないようでは困る。
 
 しかも、厚生労働相の諮問機関、医療保険部会の資料によると、高額療養費の引き上げによる医療費削減効果には「長瀬効果」も見込まれている。長瀬効果とは、患者が負担を避けるために治療を断念するなどで生じる医療費の削減効果である。機械的な試算だというが、「よく、こんなこと書くなぁ」という印象だった。
 
 財務省の資料にも、「よく、こんなこと書くなぁ」という表記があった。2025年度予算案のポイント解説だ。高額療養費の引き上げによる社会保険料負担の軽減効果を…

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第57回 生命倫理の先人から改めて学んだ🆕

第54回 国立市長選で現職候補が敗北した

■地域包括ケアは高齢者偏重ではない
 昨年12月、国立市長選挙が行われ、現職の候補が新人に敗れた。わずか582票差であった。私は現職候補を応援し、街頭にも立った。
 
 2011年に市長に就任した佐藤一夫氏と、いわば二人三脚で、私は地域包括ケアを実践してきた。地域包括ケアって一体なんだろう。介護が必要になったら施設に入るのがベストじゃないのか。2011年は、まだそんな時代だった。
 
 その佐藤市長が在任中の2016年11月に逝去された後も、後任の市長と協力関係を築いて、在宅ケアや地域医療の普及・向上に努めてきた。その市長が敗れた。
 
 今回の選挙でも、市民の皆様が最後まで地域に暮らし続けることができる社会を目指す、と公約に掲げ、訴えた。しかし、国立市民はそれよりも、新人候補の「子育て支援を重視し現役世代に選ばれるまちづくり」という公約を選んだことになる。
 
 さらに新人候補は当時の市政を「子育て支援が後回しにされている」と批判し、暗に「現職は高齢者施策しかやっていない」と腐した。
 
 地域包括ケアは決して高齢者だけを重視する政策ではない。しかし、現職は高齢者を偏重し子育て世代には冷淡というイメージが先行し、世代間対立があおられてしまった。これから85歳以上の高齢者が増え続け、現役世代は減少する、ということは、厳然たる事実なのに、である。
 
■国立市民は大丈夫なのか
 
 昨年行われた東京都知事選や兵庫県知事選では、SNSが投票行動を大きく動かしたと言われる。虚実がないまぜの投稿に市民は翻弄されている。
 
 国立の市長選でも、同じようなことがあったのだろうか。私が街頭で応援演説していたら、すぐ近くで男がマイクを使って大音量で話し始め…

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第57回 生命倫理の先人から改めて学んだ🆕

第53回 患者に「悪い話はしないで」と言われたら

■毎月の事例検討会で
 毎月1回、「チーム国立」という事例検討会を開いている。国立市で在宅ケアに携わる在宅医や訪問看護師、行政などが参加している。
 
 毎回、1事例を発表し、テーマを導いて討論する。先日は「悪い話は聞きたくない、という患者」がテーマとなった。報告された事例は大腸がん末期の66歳女性。数年前に夫を亡くし、息子と2人暮らし。息子は昼間は仕事に出るので、日中独居となる。
 
 この方は4年前に大腸がんと診断され、手術と抗がん剤治療を受けた。抗がん剤の副作用がとてもつらく、1年で中止した後は病院から足が遠のいている。病院から紹介されて、今回の発表者である医師のクリニックで診るようになった。
 
 クリニックに来たとき、この方のがんはすでに肝転移と肺転移があった。小康状態が続いていたが、今年の夏、急に状態が悪化。腰痛が激しくなって動けなくなり…

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