〈【特集】訪問介護の危機〉の記事一覧
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中小事業者の生き残りへ サービスを多角化し他事業者と連携〔カラーズ〕 下🆕

中小事業者の生き残りへ サービスを多角化し他事業者と連携〔カラーズ〕 下🆕

■多様なサービス提供は効率的な働き方にも寄与
 一方、処遇面では、いろいろなサービスを組み合わせることにより、ホームヘルパーの待機時間を極力減らすことで効率的な働き方を実現した。大田区内に事業を限定していることで、移動時間が少なくて済むことも大きい。
 
 もっとも、サービスを組み合わせるために職員のスケジュールを調整するのは大変な作業だ。担当者の1人である訪問介護看護事業部長の吉田理枝さんによると「確かに大変だが、比較的時間の融通が利く定期巡回などをうまく組み込むことで対応している」のだという。
 
 なお、田尻さんがIT業界出身ということで、ヘルパーの記録ソフトや連絡用のチャットシステム、事務では会計・人事労務ソフトなど、ICTを活用することへの抵抗がなく、積極的に取り入れていることも業務の効率化に貢献している。
 
 教育・研修事業でユニークなのがマンツーマン講座だ。資格を持っているけれどブランクがあってやり方を忘れてしまった人、これから家族の介護を始めようとしている人…

中小事業者の生き残りへ サービスを多角化し他事業者と連携〔カラーズ〕 上🆕

中小事業者の生き残りへ サービスを多角化し他事業者と連携〔カラーズ〕 上🆕

 訪問介護事業者の倒産件数が過去最多のペースで推移する中、東京都大田区で訪問介護を中心に事業を展開するカラーズは、高齢者だけでなく障害者や子育て中の母親への支援などサービスの多角化や他事業者との連携などにより、中小規模ながら着実に成長を続けている。
 
■大田区内に4つの拠点
 カラーズは代表取締役の田尻久美子さんが2011年に設立した。大学卒業後、IT企業で働いていたが、母親が病気で亡くなった時に「看護の手伝いはしていたけれど、疾患を抱えていることの精神的な辛さが理解できなかったことが心残りになり」、母親にできなかった分を支援が必要な人のために行えればと介護業界に転じた。
 
 大手の事業者などで経験を経て独立。当初は「高齢者の介護保険サービス事業者」として訪問介護事業を始めた。
 
 しかし、事業を行っていると、利用者の中に障害を持つ高齢者がいたり、田尻さん自身が3人の幼い子どもを抱えながら、肺がんの父親の介護をしたりする中で「高齢者だけじゃなく、ライフステージに応じて支援が必要な人がたくさんいる」ことに気付いた。
 
 そこで「制度が先にあるのではなく、生活ニーズや地域のニーズを基にやっていこう」と考え、高齢者の介護に加え、障害サービスや子ども・子育て支援などにも着手し、「介護事業者」から「地域を支える事業者」へと事業領域を拡大していった。
 
 「制度とか、障害の有無とか、年代とかで区切ってサービスを提供するのでは、生活全体を支えられないのではないかということで、制度で区切らない、できるだけ面で支援できるように、いろいろなことに対応できるようにしていこうとやってきたら、サービスのラインナップがすごい数に増えてしまった」と田尻さんは笑う。
 
 現在、大田区の大森西地区を中心に本社・大森町ホーム・研修センター・放課後等デイの4拠点を設け、60人の従業員で事業を展開している。他の経営者からは60人で数多くのサービスを提供していることに驚かれるという。
 
 本社には本部のほか福祉用具事業部、居宅介護支援事業部、一般社団法人「大田区支援ネットワーク」の本部がある。全国的にケアマネジャーが不足していると言われているが、カラーズの居宅介護支援事業部は8人のケアマネを抱えている。
 
 大森町ホームは訪問事業の中心で、訪問介護・訪問看護・定期巡回などのスタッフが詰めている。面白いのは本来、駐車場スペースだった場所を畑にしていること。放課後等デイサービスを利用している子どもたちと若いボランティアの人たちで大豆やジャガイモなどを育て…

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介護報酬改定で経営が逼迫なら支援策を 小規模事業者の継続は協働化がカギ 石田路子・名古屋学芸大学客員教授🆕

介護報酬改定で経営が逼迫なら支援策を 小規模事業者の継続は協働化がカギ 石田路子・名古屋学芸大学客員教授🆕

 今回の介護報酬改定では、訪問介護の基本報酬がすべて引き下げられた。これにより、今後、訪問介護はどうなっていくと考えられるか。また、打撃を受けるとみられる小規模事業者はどうしたらいいのか。介護報酬改定を議論してきた厚生労働相社会保障審議会介護給付費分科会の委員を務め、議論に参加してきた石田路子・名古屋学芸大学客員教授に聞いた。
 
■処遇改善の方向性は評価

――今回の介護報酬改定の内容を全体としてはどう評価していますか。
 
 介護人材不足がいよいよ深刻化する中、処遇改善をとにかくやろうという、その方向性そのものについては間違いないし、今回は処遇改善に向けての施策がかなり講じられたのは確かだと思います。
 
――訪問介護の基本報酬だけが引き下げられたことについては。
 
 収支差率に基づいて厚労省が判断をしたということになると思います。昨年度の実績では、特養が前年度に比べマイナス1. 0%、老健がマイナス1. 1%だったのに対し、訪問介護は7. 8%とかなり大きなプラスになりました。
 
 さらに、定期巡回・随時対応型訪問介護が11. 0%、夜間対応型訪問介護については9. 9%というように、高い数字になっているものですから、訪問に関しては…

ホームヘルパーに聞く②「宝ケアサービス赤羽」の渡部利恵さん、「荒川サポートセンターかどころ」の長浦美加さん🆕

ホームヘルパーに聞く②「宝ケアサービス赤羽」の渡部利恵さん、「荒川サポートセンターかどころ」の長浦美加さん🆕

 東京都内の事業所で働くホームヘルパー4人に、この職種を選んだ理由や仕事内容などを聞く第2弾で紹介するのは、宝ケア株式会社「宝ケアサービス赤羽」(北区)の渡部利恵さんと、NPO法人東京ケアネットワーク「荒川サポートセンターかどころ」の長浦美加さん。2人はともにサービス提供責任者(サ責)を務めており、サ責ならではの大変さについても語ってもらった。
 
■渡部利恵さん―多忙なサ責の職務、達成感が原動力に
 渡部利恵さんが勤務する宝ケアは、北区で訪問介護事業を54年間展開しており、宝ケアサービス赤羽は同社が運営している3つの事業所の1つある。
 
 渡部さんがホームヘルパーになったのは、10年ほど前。介護福祉士の資格を取得後、最初はデイサービスで働いたが、子どもが小さかったため、朝が早かったり、夜遅かったりすることもあるデイサービスの仕事は厳しいと感じていたところ…

ホームヘルパーに聞く①「みずべの苑」(東京都北区)の大図理紗さんと福島珠美さん🆕

ホームヘルパーに聞く①「みずべの苑」(東京都北区)の大図理紗さんと福島珠美さん🆕

 ホームヘルパーとして働いている人たちは、なぜこの仕事を選び、どのような働き方をしているのか。東京都内の事業所で働く4人に聞いた。1回目は北区の社会福祉法人うららの訪問介護事業所「みずべの苑」で正社員として働く大図理紗さんと、登録ヘルパーで働く福島珠美さんを紹介する。
 
■大図理紗さん―利用者や家族からの感謝の言葉にやりがい
 大図さんは4年前、新卒でみずべの苑に入社した。卒業した東洋大学では、1年生の時から特養やデイサービスなどで実習を行うが、4年生の時に同事業所で訪問介護の実習を受けたことを機に、ホームヘルパーになろうと決めた。
 
 ヘルパーの働いている姿や利用者とのかかわりを見て「かっこいいな」と思ったからだ。1学年上の先輩が勤務していることもあり、同事業所を選んだ。
 
 訪問介護事業所を就職先として選んだ同級生はほとんどおらず…

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行政と一体でホームヘルパーを養成 練馬区介護サービス事業者連絡協議会🆕

行政と一体でホームヘルパーを養成 練馬区介護サービス事業者連絡協議会🆕

 東京都練馬区の人口は74万人で、23区では世田谷区に次いで人口が多い。区内には約200カ所も訪問介護事業所があるが、ホームヘルパーが足りなくて回せないという声はあまり聞かない。それは、事業者と行政が一体となって養成しているからだ。
 
■独自の「介護スタッフ研修」を実施
 練馬区の介護事業者の団体である練馬区介護サービス事業者連絡協議会(事連協)の副会長で、事連協訪問介護部会の部会長を務める加藤均氏(みんなのかいご代表取締役)によると、そのきっかけとなったのは、2017年に総合事業が始まったこと。
 
 その担い手をどうするかが問題となった時に、同部会から区に総合事業の担い手を養成する「介護スタッフ研修」を提案し、ホームヘルパーを創出する仕組みを作ることになった。
 
 この取り組みがユニークなのは、いきなり初任者研修を行うのではなく…

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長時間移動への対策講じ、中山間地にもサービスを提供 「ヘルパーステーション・えるだー」(島根県出雲市)🆕

長時間移動への対策講じ、中山間地にもサービスを提供 「ヘルパーステーション・えるだー」(島根県出雲市)🆕

 中山間地への訪問介護は移動時間が長いため難しいと言われる。そうした地域を抱える島根県出雲市の「えるだー」(黒松基子取締役)は、サービス提供時間が長めの利用者を対象とすることで長距離移動の負担をカバーし、中山間地への訪問に対応できるようにしている。
 
■処遇困難ケースを積極的に受け入れ
 えるだーは訪問介護事業所「ヘルパーステーション・えるだー」と小規模多機能型居宅介護「セカンド・サロン えるだー」を運営している。福祉タクシー事業も行っているが、これはあくまでも、えるだーの利用者の病院や学校への送迎のために使うものだ。
 
 黒松氏によると、出雲市には島根県内の自治体で最も多くの介護施設があるものの、介護職員が足りないという話はあまり聞かない。不足しているとすれば、県西部の…

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業務内容への正しい理解を 自立支援や重度化防止が本来の役割 全国ホームヘルパー協議会・鍋谷晴子副会長🆕

業務内容への正しい理解を 自立支援や重度化防止が本来の役割 全国ホームヘルパー協議会・鍋谷晴子副会長🆕

 ホームヘルパーの全国組織は2つある。前回の日本ホームヘルパー協会に続き、今回は全国ホームヘルパー協議会の鍋谷晴子副会長(石川県ホームヘルパー協議会会長)に、訪問介護事業をめぐる課題や協議会の取り組みなどを聞いた。
 
■ヘルパーの仕事内容が正しく伝わっていない
――訪問介護事業をめぐる課題は。
 
 ホームヘルパーの高齢化が問題の1つです。若い人たちが入って来ないため、2000年の介護保険の開始から依然として現役を続けているヘルパーがいる事業所も少なくありません。
 
 また、ヘルパーの仕事内容が正しく伝わっていないという問題もあります。介護保険ができる前は、訪問介護のサービスは家庭奉仕員という名前で、週2回ほど家事援助を行っていました。そのイメージを今も持っている方には「お手伝いさんでしょう」と言われてしまいます。
 
 利用者だけではなく、ケアマネジャーや医師など、連携している専門職の中にも…

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1人訪問の不安解消へ、サービス提供責任者の責務に適切な評価を 日本ホームヘルパー協会・清村幸弘副会長、中川裕晴副会長🆕

1人訪問の不安解消へ、サービス提供責任者の責務に適切な評価を 日本ホームヘルパー協会・清村幸弘副会長、中川裕晴副会長🆕

 厚生労働省によれば8割の訪問介護事業所が人手不足を感じており、訪問介護職の有効求人倍率は15.53倍(2022年度)と、人手不足が常態化している介護業界の中でも突出している。今や訪問介護事業の存続自体が危機的状況にあると言える。なぜこのような状況になっているのか。日本ホームヘルパー協会の清村幸弘副会長(埼玉県ホームヘルパー協会会長)と中川裕晴副会長(日本ホームヘルパー協会奈良県支部会長)に聞いた。
 
■1人でトラブルに対処することに不安
――訪問介護事業所の人手不足の原因は。厚労省の調査では「1人で利用者宅に訪問してケアを提供することに対する不安が大きい」が最大の理由となっています。
 
清村 私はデイサービスも経験していますが、デイサービスでは複数対複数でケアできます。何か不安なことがあってもり、現場ですぐに解決できました。
 
 しかし、ヘルパーは1対1なので、何かあった時のタイムリーな相談が難しく、1人で行って1人で判断して、1人でサービスを提供して、トラブルがあった場合、1人で解決しなければなりません。確かに、1人で不安というのは…

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