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第60回 かかりつけ医の機能が定着していく🆕

第60回 かかりつけ医の機能が定着していく🆕

 前回も触れたが、「地域包括診療料1」の診療報酬点数は1660点で、同2は1600点。どちらも月1回算定できる。低くない点数であり、このことは同時に、患者負担も安くないことを意味する。
 
■地域包括診療加算の同意書
 新田クリニックは「地域包括診療加算1」を算定している。その点数は、2024年度診療報酬改定で25点から28点に引き上げられた。点数は低いが算定要件や施設基準は地域包括診療料と同じで、けっこう細かい。
 
 算定要件は「患者・家族からの求めに応じ、疾患名・治療計画等の文書を交付し適切な説明を行うことが望ましい」「患者についてのケアマネジャーからの相談に適切に対応」などで、施設基準は「担当医は認知症に係る適切な研修を修了していることが望ましい」「担当医がサービス担当者会議/地域ケア会議に出席した実績がある」などである。
 
 当院では、この地域包括診療加算を算定する患者には同意書にサインしてもらっている。ある患者に対してこの加算をとることは、その患者のかかりつけ医になることと同義だ。日本はフリーアクセス・自由開業制だから、同一患者に対して複数の医療機関が地域包括診療加算(料)を算定するような事態が起こりかねない。
 
 同意書にサインしてもらうのはこれを防ぐためではあるが、かかりつけ医の役割を明示するためでもある。地域包括診療料に関する説明書や同意書のひな型を基に作成した。
 
 同意書は、まず、かかりつけ医として行うことを明記している。
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 ・生活習慣病や認知症等に対する治療や管理を行います
 ・他の医療機関で処方されるお薬を含め、服薬状況等を踏まえたお薬の管理を行います
 ・必要に応じ、専門の医療機関をご紹介します
 ・介護保険の利用に関するご相談に応じます

第25回 重度や末期の人の看取りが狭間に落ちている🆕

第25回 重度や末期の人の看取りが狭間に落ちている🆕

在宅復帰後のサービスが不足 ホスピスホームや緩和ケアホームなどでの訪問看護の請求過多がニュースになっている。過剰請求、実際には行っていないサービスの不正請求など、悪質なケースも少なくないようだ。  もっとも、こうしたことが起きる「温床」は元々あった。「温床」と言うか「環境」と言うかは難しいところだが。...

第60回 かかりつけ医の機能が定着していく🆕

第59回 かかりつけ医機能が少しずつ前進している🆕

■1996年以来点数がついている
 
 かかりつけ医機能を評価する診療報酬には、現在、「地域包括診療料」「地域包括診療加算」「認知症地域包括診療料」「認知症地域包括診療加算」「機能強化加算」などがある。地域包括診療料1の診療報酬点数は1660点、同2は1600点で、どちらも月1回算定できる。
 
 低くない点数である。低くない点数ということは、裏返せば患者負担も安くはない。そのためか、算定している医療機関はそれほど多くないらしい。
 
 医師が患者を継続的総合的に診療することが初めて診療報酬で評価されたのは、1996年に新設された「老人慢性疾患外来総合診療料」だろう。これが2002年に廃止され、08年に「後期高齢者診療料」が新設される。これは10年に廃止された。現行の地域包括診療料が新設されたのは2014年である。
 
 「医師が患者を継続的総合的に診療すること」は、かかりつけ医機能の中核にほかならない。ということは、老人慢性疾患外来総合診療料→後期高齢者診療料→地域包括診療料と名称を変えながら、30年近くの間(途中に数年のブランクはあったものの)、かかりつけ医機能は診療報酬で点数化されていたことになる。曲がりなりにも、というべきだろうか。
 
 後期高齢者診療料には問題点があった。適用が糖尿病、脂質異常症、高血圧性疾患、不整脈、心不全、 脳血管疾患、喘息、認知症など13疾患に限定されていて、肺炎や骨折などそれ以外の疾患にかかったら算定できず…

第24回 足りないのはコメだけじゃない、医薬品も深刻🆕

第24回 足りないのはコメだけじゃない、医薬品も深刻🆕

 医療用医薬品の供給不足の発端となったのは、2020年12月に発覚した、ジェネリック医薬品のメーカーの品質不正問題です。
 
 製造工程を守っていないなどの製造上の不正が次々と明るみになり、業務停止などの行政処分は20件以上に上りました。薬の製造が止まって供給が不安定になったことに加えて、新型コロナの流行で、医薬品が手に入りにくい状態が続いています。
 
 日本製薬団体連合会によると、すべての注文に対応できていない「限定出荷」や「供給停止」となっているのは、2025年7月6日時点で2917品目もあります。特に困っているのが、感冒に使用する解熱鎮痛薬や咳止め、血管拡張剤、糖尿病薬など。処方薬の品目の2割以上です。
 
 少しずつ入ってきているものもありますが、抗生剤などはなかなか流通していません。以前ほど使用量は多くありませんが、やはり無いと困る商品です。どうにかしてください。
 
■供給不足への対策が実施されているが
 深刻な供給不足に対し、さまざまな策が実施されています。2025年3月7日、厚生労働省保険局医療課から事務連絡「後発医薬品の出荷停止等を踏まえた診療報酬上の臨時的な取扱いについて」が出されました。
 
 同名の事務連絡は2024年9月24日にも出されていて、その期限が25年3月末だったため、「臨時的な取扱い」は4月1日以降も引き続き継続することになります(9月30日まで)。
 
 その内容は、供給停止品目(494品目)と成分や投与形態が同一の医薬品については、「後発医薬品使用体制加算」「外来後発医薬品使用体制加算」「後発医薬品調剤体制加算」などにおける実績要件である後発医薬品の使用(調剤)割合を算出する際に…

第60回 かかりつけ医の機能が定着していく🆕

第58回 在宅介護を守る「倫理」と「制度改革」

 臨床倫理は介護の現場でも問われる。介護の臨床倫理はとりわけ認知症の人と接するときに問われる。自己決定は尊厳と表裏一体だから、認知症が重度となって自己決定が難しい人の尊厳をどう保つのか。この問いが介護職を悩ませる。
 
 暮らす人が何も自己決定できないような居住空間は、たとえそこにベッドやクローゼットがあっても“生活の場”とはいえない。施設ですらなく、あえていえば収容所だ。
 
 「住まう」という言葉には、自立と尊厳が込められているような気がする。「住まう人」とは単にそこで暮らす人ではなく、自立し尊厳をもって生きる人ではないか(この自立とは、他人の力を借りずに生きることではない)。だから、「住まう」には本人の覚悟も必要だ。
 
 住まう人への在宅医療や在宅介護は、その自立と尊厳を維持するためのサービスといえる。在宅ケア提供者は常にこのことを意識してほしい。
 
■ケアの倫理を検討する
 国立市では、地域ケア会議で要支援1、2の人の事例検討を長く行ってきた。事例検討から、要支援1、2の人には何が必要なのかを検討する。
 
 自分の身の回りのことはある程度できるから、身体介護的なサービスではないだろう。昼間、身体を動かしたり友人と会話したり、一緒に食事したりできる居場所が必要だろう。ケアマネジャーや行政も参加して、そんなことを議論してきた。
 
 2025年度からは、要介護3、4を中心に、ケアの倫理について検討することになった。事例検討ではケアプラン検証ではなく…

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第57回 生命倫理の先人から改めて学んだ

■木村利人さんを再読する
 生命倫理(バイオエシックス)の研究者で、日本生命倫理学会の会長を長く務められた木村利人さんの『自分のいのちは自分で決める』(2000年、集英社)を再読した。とても面白い。第1章から第4章まで、順に「生」「病」「老」「死」について述べている。各章から、印象に残る節見出しを拾ってみよう。
 
 自分のいのちを自分の手に取り戻す」(第1章)
 病気は患者自身が治すもの」(第2章)
 「高齢者の生きがいと健康づくり」(第3章)
 「死なせないのが医療ではない」(第4章)
 
 これらすべて、この本が出て25年後の今日、私たちが在宅医療で心していることばかりだ。
 
 この本より10年以上前の1987年に刊行された『いのちを考える:バイオエシックスのすすめ』(日本評論社)には「自然な生の終り」という節があって、経鼻栄養を外すことを認めてほしいと、本人と後見人である甥が裁判を起こす実話が紹介されている。そして終末期の病床に臥す人に何が必要かを、丁寧に丁寧に記述する。
 
 87年といえば、昭和62年だ。それから年号が2つ進んだ現代もなお、胃ろうや経管栄養をめぐって議論がなされていることを思うと、木村さんの先見性に感服するしかない。今日の医療現場に生命倫理は生かされているか、考え込んだ。
 
■臨床倫理の4分割法
 前回触れた医療倫理の4原則(自律性の尊重、善行、無危害、公正)とは別に、臨床倫理の4分割法という考え方もある。それはJonsenらが1992年に示した考え方で…

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第21回(最終回) 介護保険と高齢者ケアの“これから”(下)

第21回(最終回) 介護保険と高齢者ケアの“これから”(下)

■外国人の受け入れ課題は
 
 私は「日本語を母国語としない介護人材」という言い方をしていますが、いわゆる外国人介護人材の活用もこれからの大きな課題だと思っています。
 
 ひと口に「外国人介護人材」と言っても、活動に基づき「EPA」「技能実習」「特定技能(介護は1号のみ)」「在留資格・介護」という4つのカテゴリーがあり、それぞれ日本語力や就労可能なサービス種別などが異なります。
 
 訪問系サービスは従来、4種類のうちEPA介護福祉士と在留資格・介護(=介護福祉士の資格をもつ)のみが従事できたのが、2025年4月から、「特定技能」「技能実習」について、〈介護職員初任者研修を修了+1年以上の現場経験あり〉の人には可能となりました。なので、訪問介護や訪問入浴の新たな戦力として期待する声も上がっています。
 
 ただし事業所が外国人を受け入れる際は、「在留資格・介護」の人を除き、受け入れ・サポート機関への支払いが必要です。文化、宗教、風習の違いなど、「多様性への理解」も求められます。
 
■求められる「人材への投資」
 日本が誇る質の高い介護を持続させるには、介護保険の社会保険スキームとは別な形で、人材確保の仕組みを作るしかないと思います。単に介護報酬を上げたり加算をつけたりするだけじゃなく、保険財源以外から「人材確保金」を投入することを提案します。
 
 特養や看多機など施設を整備する場合、建築にかかる費用には、サービス提供基盤の確保という名目で公的な補助が入ります。人材確保はサービス提供基盤の確保に繋がるわけですから、施設整備と同じように公的な補助金を投入しても問題ないのでは。もう介護報酬のみで…

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第21回(最終回) 介護保険と高齢者ケアの“これから”(下)

第20回 介護保険と高齢者ケアの“これから”(上)

■地域のニーズに対応して事業者とともにサービスを創る
 介護保険創設から25年。笹井さんは、「地域のニーズに対応して、行政として事業者、すなわちサービスを提供する立場の皆さんと一緒につくってきた、という思いが強い」と振り返る。
 
 介護保険制度がつくられた当時は、家族介護が限界を迎え、介護の社会化が求められていました。制度創設によって措置から保険に変わって25年、ドラスティックな変化もすっかり定着しました。国民にとっては医療・年金の国民皆保険制度とともに「あるのが当たり前の制度」となりました。
 
 これまでもお話ししたように、武蔵野市は措置の時代から地域のニーズに合わせて独自のサービスを組み立ててきました。介護保険導入後も、その伝統を生かしながら豊富なメニューを取り揃えています。仕組みを構築するときは、それなりに苦労しました。
 
 例えば「認知症高齢者見守り支援サービス」。これは武蔵野福祉公社のホームヘルプセンターが提供する武蔵野市独自の介護保険外サービスで、ヘルパーなど介助者が認知症の人と一緒に散歩したり、外食に出かけたり、自宅で趣味活動をしたり、というものです。
 
 介護保険サービスでは、ヘルパーなどの同行支援は日常生活に不可欠な外出(通院や食料品の買い物など)に限定され、それ以外の、喫茶店にコーヒーを飲みに行くような場合は使えません。「認知症高齢者見守り支援サービス」はそういう場合に使え、家族のレスパイトにもなります。
 
 このサービスをつくるときも、ホームヘルプセンターのサービス提供責任者(サ責)と細かく議論を重ねました。今もやりとりを覚えているんですけど、「認知症の方と一緒に外出して喫茶店に入ったとします。そのとき、同行ヘルパーのコーヒー代は誰が負担するんですか。ヘルパーの自腹なんですか」と質問されました。
 
 「それはやっぱり、本人か家族に負担してもらいましょう」「じゃあ、バスに乗って美術館に行く場合の…

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第60回 かかりつけ医の機能が定着していく🆕

第56回 医療現場の「倫理上の問題」

■「倫理上の問題で治療できない」?
 前回に続き、『透析を止めた日』(講談社、2024年11月刊)の話を続けたい。ノンフィクションライターの堀川惠子さんが、腎臓病で亡くなった夫・林新さんの闘病を綴った話題の本だ。
 
 肝臓にも病変が見つかり、肝腎同時移植が検討されたが、結局、主治医は移植見送りの判断をした、というくだりで、「倫理」という言葉が登場する。林さんは肝腎同時移植に一縷の望みを賭け、「最後の希望」と口にしていた。
 
 その直後に、主治医から移植断念を告げられてしまう。「移植しないなら、このまま輸血を続けることはもう……」と告げられ、林さんは〈目を見据えはっきりとした声で質した。「先生、それは、生きたいという僕の意志(原文ママ)に反して、治療をやめるということですか」〉。主治医は答える。〈「いえ、少しずつで……。ただ、このまま点滴を続けるのは倫理上の問題が……」〉。
 
 堀川さんが解説する。〈倫理上の問題――。つまり回復の見込みのなくなった患者を、これ以上、医療の力で生かし続けるわけにはいかないということだ〉。
 
 主治医は、このまま点滴を続けることには倫理上の問題がある、と言い、そのあとの言葉を濁しているが、つまり「倫理上の問題があるからもうこれ以上点滴もできない」という意味であろう。
 
 ちょっと待ってほしい。回復の見込みがなくなった患者を医療の力で生かし続けることが倫理に反するなら、在宅医療はできないということにならないか。在宅医療の対象は…

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第18回 実は大改正された介護予防・日常生活支援総合事業

第18回 実は大改正された介護予防・日常生活支援総合事業

 2024年8月、厚生労働省は介護予防・日常生活支援総合事業(以下、総合事業)の実施要綱およびガイドラインの改正を発表しました。法改正を伴わなかったため専門メディアを含めて報道は少なく、自治体職員の理解はまだ十分ではないと感じています。
 
 しかし、この改正は、厚労省が「フルモデルチェンジ」と表現するように、政策の目標は変わらないものの、実施・運営方法において大きな方針転換が行われています。今回は制度改正の詳細ではなく、マクロな視点からその背景と狙いを考察してみたいと思います。
 
■そもそも総合事業の背景と狙いは何だったのか
 2015年度に導入された総合事業は、全国統一基準で運営されていた要支援者(以下、軽度者)向けの保険給付サービスの一部を市町村の予算事業に転換し、提供主体に専門職以外の民間企業や住民活動(ボランティアなど)を組み込むことが大きな特徴でした。この制度導入の背景には、2つの事情がありました。
 
 第1に、軽度者向けサービスの選択肢を増やす必要があったことです。要支援状態とはいえ比較的元気な軽度者は、活動的で日常生活の様子も嗜好も多様です。しかし、通所介護や訪問介護は軽度者が対象であっても保険給付であるため、事業所が工夫してもサービス内容は似通っていました。
 
 保険給付によるサービスは1種類しかなく、軽度者の生活ニーズの多様性や介護予防における本人の動機付けを考えると、個々の嗜好に合わせたケアマネジメントは現実的に難しい状況でした。多様な価値観を持つ団塊世代の利用が増え、サービスの多様化が求められたのです。
 
 第2に、深刻化する介護人材不足への対応として「脱・専門職依存」が求められました。総合事業が導入された当時もすでに要介護者の増加と生産年齢人口の減少が進行しており、従来のように専門職がすべてを担う役割分担では持続可能性がないことは明らかでした。
 
 介護専門職以外が支援を担う方法を模索することが大きなテーマとなりました。そのため、総合事業では従来の保険給付サービスの基準を緩和し、介護事業所以外の参入を促進しました。財源問題も指摘されることがありますが、保険給付(総給付費)に占める要支援者向けサービス費用は約5%であり、削減効果は非常に限定的です。
 
 つまり、専門職に依存することなく軽度者向けサービスの多様化を進めることが総合事業の基本的な考え方でした。
 
 しかし、総合事業の進捗は必ずしも順調ではありません。制度開始から10年が経過しても軽度者向けサービスの転換は進まず、大半は総合事業以前からの保険給付に…

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