医療と介護の報酬改定、方針が出揃う

2023年 12月 12日

 12月11日、令和6年度の診療報酬改定の基本方針と介護報酬改定の審議報告案が出揃った。診療報酬改定は社会保障審議会の医療保険部会と医療部会、介護報酬改定は介護給付費分科会がまとめた。それぞれの基本認識・視点は以下の通り。共通する(と考えられる)項目を同じ色で示した。

【診療報酬改定にあたっての基本認識】
●物価高騰・賃金上昇、経営の状況、人材確保の必要性、患者負担・保険料負担の影響を踏まえた対応

●全世代型社会保障の実現や、医療・介護・障害福祉サービスの連携強化、新興感染症等への対応など医療を取り巻く課題への対応

●医療DXやイノベーションの推進等による質の高い医療の実現

●社会保障制度の安定性・持続可能性の確保、経済・財政との調和

【介護報酬改定の基本的な視点】
人口構造や社会経済状況の変化を踏まえ、

●地域包括ケアシステムの深化・推進

●自立支援・重度化防止に向けた対応

●良質な介護サービスの効率的な提供に向けた働きやすい職場づくり

●制度の安定性・持続可能性の確保

を基本的な視点として、介護報酬改定を実施

 こうした基本認識・方針に基づき、以下のような改定内容が示されている。

【診療報酬改定】
⑴現下の雇用情勢も踏まえた人材確保・働き方改革等の推進=重点課題
 ・医師、歯科医師、薬剤師、看護師以外の医療従事者の処遇改善
 ・医師の働き方改革

⑵ポスト2025を見据えた地域包括ケアシステムの深化・推進や医療DXを含めた医療機能の分化・強化、連携の推進
 ・医療DXの推進による医療情報の有効活用、遠隔医療の推進
 ・生活に配慮した医療の推進など地域包括ケアシステムの深化・推進のための取り組み
 ・質の高い在宅医療・訪問看護の確保

⑶安心・安全で質の高い医療の推進
 ・人生の最終段階における医療・ケアを充実させる取り組みを推進
 ・認知症の者に対する適切な医療の評価
 ・地域移行・地域生活支援の充実を含む質の高い精神医療の評価

⑷効率化・適正化を通じた医療保険制度の安定性・持続可能性の向上
 ・後発医薬品やバイオ後続品の使用促進、長期収載品の保険給付の在り方の見直し

【介護報酬改定】
1.地域包括ケアシステムの深化・推進
 ・医療介護連携の推進
 ・福祉用具貸与・特定福祉用具販売の見直し

2.自立支援・重度化防止に向けた対応
 ・LIFEを活用した質の高い介護

3.良質な介護サービスの効率的な提供に向けた働きやすい職場づくり
 ・介護職員の処遇改善
 ・生産性の向上等を通じた働きやすい職場環境づくり

4.制度の安定性・持続可能性の確保
 ・評価の適正化・重点化
 ・報酬の整理・簡素化

5.その他
 ・「書面掲示」規制(公的な証明書等を特定の場所に掲示することを求める規制。いわゆる「アナログ規制」)の見直し
 ・看多機のサービス内容の明確化

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訪問介護の倒産止まらず 報酬引き下げなど響く🆕

 東京商工リサーチの調査によると、訪問介護事業者の2025年の倒産(負債1000万円以上)が11月末までに85件に達し、これまで最多だった23年67件、24年81件をすでに超え、3年連続で最多を更新した。  人手不足や24年度の介護報酬改定で訪問介護の基本報酬が引き下げられたことに加え、人件費やガソリン代、運営コストの上昇が要因と見込まれる。  25年の訪問介護事業者の倒産は11月末までに85件(前年81件)で、3年連続で年間最多を更新した。...

2割負担対象も預貯金に応じ1割の案 部会🆕

 第130回社会保障審議会介護保険部会が12月1日に開かれ、「持続可能性の確保」「論点ごとの議論の状況」などが議論された。
 
 今回、「持続可能性の確保」は
 
 ●「一定以上所得」「現役並み所得」の判断基準
 ●補足給付に関する給付の在り方
 ●ケアマネジメントに関する給付の在り方
 
 の3つの論点に絞って議論された。
 
 「一定以上所得」「現役並み所得」の「一定以上」とは、介護保険サービス利用時の自己負担を2割とする所得層で、「現役並み」とは自己負担3割の所得層だ。簡単にいえば所得の多い人は自己負担も多く、という応能負担の考え方に基づく施策である。現行の「一定以上所得」「現役並み所得」の基準は以下の通り。

賛否分かれる論点に進展なし 介護保険部会

 第129回社会保障審議会介護保険部会が11月20日に開かれ、「介護保険制度に関するその他の議題」「持続可能性の確保」などが議論された。
 
 「持続可能性の確保」の内容は
 
 ●1号保険料負担の在り方
 ●「一定以上所得」「現役並み所得」の判断基準
 ●ケアマネジメントに関する給付の在り方
 ●軽度者への生活援助サービスに関する給付の在り方
 ●被保険者範囲・受給者範囲
 ●金融所得・金融資産の反映の在り方
 
 など、注目度が高い項目が多く、これまでも議論が続いてきたが、今回は事務局から具体的にどうするか、施策の方向は示されていない。
 
 ケアマネジメントに関する給付の在り方については、他サービスと同様に幅広い利用者に負担を求めること(ケアマネジメント有料化)や、その判断にあたって利用者の所得状況を考慮することをどう考えるか、住宅型有料老人ホームの入居者に係るケアマネジメントについて利用者負担を求めるか、などの論点が示された。

特例介護の新類型を提案 介護保険部会

 第128回社会保障審議会介護保険部会が11月10日に開かれ、「人口減少・サービス需要の変化に応じたサービス提供体制の構築等」「地域包括ケアシステムの深化(介護予防・日常生活支援総合事業等)」「地域包括ケアシステムの深化(高齢者向け住まい)」などが議論された。
 
 「人口減少・サービス需要の変化に応じたサービス提供体制の構築等」は、10月に開催された第126回部会で提案された、「特例介護サービス」の新たな類型案について、具体的に提案された。
 
 現行の特例介護サービスは、全国を対象地域とする「基準該当サービス」と厚労大臣が定める地域を対象とする「離島等相当サービス」である。事業者は指定でなく登録、人員配置基準は指定サービスより緩和されている(離島等相当サービスでは人員配置基準の規定はない)。報酬も、介護報酬を基準に市町村が設定する。これらは居宅サービスに適用される。

有料は届出から登録へ 望ましいあり方検討会

 第7回有料老人ホームにおける望ましいサービス提供のあり方に関する検討会が10月31日に開催され、とりまとめ案について議論した。
 
 とりまとめ案は有料老人ホーム(以下、有料)における安全性やサービスの質の確保、入居契約の透明性確保、紹介事業の透明性や質の確保、指導監督や「囲い込み」対策の在り方など多岐にわたる。主な内容を以下に挙げる。
 
 ●中重度の要介護者(要介護3以上)や医療ケアを必要とする要介護者、認知症の人などを入居対象とする有料については、行政の関与により入居者保護を強化するため、登録制を導入。
 
 ●登録制は、公平性の観点から、要件に該当する既存の有料にも適用される。既存の有料が新制度に移行する際は一定の経過措置を設ける。
 
 ●参入後も事業運営の質の維持が求められるため、更新制や更新拒否の仕組みもつくる。行政処分を受けた運営事業者は一定期間、有料の開設が制限される。
 
 ●こうした有料については、高齢者の尊厳の保障やサービスの質の確保の観点から、職員体制や運営体制に関する一定の基準を法令で儲ける。

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