ホームヘルパーに聞く①「みずべの苑」(東京都北区)の大図理紗さんと福島珠美さん🆕

2024年 2月 2日

 ホームヘルパーとして働いている人たちは、なぜこの仕事を選び、どのような働き方をしているのか。東京都内の事業所で働く4人に聞いた。1回目は北区の社会福祉法人うららの訪問介護事業所「みずべの苑」で正社員として働く大図理紗さんと、登録ヘルパーで働く福島珠美さんを紹介する。

大図理紗さん―利用者や家族からの感謝の言葉にやりがい

 大図さんは4年前、新卒でみずべの苑に入社した。卒業した東洋大学では、1年生の時から特養やデイサービスなどで実習を行うが、4年生の時に同事業所で訪問介護の実習を受けたことを機に、ホームヘルパーになろうと決めた。

 ヘルパーの働いている姿や利用者とのかかわりを見て「かっこいいな」と思ったからだ。1学年上の先輩が勤務していることもあり、同事業所を選んだ。

 訪問介護事業所を就職先として選んだ同級生はほとんどおらず、多くは有料老人ホームなどの施設やサ高住などの高齢者向け住宅に進んだ。「ホームヘルパーは大変、というイメージが強いからかもしれない」と大図さんは見ている。

大図さん

 実際、大図さんも最初は1対1で対応することに不安があった。しかし、何かあった時には事務所や上司に連絡して指示を仰いだり、緊急時にはサービス提供責任者(サ責)が現場まで来たり、利用者宅退室後にサ責が利用者の様子を見に行ってくれたため、不安は消えて行った。

 ヘルパーの不安解消にはサ責の支援が不可欠だが、みずべの苑のサ責は2年前まで2人だったことから、手いっぱいの状態だった。現在は同法人他施設からの異動や入職者がありサ責が5人に増え、これまで以上にヘルパーへの支援が充実するようになっている。

 やっていて良かったと思うのは、感謝される機会が多いこと。自分が訪問するのを待ってくれている人も多く、訪問すると「待っていたわよ」と明るく迎えてくれる利用者もいることが励みになる。

 一緒に掃除をしたり洗濯物を干したりしながら会話するのは、訪問介護ならではの楽しみだ。そして、その人らしい生活ができるためにはどうするかを考え、自分がかかわったことで利用者が暮らしやすい状態になることに、やりがいを感じている。

成り手の少なさは仕事内容への無理解も
 しかし介護の仕事をしていない家族や友達などにホームヘルパーの印象を聞くと「排泄介助や認知症の人への対応などは、私にはできない」と言われる。

 ホームヘルパーの成り手が少ない理由については、このように、仕事へのイメージだけで無理だと考える人が多いのではないか、仕事の様子や働き方を実際に見てもらい、大変だけではないということが伝えられれば、印象が変わるのではないか、と大図さんは思っている。

 勤務形態は、週5日勤務して1日4~5件訪問する。休日は火・日固定で月9日が公休となっており、有給休暇も月に1日ほど取れている。

 以前は複写紙の手書きだった記録の作成は、「ケアパレット」というアプリを使うことで、スマホに入力しただけで事務所のパソコンの介護記録に記入されることになり、業務負担の軽減につながるなど、働きやすい環境づくりも進んでいる。

 賃金面では「個人的にはもう少しほしい」と感じているものの、それを理由に辞めたいと思わないのは、金銭に換算できないやりがいがあるからだ。

 この4年間に、ホームヘルパーとしての経験を着実に積み重ねてきた。今後は、今まで教わる側だったが、教える側になれるように知識や技術、制度のことなどを勉強するほか、事業所では高齢者だけでなく、障害者へのサービスも始めたことから、障害者への対応も学び、その上でサ責になることを考えている。

福島珠美さん―自身の都合に合わせて働き方を選択

 福島さんは、そもそも介護や福祉に全く関心がなかった。ところが、子どもが生まれ、その子が入院して病院で世話をされているのを見て、突然、介護や福祉の仕事がしたいと思うようになった。

 そこで、ヘルパー2級の資格を取得し、介護の仕事に就くことになった。「本当は最初から訪問介護をやりたかったけれど、技術的にも全部の業務を1人でやることに自信がなかった」ため、まず特養の職員として働き始めた。

 その施設で3年ほど経験を積んだ後、みずべの苑とは別の訪問介護事業所で登録ヘルパーとなった。当時は社会保険に加入できる要件の関係もあって、週に6日、びっちりスケジュールを入れて働いていた。

福島さん

 ただ、子どもがまだ小さかったこともあり、もう少し働きやすい環境を探したところ、デイサービスが適していることを知り、4年ほど勤めた最初の訪問介護事業所を辞めてデイサービスに移った。

 デイで3年ほど働いているうちに「やはり訪問介護をやりたい」との思いが募り、自分が求める条件に合う事業所を探した結果、みずべの苑に「日勤ヘルパー」という制度があるのを知って入社した。

 日勤ヘルパーは登録と異なり、事務所に詰める。訪問の仕事があれば訪問に行き、その他の時間は書類整理や事務仕事などをこなす。登録ヘルパーのような空き時間がないので、収入が安定する。

 その後、夫の事業が成長したことや自身の体調面のことなどもあって仕事量を減らすことにし、現在は勤務形態を登録ヘルパーに変更して、週2日、1日に5件程度、訪問介護を行っている。

施設勤務を経験し訪問介護が合うと自覚
 福島さんは特養・デイサービスという施設勤務も経験した上で、「訪問介護が最も自分に合っている」と話す。

 身体介護などを行いながらコミュニケーションを取って次第に仲良くなっていったり、利用者のそれまでとは違う一面を見たり、その人の若いころのことを知ったり、付き合いが密になるからこそ経験できることにやりがいを感じるからだ。

 「自分の性格として、1対1で人に向き合うのがいい」こともある。結婚前は出版社で編集や営業などの仕事をしており、繊細な人が多い作家を励ましたり、編集長と作家の間に入って調整したりすることが好きだった。

 さらに、振り返ると学生時代にコンビニでアルバイトをしていた時、買い物に来た高齢者と話したり、商品の場所を教えたりすることが楽しかったというのだから、もともと高齢者を相手にする介護の仕事に向いていた、ということもあるだろう。

 ただ、かかわりが深く強いからこそ、難しい面もある。それは、途中で辞めづらいこと。最初の訪問介護事業所を辞めた後、担当した利用者がその後どうなったかが気になり、今でも思い出すことがあるそうだ。

 登録ヘルパーという働き方については「それほどがむしゃらに働く必要はないけれど、社会とかかわっていたい、という人に向いているのではないか」と福島さんは言う。

 逆に、もっと収入を安定させたい場合には、みずべの苑のように日勤ヘルパーの制度がある事業所で働く手もある。あるいはデイサービスのような施設に勤務するという方法もある。そうした働き方の選択肢の1つとして登録ヘルパーがあるということだ。

 今後については、日勤ヘルパーに戻ることもあり得るが、基本的には今のペースで仕事を続け「細々とでもいいから訪問介護をずっと続けたい」と考えている。

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 東京都内の事業所で働くホームヘルパー4人に、この職種を選んだ理由や仕事内容などを聞く第2弾で紹介するのは、宝ケア株式会社「宝ケアサービス赤羽」(北区)の渡部利恵さんと、NPO法人東京ケアネットワーク「荒川サポートセンターかどころ」の長浦美加さん。2人はともにサービス提供責任者(サ責)を務めており、サ責ならではの大変さについても語ってもらった。
 
■渡部利恵さん―多忙なサ責の職務、達成感が原動力に
 渡部利恵さんが勤務する宝ケアは、北区で訪問介護事業を54年間展開しており、宝ケアサービス赤羽は同社が運営している3つの事業所の1つある。
 
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行政と一体でホームヘルパーを養成 練馬区介護サービス事業者連絡協議会🆕

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■独自の「介護スタッフ研修」を実施
 練馬区の介護事業者の団体である練馬区介護サービス事業者連絡協議会(事連協)の副会長で、事連協訪問介護部会の部会長を務める加藤均氏(みんなのかいご代表取締役)によると、そのきっかけとなったのは、2017年に総合事業が始まったこと。
 
 その担い手をどうするかが問題となった時に、同部会から区に総合事業の担い手を養成する「介護スタッフ研修」を提案し、ホームヘルパーを創出する仕組みを作ることになった。
 
 この取り組みがユニークなのは、いきなり初任者研修を行うのではなく…

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長時間移動への対策講じ、中山間地にもサービスを提供 「ヘルパーステーション・えるだー」(島根県出雲市)🆕

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■処遇困難ケースを積極的に受け入れ
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業務内容への正しい理解を 自立支援や重度化防止が本来の役割 全国ホームヘルパー協議会・鍋谷晴子副会長🆕

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■ヘルパーの仕事内容が正しく伝わっていない
――訪問介護事業をめぐる課題は。
 
 ホームヘルパーの高齢化が問題の1つです。若い人たちが入って来ないため、2000年の介護保険の開始から依然として現役を続けているヘルパーがいる事業所も少なくありません。
 
 また、ヘルパーの仕事内容が正しく伝わっていないという問題もあります。介護保険ができる前は、訪問介護のサービスは家庭奉仕員という名前で、週2回ほど家事援助を行っていました。そのイメージを今も持っている方には「お手伝いさんでしょう」と言われてしまいます。
 
 利用者だけではなく、ケアマネジャーや医師など、連携している専門職の中にも…

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■1人でトラブルに対処することに不安
――訪問介護事業所の人手不足の原因は。厚労省の調査では「1人で利用者宅に訪問してケアを提供することに対する不安が大きい」が最大の理由となっています。
 
清村 私はデイサービスも経験していますが、デイサービスでは複数対複数でケアできます。何か不安なことがあってもり、現場ですぐに解決できました。
 
 しかし、ヘルパーは1対1なので、何かあった時のタイムリーな相談が難しく、1人で行って1人で判断して、1人でサービスを提供して、トラブルがあった場合、1人で解決しなければなりません。確かに、1人で不安というのは…

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