給付と負担の7論点を議論 介護保険部会

2022年 11月 30日

 社会保障審議会(厚生労働相の諮問機関)介護保険部会は11月28日、「全世代型社会保障構築会議の報告」と「給付と負担」を議論した。

 全世代型社会保障構築会議は24日に第9回を開催した。介護については、介護保険制度の改革について、在宅サービス基盤の整備、介護職員の働く環境の改善、制度の持続可能性を論点として掲げた。

 介護保険の給付と負担については、これまでの部会で以下7項目が提示されている。

(1)被保険者範囲・受給権者範囲
(2)補足給付に関する給付の在り方
(3)多床室の室料負担
(4)ケアマネジメントに関する給付の在り方
(5)軽度者への生活援助サービス等に関する給付の在り方
(6)「現役並み所得」「一定以上所得」の判断基準
(7)高所得者の1号保険料の負担の在り方

 それぞれの主な論点は以下の通り。
(1)被保険者範囲・受給権者範囲
 ・第2号被保険者の対象年齢引き下げと第1号被保険者の対象年齢引き上げ
 ・障害福祉など他分野との関係も整理

(2)補足給付に関する給付の在り方
 ・公平性確保の観点から、マイナンバーの活用を含めて精緻な資産把握を

(3)多床室の室料負担
 ・老健、特養、介護医療院の多床室の室料負担について、在宅サービスの負担との公平性を重視する
 ・老健は療養支援、特養は事実上の生活の場、介護医療院は医療提供の場であり、機能の違いを考慮する

(4)ケアマネジメントに関する給付の在り方
 ・有料化による利用控え、セルフプラン増加によるケアマネジメントの質への影響

(5)軽度者への生活援助サービス等に関する給付の在り方
 ・総合事業の実施状況、認知症で要介護1・2の人へのサービスの質、訪問介護の人材不足など幅広い観点

(6)「現役並み所得」「一定以上所得」の判断基準
 ・2022年10月に施行された後期高齢者医療制度の「患者負担2割」(所得上位30%)との関係
 ・介護保険は医療保険に先行して2015年に「2割負担」が導入されている

(7)高所得者の1号保険料の負担の在り方
 ・低所得者の保険料上昇を抑制する必要から、高所得者の標準乗率の引き上げと低所得者の乗率引き下げを検討

 これらのうち、厚労省は3、6、7を優先して検討し、それ以外は事実上先送りするとの見方が出ている。

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特例介護の新類型を提案 介護保険部会🆕

 第128回社会保障審議会介護保険部会が11月10日に開かれ、「人口減少・サービス需要の変化に応じたサービス提供体制の構築等」「地域包括ケアシステムの深化(介護予防・日常生活支援総合事業等)」「地域包括ケアシステムの深化(高齢者向け住まい)」などが議論された。
 
 「人口減少・サービス需要の変化に応じたサービス提供体制の構築等」は、10月に開催された第126回部会で提案された、「特例介護サービス」の新たな類型案について、具体的に提案された。
 
 現行の特例介護サービスは、全国を対象地域とする「基準該当サービス」と厚労大臣が定める地域を対象とする「離島等相当サービス」である。事業者は指定でなく登録、人員配置基準は指定サービスより緩和されている(離島等相当サービスでは人員配置基準の規定はない)。報酬も、介護報酬を基準に市町村が設定する。これらは居宅サービスに適用される。

有料は届出から登録へ 望ましいあり方検討会🆕

 第7回有料老人ホームにおける望ましいサービス提供のあり方に関する検討会が10月31日に開催され、とりまとめ案について議論した。
 
 とりまとめ案は有料老人ホーム(以下、有料)における安全性やサービスの質の確保、入居契約の透明性確保、紹介事業の透明性や質の確保、指導監督や「囲い込み」対策の在り方など多岐にわたる。主な内容を以下に挙げる。
 
 ●中重度の要介護者(要介護3以上)や医療ケアを必要とする要介護者、認知症の人などを入居対象とする有料については、行政の関与により入居者保護を強化するため、登録制を導入。
 
 ●登録制は、公平性の観点から、要件に該当する既存の有料にも適用される。既存の有料が新制度に移行する際は一定の経過措置を設ける。
 
 ●参入後も事業運営の質の維持が求められるため、更新制や更新拒否の仕組みもつくる。行政処分を受けた運営事業者は一定期間、有料の開設が制限される。
 
 ●こうした有料については、高齢者の尊厳の保障やサービスの質の確保の観点から、職員体制や運営体制に関する一定の基準を法令で儲ける。

ケアマネ資格要件など議論 介護保険部会🆕

 第127回社会保障審議会介護保険部会が10月27日に開かれ、「介護人材確保と職場環境改善・生産性向上、経営改善支援等」「地域包括ケアシステムの深化(相談支援の在り方)」「持続可能性の確保」などが議論された。
 
 「地域包括ケアシステムの深化(相談支援の在り方)」では、ケアマネジャーの資格取得要件や業務の在り方について事務局から提案された。
 
 資格要件については、参入促進のため「受験対象である国家資格の範囲拡充」を提案。具体的には診療放射線技師、臨床検査技師、臨床工学技士、救急救命士、公認心理師が挙げられる。これら5資格の業務などは以下の通り。

中山間地域の訪問介護への定額導入など提案

 10月9日、第126回社会保障審議会介護保険部会が開かれ、「人口減少・サービス需要の変化に応じたサービス提供体制の構築等」「地域包括ケアシステムの深化(相談支援の在り方)」などが議論された。
 
 「人口減少…に応じたサービス提供体制の構築等」の論点は①地域の類型の考え方、②地域の実情に応じたサービス提供体制の維持のための仕組み、③地域の実情に応じた包括的な評価の仕組み、④介護サービスを事業として実施する仕組み、⑤介護事業者の連携強化、⑥地域の実情に応じた既存施設の有効活用、⑦調整交付金の在り方、と多岐にわたる。
 
 以下、①~⑤について事務局からの提案をまとめる。
 
 ①については、サービス需要が減少する「中山間・人口減少地域」ではサービス提供の維持・確保を前提に新たな柔軟化のための枠組みを設ける必要がある。その対象は「特別地域加算」の対象地域が基本となるが、拡充も考えられる。また、市町村の中でもエリアによって人口減少の進み方は異なるため、市町村内の一部エリアも対象とできないか。
 
 「中山間・人口減少地域」は、介護保険(支援)計画の策定時に、都道府県が市町村の意向を確認して決定する。「大都市部」「一般市等」では、現行制度の枠組みを活用したサービス基盤の維持・確保が求められる。
 
 委員からは、地域類型を定める根拠となる高齢者人口について、「その場合の高齢者とは何歳以上か、定義を定める必要がある」との指摘が相次いだ。
 
 ②は「中山間・人口減少地域」のサービス提供体制の維持・確保のために、特例介護サービスの枠組みを拡張する。新たな類型は下図の赤い部分だ。

介護保険見直しの議論始まる 介護保険部会

 第125回社会保障審議会介護保険部会が9月29日に開かれ、「地域包括ケアシステムの深化、持続可能性の確保」などが議論された。
 
 具体的な論点は①地域包括ケアシステムの実現・深化に向けた支援体制の整備、②医療介護連携の推進、③持続可能性の確保、の3点。
 
 事務局は①について、地域の状況に応じたサービス提供体制や支援体制の構築が重要、との前提で、地域の性格によって課題を以下のように位置づけた。
 
 中山間・人口減少地域…サービス基盤の維持・確保
 都市部…新たな事業者や人材の持続的な確保
 一般市等…前2者それぞれへの対応
 
 そのうえで中山間・人口減少地域では、前回の部会で議論されたサービス提供体制の確保のための方策について、介護保険事業計画に反映することが重要、との方向性を提示する。
 
 さらに、者向け住まいについては、「有料老人ホームにおける望ましいサービス提供のあり方に関する検討会」の議論もふまえ、介護保険部会で議論して整理する。介護予防や人材確保、生産性向上に関する事項も含めて…

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