4議題議論し田中会長の任期満了 給付費分科会

2023年 1月 17日

 第213回社会保障審議会介護給付費分科会は1月16日、①令和3年度介護報酬改定の効果検証及び調査研究に係る調査(令和5年度調査)の進め方について、②介護職員処遇改善加算等の申請様式の簡素化等について、③訪問看護ステーションにおける人員基準に関する地方分権改革提案について、④令和6年度同時改定に向けた意見交換会について、議論した。

 ①については事務局から調査実施のスケジュール案が示され、2023年夏に調査を実施、集計・分析し、秋に分科会に速報値を報告、冬に分析・検証する。24年3月ごろの分科会で調査結果を議論する、との方針が了承された。

 ICTの活用状況、老健・介護医療院でのサービス提供実態、LIFEの活用状況などを、介護サービス事業者(施設系・通所系など全サービス種別)と指定権者(都道府県・市町村)に対して調査する。

 ②はこれまで要望が多かった問題である。2022年改定により、介護職への処遇改善加算は「介護職員処遇改善加算」「介護職員等特定処遇改善加算」「介護職員等ベースアップ等支援加算」の3つとなっている。それぞれ対象と算定要件は異なり、申請の煩雑さが指摘されていた。

 取得状況は介護職員処遇改善加算が93.1%、介護職員等特定処遇改善加算が75.1%(22年4月)。この差について、委員や事務局から「申請様式が複雑すぎて取得が広がらなかった」との意見が出された。

 事務局が提案する申請の新様式は、これら3つの加算の対象者ごとでなく、3加算を一本化して計算するというもの。委員はこの方針を歓迎する一方、不正が起きないようチェック体制が必要と指摘した。

 ③は訪看ステーションの人員基準について、利用者の確保が難しい中山間地域では、市区町村が認めた場合は常勤換算2.5人の基準を満たさなくても訪問看護を提供できる特例がある。

 21年度介護報酬改定では、地域の実情に応じた柔軟なサービス提供をより可能にするため、特別地域加算の対象とは別の申請が可能となった。

 これには一定の効果があったと考えられ、事務局は、全国一律の人員基準は引き続き「従うべき基準」とする案を提出。委員から反対意見はなく、提案通り認められた。

 ④については、令和6年度(2024年度)の診療報酬・介護報酬同時改定に向け、介護給付費分科会と中医協が意見交換の場を設けることが提案された。障害福祉も同じ年に改定が予定されている。これも委員から異論なく、認められた。

 これらの議論が終わった後、事務局から、田中滋分科会長の任期が1月28日であり、事実上、この日の会合が最後となると説明された。田中分科会長は2001年(平成13年)の第1回から参加し、13年からは分科会長を務めた。

 スピーチを求められた田中分科会長はこの20年を振り返って「かつての中医協や米価審議会などは引き上げを求める側と抑える側、両者を調整する委員が三つどもえの様相であった。しかしこの分科会は全員が対等な有識者として参加され、トータルとして介護保険をよくしよう、前進させようとの議論が進んだ」。

 「介護は介護サービスだけでなく、医療や生活支援、予防などと一体的に提供され、地域包括ケアシステムの深化が不可欠。介護分野を長く見てきたが、介護は地域包括支援センターや看多機、介護医療院などが誕生し、成長してきた」「リハビリ、栄養、口腔ケアの視点、科学的ケアの方向性も示した。今後もこうした進展を期待する」などと語った。

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制度見直しの議論続く 介護保険部会🆕

 第132回社会保障審議会介護保険部会が12月22日に開かれ、前回に続き「介護保険制度の見直しに関する意見(案)」などが議論された。
 
 今回提示された案では、「一定以上所得の判断基準」について、これまで同様、年金収入+その他の合計所得を「年260万円~230万円の範囲」とした。まだ具体的な方向は見えない。委員の中には「2割負担の対象を拡大すべきでない」との意見も根強い。
 
 「拡大すべきでない」論者の意見は、
 
 ・医療ではOTC類似薬への新たな負担など、高齢者の負担増が確実。介護でも負担増は避けるべき
 
 ・負担増から利用控えが起こると、子世代にしわ寄せがくる。介護離職が増えるのでは
 
 ・現役世代の負担軽減は重要だが、サービスを使えなくなった親を子が援助すれば結局子の負担は増える
 
 などがある。持続可能性を高めるには被保険者の範囲や公費負担も見直すべき、との意見もあった。

2割負担、ケアマネジメントの在り方は 部会🆕

 第131回社会保障審議会介護保険部会が12月15日に開かれ、「介護保険制度の見直しに関する意見(案)」などが議論された。
 
 「介護保険制度の見直しに関する意見」は2022年12月に“第1弾”が公表されている。このとき結論が出されなかった、〈「一定以上所得」「現役並み所得」の判断基準〉〈補足給付の在り方〉〈ケアマネジメントに関する給付の在り方〉〈軽度者への生活援助サービスに関する給付の在り方〉などについて、これまで部会で議論が続けられた。
 
 これらは「次期計画に向けて得ることが適当」「第10期計画の開始までに出すのが適当」「引き続き検討」とされた。次期計画とは現在の第9期(2024-26年度)、第10期は27-29年度である。
 
 「一定以上所得の判断基準」は「次期計画に向けて」だったが、まだ決着していない。2割負担の拡大、すなわち適用される所得の引き下げにつながることから、反対意見が根強かった。現行制度では、2割負担となる所得基準は年280万円以上だ。これをどこまで引き下げるか。年260万円~230万円の範囲が提案されている。
 
 引き下げ幅が大きいほど、2割負担となる人は増える。ただ引き下げと同時に「配慮措置」も提案されている。①新たに負担増となる場合、増加の上限を月額7000円とする、②預貯金等が一定額以下の人は申請により1割負担に戻す、の2つだ。

訪問介護の倒産止まらず 報酬引き下げなど響く

 東京商工リサーチの調査によると、訪問介護事業者の2025年の倒産(負債1000万円以上)が11月末までに85件に達し、これまで最多だった23年67件、24年81件をすでに超え、3年連続で最多を更新した。  人手不足や24年度の介護報酬改定で訪問介護の基本報酬が引き下げられたことに加え、人件費やガソリン代、運営コストの上昇が要因と見込まれる。  25年の訪問介護事業者の倒産は11月末までに85件(前年81件)で、3年連続で年間最多を更新した。...

2割負担対象も預貯金に応じ1割の案 部会

 第130回社会保障審議会介護保険部会が12月1日に開かれ、「持続可能性の確保」「論点ごとの議論の状況」などが議論された。
 
 今回、「持続可能性の確保」は
 
 ●「一定以上所得」「現役並み所得」の判断基準
 ●補足給付に関する給付の在り方
 ●ケアマネジメントに関する給付の在り方
 
 の3つの論点に絞って議論された。
 
 「一定以上所得」「現役並み所得」の「一定以上」とは、介護保険サービス利用時の自己負担を2割とする所得層で、「現役並み」とは自己負担3割の所得層だ。簡単にいえば所得の多い人は自己負担も多く、という応能負担の考え方に基づく施策である。現行の「一定以上所得」「現役並み所得」の基準は以下の通り。

賛否分かれる論点に進展なし 介護保険部会

 第129回社会保障審議会介護保険部会が11月20日に開かれ、「介護保険制度に関するその他の議題」「持続可能性の確保」などが議論された。
 
 「持続可能性の確保」の内容は
 
 ●1号保険料負担の在り方
 ●「一定以上所得」「現役並み所得」の判断基準
 ●ケアマネジメントに関する給付の在り方
 ●軽度者への生活援助サービスに関する給付の在り方
 ●被保険者範囲・受給者範囲
 ●金融所得・金融資産の反映の在り方
 
 など、注目度が高い項目が多く、これまでも議論が続いてきたが、今回は事務局から具体的にどうするか、施策の方向は示されていない。
 
 ケアマネジメントに関する給付の在り方については、他サービスと同様に幅広い利用者に負担を求めること(ケアマネジメント有料化)や、その判断にあたって利用者の所得状況を考慮することをどう考えるか、住宅型有料老人ホームの入居者に係るケアマネジメントについて利用者負担を求めるか、などの論点が示された。

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