第216回社会保障審議会介護給付費分科会は4月27日、①テクノロジー活用等による生産性向上の取組に係る効果検証について、②今後の新型コロナウイルス感染症に係る介護サービス事業所の人員基準等の臨時的な取扱いについて、議論した。
2022(令和4)年度、「介護ロボット等による生産性向上の取組に関する効果測定事業」が実施され、分科会の冒頭、事務局からその結果が報告された。
同事業での実証テーマは、①見守り機器等を活用した夜間見守り、②介護ロボットの活用、③介護助手の活用、④介護事業者等からの提案手法、の4つ。それぞれについて、介護職員の業務内容の変化、働き方や職場環境がどう改善したか、ケアの質は確保されているか、を調査した。
実証テーマ①については、「見守り機器導入率が増加すると、直接介護と巡回・移動時間の合計が減少」(2020~22年度の実証結果を合算した結果)し、「見守り機器導入により、利用者の状況が可視化できる・より適切なタイミングでケアが提供できる」との回答の割合が高かった。
実証テーマ②は移乗支援ロボットについて、装着型・非装着型に分けて実証。装着型では、移動・移乗・体位変換にかかる業務時間は介護ロボットの着脱・装着時間を含めると、やや増加した。
腰痛が「かなり痛い」職員の割合はやや減少、「ひどく痛い」はやや増加、「中程度痛い」は変化はなかった。
非装着型では、移動・移乗・体位変換にかかる夜間の業務時間が微増、昼間は大きな変化はなかった。
腰痛が「ひどく痛い」「かなり痛い」職員の割合はやや減少、「中程度痛い」は変化はなかった。装着型・非装着型とも、利用者の意欲(Vitality index)の傾向に大きな変化はなかった。
実証テーマ②は排泄支援機器についても調査を実施。機器を導入後、トイレ誘導時に排泄がなかった回数が減少した。利用者の状況が可視化され、適切な排泄支援につながり、職員の心理的負担は軽減した。
実証テーマ③では、介護助手は食事やおやつの準備・片付け、リネン交換・ベッドメイク、居室清掃・片付けなどを担った。その結果、介護職員は間接業務の時間が減り、利用者のケアに注力できるようになった。利用者の発語や笑顔が増加する傾向がみられた。
実証テーマ④は選定された3法人の実証結果が報告された。
この「効果検証」について、分科会委員からは、「事業の対象となった施設数が少なく、アウトカム(効果)の設定が腰痛というのは疑問」など厳しい意見も出された。
人手不足を機器で補おうとするあまり、過去の集団ケアに逆戻りすることを危惧する意見や、排泄支援機器を認知症高齢者に適用することへの懸念も聞かれた。