ゾコーバの薬価算定めぐり議論 薬価専門部会

2023年 1月 25日

 中央社会保険医療協議会(厚生労働相の諮問機関)薬価専門部会は1月25日、塩野義製薬の新型コロナ経口薬「ゾコーバ」の薬価算定に関して議論した。

 ゾコーバは昨年11月に緊急承認され、現在は厚労省が所有し、対象患者が発生または発生が見込まれる医療機関・薬局からの依頼に基づき、無償で譲渡されている。

 市販するための薬価算定に当たっては、最も類似性が高い薬剤に合わせて薬価を決定する「類似薬効比較方式」が原則となる。

 ゾコーバの比較対象の候補となるのは既存の新型コロナ治療薬であるが、既存薬が軽~中等症患者で重症化リスクがある患者を対象としているのに対し、ゾコーバは重症化リスクのない軽~中等症患者を対象としていることから、対象患者数が大きく異なる可能性がある。

 そこで、もう1つの候補として挙げられるのが、同じ呼吸器系感染症であるA型・B型インフルエンザに投与される抗ウイルス薬である。対象となるウイルスは異なるものの、重症化リスクに関わらず広く投与されるという投与対象患者の類似性、ウイルス増殖を抑制するという効果の類似性がある。

 これらの既存薬の薬価を見ると、既存の新型コロナ経口薬であるラゲブリオは1治療当たりの薬価は9万円を超えているのに対し、インフルエンザ治療薬は2000円台~6000円台の水準であるため、どちらを比較薬にするかで薬価が大きく異なることが、ゾコーバの薬価収載に当たっての課題となっている。

 また、薬価収載時には市場規模の予測が必要になるが、新型コロナでは感染者の急激な増減が生じることから、対象患者の推計や市場規模予測が非常に困難だという課題もある。

 さらに、薬価収載後に年間販売額が予想販売額を一定程度超えた場合、薬価を調整する市場拡大再算定も課題だ。四半期再算定を使用しても、市場規模が拡大してから改定後薬価が適用されるまでに8カ月程度を要するため、急激な市場規模の拡大に迅速に対応することができないからである。

 この日の会合では診療側委員から、ゾコーバは既存薬と異なり重症化リスクのない軽~中等症患者を対象としていること、臨床成績では鼻水やのどの痛みなど5つの症状が回復するまでの期間が24時間短縮される程度のものであることを踏まえた薬価とすべきとの意見が出された。

 加えて、既存の高額コロナ薬剤を類似薬とするのは適当ではないことや、市場拡大再算定に当たっては、市場規模予測をタイムリーに把握した上で、迅速に価格調整すべきとの見解も示された。

 一方、支払側委員からは、新型コロナの既存薬は類似薬に当たらないとし、インフルエンザに使う抗ウイルス薬を比較薬として、原価計算方式と市場拡大再算定、費用対効果評価を組み合わせて対応するのが基本との考えが述べられた。

 また、5症状消失の期間が1日短縮されるものの、妊婦や妊娠の可能性がある女性は使えないこと、併用薬の制限があることなどを考慮すると、ゾコーバが患者にとってなくてはならない選択肢となるのかという視点を踏まえた慎重な検討が必要との意見もあった。

 なお、厚労省から今回の方針はゾコーバに限った対応とするという提案があったが、この点に関しては異論がなかった。

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2割負担は先送り 介護保険部会が「意見」🆕

 第133回社会保障審議会介護保険部会が12月25日に開かれ、「介護保険制度の見直しに関する意見」が確定した。
 
 議論が続いた「一定以上所得」の判断基準については、第10期介護保険事業計画(2027~29年度)の開始前までに結論を得ることとなった。
 
 これは利用者負担が2割となる基準で、現行制度では年金収入+その他の合計所得が年280万円以上340万円未満である(単身世帯の場合)。340万円以上は「現役並み所得」とされ、3割負担だ。
 
 介護保険制度の持続可能性確保のためにその基準を拡大し、2割・3割負担となる層を広げるかどうか。
 
 具体的には、「一定以上所得(2割負担)」の下限を260万円~230万円の範囲で引き下げる案が示され、長く議論されてきたが、決着には至らなかった。「現役並み所得」の判断基準は「引き続き検討を行う」と、期限も示されなかった。
 
 そのほか、軽度者への生活援助サービスを給付から切り離して総合事業に移行する案も結論は出ず、「引き続き包括的に検討する」となった。

制度見直しの議論続く 介護保険部会🆕

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 今回提示された案では、「一定以上所得の判断基準」について、これまで同様、年金収入+その他の合計所得を「年260万円~230万円の範囲」とした。まだ具体的な方向は見えない。委員の中には「2割負担の対象を拡大すべきでない」との意見も根強い。
 
 「拡大すべきでない」論者の意見は、
 
 ・医療ではOTC類似薬への新たな負担など、高齢者の負担増が確実。介護でも負担増は避けるべき
 
 ・負担増から利用控えが起こると、子世代にしわ寄せがくる。介護離職が増えるのでは
 
 ・現役世代の負担軽減は重要だが、サービスを使えなくなった親を子が援助すれば結局子の負担は増える
 
 などがある。持続可能性を高めるには被保険者の範囲や公費負担も見直すべき、との意見もあった。

2割負担、ケアマネジメントの在り方は 部会

 第131回社会保障審議会介護保険部会が12月15日に開かれ、「介護保険制度の見直しに関する意見(案)」などが議論された。
 
 「介護保険制度の見直しに関する意見」は2022年12月に“第1弾”が公表されている。このとき結論が出されなかった、〈「一定以上所得」「現役並み所得」の判断基準〉〈補足給付の在り方〉〈ケアマネジメントに関する給付の在り方〉〈軽度者への生活援助サービスに関する給付の在り方〉などについて、これまで部会で議論が続けられた。
 
 これらは「次期計画に向けて得ることが適当」「第10期計画の開始までに出すのが適当」「引き続き検討」とされた。次期計画とは現在の第9期(2024-26年度)、第10期は27-29年度である。
 
 「一定以上所得の判断基準」は「次期計画に向けて」だったが、まだ決着していない。2割負担の拡大、すなわち適用される所得の引き下げにつながることから、反対意見が根強かった。現行制度では、2割負担となる所得基準は年280万円以上だ。これをどこまで引き下げるか。年260万円~230万円の範囲が提案されている。
 
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 今回、「持続可能性の確保」は
 
 ●「一定以上所得」「現役並み所得」の判断基準
 ●補足給付に関する給付の在り方
 ●ケアマネジメントに関する給付の在り方
 
 の3つの論点に絞って議論された。
 
 「一定以上所得」「現役並み所得」の「一定以上」とは、介護保険サービス利用時の自己負担を2割とする所得層で、「現役並み」とは自己負担3割の所得層だ。簡単にいえば所得の多い人は自己負担も多く、という応能負担の考え方に基づく施策である。現行の「一定以上所得」「現役並み所得」の基準は以下の通り。

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