多床室の室料負担に反対意見 給付費分科会

2023年 12月 5日

 12月4日、第234回社会保障審議会介護給付費分科会が開催され、令和6年度(2024年度)介護報酬改定に向けて「運営基準に関する事項」「多床室の室料負担」「複合型サービス(訪問介護と通所介護の組合せ)」「その他(基準費用額、総合マネジメント体制強化加算、終末期の薬学管理、定期巡回・随時対応型訪問介護看護における訪問看護関連加算等の取扱い)」について議論した。

 それぞれの主な論点は以下の通り。

運営基準に関する事項…1訪問系、2通所系、3短期入所系、4多機能系、5福祉用具貸与・特定福祉用具販売、6居宅介護支援・介護予防支援、7居住系、8施設系、9短期入所・多機能・居住・施設共通の事項と、事務局が示す改正案は多岐にわたる。

 6では、要件を満たせばテレビ電話等によるモニタリングが可能とし、少なくとも2カ月に1回(介護予防支援は6カ月に1回)は居宅を訪問する、との案が含まれる。7では、生産性向上に先進的に取り組む特定施設の人員配置基準を特例的に柔軟化する。

 8では施設系サービス(特養、老健、介護医療院)に共通して、在宅医療を担う医療機関と実効性ある連携体制を構築する、と盛り込まれている。

多床室の室料負担…老健と介護医療院について、一定所得のある多床室の入所者から室料負担を求めてはどうか。
複合型サービス(訪問介護と通所介護の組合せ)…これまでの分科会での議論をふまえ、実証的な事業実施とその影響分析を含め、さらに検討を深める。
その他(基準費用額)…光熱水費の高騰に対応し、在宅との均衡を図るため、必要な対応を検討する。
その他(総合マネジメント体制強化加算)…基本サービス費としてではなく現行の加算とした上で新たな区分を設けてはどうか。
その他(終末期の薬学管理)…終末期の緩和ケアは非がん患者に対しても行われている。心不全や呼吸不全で麻薬の注射薬を使用している患者については、末期がん患者と同様に算定の上限回数を週に2回かつ月に8回と見直してはどうか。
その他(定期巡回・随時対応型訪問介護看護における訪問看護関連加算等の取扱い)…ターミナルケア加算、緊急時訪問看護加算、退院時協働指導課さんについては、訪問看護の対応案と同様としてはどうか。

 多くの委員が老健・介護医療院の多床室の室料負担について反対意見を表明した。事務局の案では、老健や介護医療院の多床室は特養の多床室と同様“生活の場”であり、公平性の点からも室料負担を導入すべきと提案する。しかし、これらは果たして“生活の場”と言えるのかと疑問を呈する委員が多かった。

 多床室はカーテンや家具で仕切られているだけで個人が占有できる床面積は狭く、それを生活の場と称するのは「屁理屈」と表現した委員も。そのほか、特養で多床室の室料が徴収されることとなって利用できなくなった人のその後を追跡調査しているのか、との質問があった。

 これに対して事務局は「マクロではあるが、室料負担の導入後に利用控えと考えられる大きな落ち込みはない、とのデータがある」と回答。「室料の額や見直し時期など丁寧に説明する」と応じた。

 「老健や介護医療院は紛れもなく医療の場」であり「特養では対処できない利用者への医療の砦」であり、室料には「断固反対」との意見も出された。ほか、「大変遺憾」「論外」といった表現で反対意見が表出された。

このカテゴリーの最新の記事

このカテゴリはメンバーだけが閲覧できます。このカテゴリを表示するには、年会費(年間購読料) もしくは 月会費(月間購読料)を購入してサインアップしてください。

訪問介護事業者の倒産が10月で年間最多上回る🆕

 東京商工リサーチによると、介護事業者(老人福祉・介護事業)の倒産が1-10月で145件発生し、これまで年間最多だった2022年の143件を上回り、2カ月残して過去最多を記録した。  業種別では、訪問介護72件で23年の67件を抜いて過去最多となった。ヘルパー不足や燃料代などの運営コスト上昇に加え、24年の介護報酬マイナス改定の影響が出ている可能性がある。  訪問介護以外では、通所・短期入所が48件、有料老人ホームが11件、その他が14件だった。...

23年度の介護保険費用の総額は11兆5139億円

 厚生労働省によると、介護給付費と自己負担額を合わせた2023年度の介護保険費用の総額は11兆5139億円で、前年度に比べ約3227(2.9%)増え過去最多となった。  介護サービス費は11兆2146億円で、同3066億円(2.8%)増、介護予防サービス費は2993億円で同161億円(5.7%)増えた。  受給者数は介護サービスが566万6500人で同7万4900人(1.3%)の増加、介護予防サービスは124万4600人で同5万9900人(5.4%)増えている。...

高齢者数が過去最多、高齢化率は200カ国中最高に

 総務省がまとめた65歳以上の高齢者人口推計によると、「敬老の日」の9月15日時点の高齢者数は3625万人で過去最多となった。総人口に占める割合は29.3%で過去最高となっている。  総人口が前年に比べ59万人減少しているのに対し、65歳以上人口は2万人増加した。この結果、総人口に占める割合は前年に比べ0.2ポイント増加した。  総人口に占める65歳以上人口の割合の推移をみると、1950年(4.9%)以降、一貫して上昇しており、1985年に10%、2005年に20%を超えていた。...

「高齢社会対策大綱」決定 医療費負担拡大を検討

 政府は6月13日、2018年以来6年ぶりの改定となる「高齢社会対策大綱」を閣議決定。75歳以上の後期高齢者の医療費について、窓口負担が3割となる対象範囲の拡大を検討する方針を示した。  後期高齢者の窓口負担は現在、原則1割、一定の所得があれば2割、現役並みの所得があれば3割負担となっている。これを、年齢にかかわりなく、能力に応じて支え合うという観点から、3割負担の対象の拡大を検討することになった。...

6月の訪問介護事業所の廃業が前年に比べ1割増

 厚生労働省の調査によると、6月の訪問介護事業所の廃業数が前年同月に比べ1割増加していることが分かった。4月の介護報酬改定で訪問介護の基本報酬が引き下げられたことも一因と見られそうだ。  都道府県・政令市・中核市129自治体に照会し、126自治体から回答を得た。その結果、廃止事業所数は133で、前年同月の119から11.8%増加した。...

1週間無料でお試し購読ができます  詳しくはここをクリック

新着記事は1カ月無料で公開

有料記事は990円(税込)で1カ月読み放題

*1年間は1万1000円(同)

〈新着情報〉〈政策・審議会・統計〉〈業界の動き〉は無料

【アーカイブ】テーマ特集/対談・インタビュー

コラム一覧

【アーカイブ】現場ルポ/医療介護ビジネス新時代

アクセスランキング(11月11-17日)

  • 1位
  • 2位
  • 3位 90% 90%
メディカ出版 医療と介護Next バックナンバーのご案内

公式SNS