老健の“特養化”に初めて言及 財政審建議

2023年 6月 12日

 財政制度審議会はこのほど財政制度の基本的考え方に関する建議を取りまとめた。子ども・高齢化については、少子化対策で新たな財政需要が生じる中で、診療報酬や介護報酬の引き上げに慎重な議論を求める考え方が示された。

 少子化対策のための財源は、将来世代へ負担を先送りするのではなく、社会全体で安定的にさせていく必要があると指摘。企業を含め社会・経済の参加者全員が負担能力に応じて全世代型で負担することで、子育て世帯が子育て期間全体として手取り増になるようにすることが重要とした。

 医療に関しては、この3年間、国費により病床確保料、ワクチン接種支援など主なものだけで21兆円程度の支援が行われてきたことに対し、確実に正常化するとともに、新たな危機に備える観点からも効果などについて十分な検証を行うべきと指摘した。

 また、病院の財政状況を見ると、2020年度から21年度にかけて、純資産が事業費用の5%相当の規模で増加していることから、賃金・物価高への対応は、こうした資産の活用を求めた。

 ちなみに、日本医師会・日本歯科医師会・日本薬剤師会は、物価高騰対策や医療・介護従事者の賃上げのため、さらなる政府の財政措置を要望する合同声明を取りまとめて公表している。

 後期高齢者医療制度では、一定所得以上の後期高齢者に2割負担が導入されたが、原則2割負担とすることを前向きに検討することが必要とした。

 地域医療構想に関して、「急性期」について、看護配置に依存した診療報酬体系から、実績を反映した体系に転換していくべきとし、その中で、10対1を要件とする急性期入院料は廃止を検討すべきと提言した。

 さらに、リフィル処方箋の普及促進に向け、薬剤師がリフィル処方箋への切り替えを処方医に提案することを評価する仕組みや、薬剤師の判断でリフィルに切り替えることを認めることの検討を求めた。

 介護については、ICT機器の活用を通じた業務負担の軽減やデータに基づいた介護サービスの質の向上を図るとともに、介護施設・デイサービスなどの「3対1」の人員配置の効率化が不可避とした。

 また、介護医療院と介護老人保健施設の多床室の室料相当額を利用者本人の負担とすること、要介護1・2への訪問介護・デイサービスの地域支援事業への移行、ケアマネジメントに利用者負担を導入すること、介護老人保健施設の特養への移行や特養に近い形の人員配置・報酬体系を検討すべきと提言した。

 さらに、介護事業者の5割が人材紹介会社を活用しているが、一部の事業者が高額の経費を支払っており、必ずしも安定的な職員の確保につながっていないと指摘。ハローワークや都道府県などを介した公的人材紹介を強化すべきとした。

 障害福祉サービスについては、サービス量が急増している中で、報酬設定が適切か不断の見直しが必要として、放課後等デイサービスなどのサービス報酬を利用時間の実態に基づいた報酬体系に見直す必要性を指摘した。

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2割負担対象も預貯金に応じ1割の案 部会🆕

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 今回、「持続可能性の確保」は
 
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 など、注目度が高い項目が多く、これまでも議論が続いてきたが、今回は事務局から具体的にどうするか、施策の方向は示されていない。
 
 ケアマネジメントに関する給付の在り方については、他サービスと同様に幅広い利用者に負担を求めること(ケアマネジメント有料化)や、その判断にあたって利用者の所得状況を考慮することをどう考えるか、住宅型有料老人ホームの入居者に係るケアマネジメントについて利用者負担を求めるか、などの論点が示された。

特例介護の新類型を提案 介護保険部会

 第128回社会保障審議会介護保険部会が11月10日に開かれ、「人口減少・サービス需要の変化に応じたサービス提供体制の構築等」「地域包括ケアシステムの深化(介護予防・日常生活支援総合事業等)」「地域包括ケアシステムの深化(高齢者向け住まい)」などが議論された。
 
 「人口減少・サービス需要の変化に応じたサービス提供体制の構築等」は、10月に開催された第126回部会で提案された、「特例介護サービス」の新たな類型案について、具体的に提案された。
 
 現行の特例介護サービスは、全国を対象地域とする「基準該当サービス」と厚労大臣が定める地域を対象とする「離島等相当サービス」である。事業者は指定でなく登録、人員配置基準は指定サービスより緩和されている(離島等相当サービスでは人員配置基準の規定はない)。報酬も、介護報酬を基準に市町村が設定する。これらは居宅サービスに適用される。

有料は届出から登録へ 望ましいあり方検討会

 第7回有料老人ホームにおける望ましいサービス提供のあり方に関する検討会が10月31日に開催され、とりまとめ案について議論した。
 
 とりまとめ案は有料老人ホーム(以下、有料)における安全性やサービスの質の確保、入居契約の透明性確保、紹介事業の透明性や質の確保、指導監督や「囲い込み」対策の在り方など多岐にわたる。主な内容を以下に挙げる。
 
 ●中重度の要介護者(要介護3以上)や医療ケアを必要とする要介護者、認知症の人などを入居対象とする有料については、行政の関与により入居者保護を強化するため、登録制を導入。
 
 ●登録制は、公平性の観点から、要件に該当する既存の有料にも適用される。既存の有料が新制度に移行する際は一定の経過措置を設ける。
 
 ●参入後も事業運営の質の維持が求められるため、更新制や更新拒否の仕組みもつくる。行政処分を受けた運営事業者は一定期間、有料の開設が制限される。
 
 ●こうした有料については、高齢者の尊厳の保障やサービスの質の確保の観点から、職員体制や運営体制に関する一定の基準を法令で儲ける。

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