これまで私は、ひとりでも多くの高齢者が住み慣れたわが家で人生をまっとうできるように、病院からの在宅移行支援に軸足を置いて、医療や介護の専門職と一緒に考え、その手助けをしてきました。
「医療と介護2040」の連載でも触れたように、独立する前は大学病院で在宅医療移行支援に携わっていて、「宇都宮宏子オフィス」を立ち上げたのは2012年。昨年、10周年を迎えました。
2020年春、新型コロナの流行が始まって緊急事態宣言が出され、病院や在宅や介護の現場や療養する本人・家族、そして私の仕事も、さまざまに影響を受けました。
あれから3年。一時期は嘘のように人通りが途絶えた京都の街も、少しずつ、日本人観光客が戻り、外国人観光客が増え始め、賑わいを取り戻してきています。私も以前のように、研修や講演で全国各地を訪れるようになりました。
地域包括ケアシステムは「住み慣れたわが家で人生をまっとうする」ことを実現するためにあると思っています。
「わが家」が「地域」に置き換わってもいいんですけど、要はエイジング・イン・プレイス。その実現のためには、在宅ケアサービスの充実だけじゃなく、地域性や家族や、さまざまな課題をクリアしないといけません。
その課題の中でも、私は病院のあり方が難題と思っていました。病院という空間があまりにも“治す医療”から転換できずにいる、と感じていたのです。在宅移行支援に軸足を置いたのは、そのためです。
■ケアマネから病院への情報提供加算、要件変更の意味
在宅移行支援という仕事をずっとやってきて、1つの節目になったと思うのは、2018年度の診療報酬・介護報酬同時改定です。この同時改定は、病院が変わる転機となりました。
まず介護報酬改定では、居宅介護支援事業所(ケアマネ事業所)に対して、利用者の入院後3日以内に、どんな方法であれ病院に情報提供することに加算をつけました。
ケアマネジャーが病院に情報提供するとつく加算の要件は、従来は「7日以内に、医療機関を訪問して持っていく」でしたが、期限を短縮し提供方法の縛りをなくしたのです。
改定前、「ケアマネジャーは入院時情報提供書を1週間以内でいいから、病院に直接持っていきましょう」だったのが、「faxでもいいから3日以内に送ってよ」となった。
その3日っていうのは、受療した後の生活がその前と変わりそうな人や…