〈特集〉の記事一覧
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新生会が提供する高齢期の暮らし ②リハビリセンター白鳥

新生会が提供する高齢期の暮らし ②リハビリセンター白鳥

◆居室を窓側に配した「個室型多床室」
 
 リハビリセンター白鳥(しろとり)はより多くの人に個室を提供するため「個室型多床室」というアイデアを打ち出し、実現した施設である。1階のカフェでは職員手作りのパンや駄菓子などが販売され、近所の子どもたちが訪れる。
 
■個室型多床室
 池田町の白鳥地区にある「リハビリセンター白鳥」は2階建てで、1階にリハビリルームとコミュニティカフェ、グループホームなどがある。2階は特別養護老人ホームとショートステイを合わせ45部屋で、ここが全国でも唯一の個室型多床室である。
 
 一般的に多床室は4つのベッドがカーテンで仕切られ、ベッドとベッドの間の空間が通路だ。個室型多床室ではすべての居室を窓側に配置し、ベッド間の空間を個室の外にまとめ、ゆったりした共有スペースを設ける構造とした。このスペースはセミプライベート空間である。
 
 なぜ、このような造りにしたのか。管理者の砂川淳一さんは「多床室には、ベッドの位置が窓側と廊下側に分かれる、プライバシーが保てない、といったデメリットがある」と指摘し、「そのデメリットを可能な限り取り除き、多床室でありながらも個室のような環境で過ごしていただける空間と、そして広い共有スペースを確保した」と答えた。「そうすることで、日常生活の支援を充実させることができる」。
 
 居室は寝室の役割に限定する一方、さまざまな広さの共有スペースがあちこちに設えられている。大画面テレビや移動式菜園が設置されたパブリックスペース、1人で椅子に腰かけてうとうとしたりできるセミプライベートスペースなど、入居者が思い思いに過ごせる場所とした。
 
 各居室は2.4m×2.7mと確かに広くはないが、すべての部屋に大きな窓があり、ベッドで横になっても外の景色が見える。部屋の入口の引き戸は障子で、外からぼんやり光が入ってくる。こうした工夫により、狭さの割に圧迫感は感じない…

新生会が提供する高齢期の暮らし ①サンビレッジ宮路

新生会が提供する高齢期の暮らし ①サンビレッジ宮路

◆濃尾平野を一望する高台の一戸建て有料老人ホーム
 
 社会福祉法人新生会は本部のある岐阜県池田町のほか、岐阜市・瑞穂市・大垣市に10施設を展開している。いずれも設立の意図が明確な複合施設で、先進的な取り組みを行っている。その中から5カ所を紹介する。第1弾は日本初の一戸建て・住宅型有料老人ホームのある「サンビレッジ宮路」である。
 
■サンヒルズ ヴィラ・アンキーノ
 池田町、池田山中腹に設けられたサンビレッジ宮路は、一戸建て有料老人ホーム「サンヒルズ ヴィラ・アンキーノ」「デイサービスセンターちゃぼぼ」「グループホーム弥生」などで構成される。
 
 サンヒルズ ヴィラ・アンキーノは、介護が必要になっても自由で健康的な暮らしをするためにつくられた。豊かな自然の中で、元気なうちは別荘として余暇を過ごしたり、早めに住み替えて落ち着いた生活を楽しんだりできる。
 
 要介護状態になれば、訪問診療・訪問看護・訪問介護や併設のデイサービスを利用して暮らしを維持する。
 
 認知症が進めば、グループホームに移り住むこともできる。単身用と夫婦用があり、自分のライフスタイルに合わせ、32㎡のシングル、45㎡のセミダブル、56㎡のダブルの中から選べる。
 
 室内にはエアコンや床暖房、浴室、シャワートイレ、IHキッチンなど、日々の暮らしに必要な設備が備え付けられているほか、ナースコールと夜間定時の2回の見回りにより、安全も確保されている。
 
 居室からは濃尾平野を一望でき、共用スペースに集会所・読書コーナー・喫茶室、屋外には小さな畑もある。敷地内には花が咲き、職員が育てている果物や野菜は自由に採れる。
 
 周辺には梅林や茶畑、温泉のほか、渓流沿いに桜並木がある町営の大津谷公園もある。シャトルバスで買い物や散策に出かけることも可能だ。
 
 各戸は独立しているものの、ウッドデッキで連結されているので、隣の家と気軽に行き来できる。
 
■デイサービスセンターちゃぼぼ
 併設のデイサービスは、同じ池田町内にある「リハビリセンター白鳥」「サンビレッジ新生苑」のデイに比べると、比較的要介護度が低い人の利用を想定したプログラムが組まれている。
 
 サンビレッジ宮路の廣瀬京子施設長は「手工芸やリハビリをしたり、梅林で自ら収穫した梅を使った梅酒や梅干しづくりを行ったり…

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在宅の限界点を上げる短時間訪問介護 ――新生メディカルの「身体0」(下)

在宅の限界点を上げる短時間訪問介護 ――新生メディカルの「身体0」(下)

 新生メディカルのヘルパーが「身体0」で訪問する時間帯は朝、昼、夕、夜間である。1回の訪問時間は短いが、利用者に応じていろいろなケアができるのは前回紹介したとおりだ。
 
■定期巡回サービスのデメリット
 身体0は毎日の生活を支えるため、1日に複数回、短時間訪問する。人の生活は、1日24時間の生活リズム――起き、食べ、排泄し、動き、そして寝る――の繰り返し。週単位や月単位のリズムではないから、週1回だけ長時間訪問する、といったサイクルでは、生活は成り立たない。
 
 新生メディカルの今村あおい代表取締役は「身体0は、この生活リズムをしっかり支えるためにヘルパーが毎日決まった時間に訪問する、活用しやすいツールです」と説明する…

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20分の在宅訪問で独居生活を維持 ――新生メディカルの「身体0」(上)

20分の在宅訪問で独居生活を維持 ――新生メディカルの「身体0」(上)

 岐阜県内でケア事業を幅広く展開する社会福祉法人新生会と株式会社新生メディカルは、介護保険制度以前から先進的な取り組みで知られてきた。この特集では、現在の新生会グループが提供するケアを多角的に紹介する。
 
 株式会社新生メディカルは訪問介護、通所介護、居宅介護支援、定期巡回・随時対応型訪問介護看護、福祉用具貸与販売などの介護保険サービスや、保育所事業を提供・運営している。社会福祉法人新生会の石原美智子名誉理事長が1977(昭和52)年に創業し、90年に株式会社化した。石原さんは現在、新生メディカルの代表取締役会長でもある。
 
■8人の利用者への訪問に同行
 同社が現在力を入れているのは、訪問介護の20分未満の身体介護サービス「身体0(ゼロ)」だ。20分未満の在宅訪問でどんな身体介護を提供しているのか、8人の利用者への訪問を同行取材させていただいた。
 
 訪問日時は5月7日夕方(3人)、8日朝(1人)、夕(5人)で、うち1人は夕と朝の両方に同行した。ヘルパーは勝野美雪さん、髙木美香さん、中川千絵さんの3人。皆さん、ヘルパー歴10年ほどのベテランである。
 
 利用者8人は全員独居、年齢は78歳から99歳。要介護度は最も高いBさん・Hさんで要介護4。B、C、D、Fさんは認知症がある。8人の住まいは一戸建て住宅(1人)、一戸建て有料老人ホーム(2人)、集合住宅(5人、同一建物)である。
 
 3人のヘルパーは20分(未満)の間に、上記のほかにもスマホに業務開始と終了を入力し、記録も残す。室内をきびきびと動き回る間にも、利用者に話しかけ、気を配り続ける。エアコンの温度を調整したり、冷蔵庫の中を見たり、照明を点けたり消したり、無駄な動きは一切ない。
 
■利用者の選択とこだわりを尊重
 Aさんは今回同行した8人中、唯一、一戸建て住宅に暮らしている。ヘルパー勝野さんは屋内に入ってすぐ、Aさんの居室ではないところの窓が開いていることに気づいた。Aさんは前夜から開けたままと説明し、閉めなくていいと言う。勝野さんは室温を確認し、そのまま窓を開けておいた。
 
 Cさんへのケアは夕方と翌日朝の2回、同行した。朝の訪問で、ヘルパー髙木さんはCさんが朝食を調理するのを隣で見守る。
 
 Cさんがみそ汁に卵を割り入れた際、殻のかけらが入ってしまった。それに気づいた髙木さんが取り除くのかと思って見ていると、髙木さんは「殻が入ってしまいましたね、取れますか?」と促し、見守り続けた。そしてCさんが「ほんとや、取らな」と言いながら…

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介護報酬改定で経営が逼迫なら支援策を 小規模事業者の継続は協働化がカギ 石田路子・名古屋学芸大学客員教授🆕

介護報酬改定で経営が逼迫なら支援策を 小規模事業者の継続は協働化がカギ 石田路子・名古屋学芸大学客員教授🆕

 今回の介護報酬改定では、訪問介護の基本報酬がすべて引き下げられた。これにより、今後、訪問介護はどうなっていくと考えられるか。また、打撃を受けるとみられる小規模事業者はどうしたらいいのか。介護報酬改定を議論してきた厚生労働相社会保障審議会介護給付費分科会の委員を務め、議論に参加してきた石田路子・名古屋学芸大学客員教授に聞いた。
 
■処遇改善の方向性は評価

――今回の介護報酬改定の内容を全体としてはどう評価していますか。
 
 介護人材不足がいよいよ深刻化する中、処遇改善をとにかくやろうという、その方向性そのものについては間違いないし、今回は処遇改善に向けての施策がかなり講じられたのは確かだと思います。
 
――訪問介護の基本報酬だけが引き下げられたことについては。
 
 収支差率に基づいて厚労省が判断をしたということになると思います。昨年度の実績では、特養が前年度に比べマイナス1. 0%、老健がマイナス1. 1%だったのに対し、訪問介護は7. 8%とかなり大きなプラスになりました。
 
 さらに、定期巡回・随時対応型訪問介護が11. 0%、夜間対応型訪問介護については9. 9%というように、高い数字になっているものですから、訪問に関しては…

ホームヘルパーに聞く②「宝ケアサービス赤羽」の渡部利恵さん、「荒川サポートセンターかどころ」の長浦美加さん🆕

ホームヘルパーに聞く②「宝ケアサービス赤羽」の渡部利恵さん、「荒川サポートセンターかどころ」の長浦美加さん🆕

 東京都内の事業所で働くホームヘルパー4人に、この職種を選んだ理由や仕事内容などを聞く第2弾で紹介するのは、宝ケア株式会社「宝ケアサービス赤羽」(北区)の渡部利恵さんと、NPO法人東京ケアネットワーク「荒川サポートセンターかどころ」の長浦美加さん。2人はともにサービス提供責任者(サ責)を務めており、サ責ならではの大変さについても語ってもらった。
 
■渡部利恵さん―多忙なサ責の職務、達成感が原動力に
 渡部利恵さんが勤務する宝ケアは、北区で訪問介護事業を54年間展開しており、宝ケアサービス赤羽は同社が運営している3つの事業所の1つある。
 
 渡部さんがホームヘルパーになったのは、10年ほど前。介護福祉士の資格を取得後、最初はデイサービスで働いたが、子どもが小さかったため、朝が早かったり、夜遅かったりすることもあるデイサービスの仕事は厳しいと感じていたところ…

ホームヘルパーに聞く①「みずべの苑」(東京都北区)の大図理紗さんと福島珠美さん🆕

ホームヘルパーに聞く①「みずべの苑」(東京都北区)の大図理紗さんと福島珠美さん🆕

 ホームヘルパーとして働いている人たちは、なぜこの仕事を選び、どのような働き方をしているのか。東京都内の事業所で働く4人に聞いた。1回目は北区の社会福祉法人うららの訪問介護事業所「みずべの苑」で正社員として働く大図理紗さんと、登録ヘルパーで働く福島珠美さんを紹介する。
 
■大図理紗さん―利用者や家族からの感謝の言葉にやりがい
 大図さんは4年前、新卒でみずべの苑に入社した。卒業した東洋大学では、1年生の時から特養やデイサービスなどで実習を行うが、4年生の時に同事業所で訪問介護の実習を受けたことを機に、ホームヘルパーになろうと決めた。
 
 ヘルパーの働いている姿や利用者とのかかわりを見て「かっこいいな」と思ったからだ。1学年上の先輩が勤務していることもあり、同事業所を選んだ。
 
 訪問介護事業所を就職先として選んだ同級生はほとんどおらず…

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行政と一体でホームヘルパーを養成 練馬区介護サービス事業者連絡協議会🆕

行政と一体でホームヘルパーを養成 練馬区介護サービス事業者連絡協議会🆕

 東京都練馬区の人口は74万人で、23区では世田谷区に次いで人口が多い。区内には約200カ所も訪問介護事業所があるが、ホームヘルパーが足りなくて回せないという声はあまり聞かない。それは、事業者と行政が一体となって養成しているからだ。
 
■独自の「介護スタッフ研修」を実施
 練馬区の介護事業者の団体である練馬区介護サービス事業者連絡協議会(事連協)の副会長で、事連協訪問介護部会の部会長を務める加藤均氏(みんなのかいご代表取締役)によると、そのきっかけとなったのは、2017年に総合事業が始まったこと。
 
 その担い手をどうするかが問題となった時に、同部会から区に総合事業の担い手を養成する「介護スタッフ研修」を提案し、ホームヘルパーを創出する仕組みを作ることになった。
 
 この取り組みがユニークなのは、いきなり初任者研修を行うのではなく…

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長時間移動への対策講じ、中山間地にもサービスを提供 「ヘルパーステーション・えるだー」(島根県出雲市)🆕

長時間移動への対策講じ、中山間地にもサービスを提供 「ヘルパーステーション・えるだー」(島根県出雲市)🆕

 中山間地への訪問介護は移動時間が長いため難しいと言われる。そうした地域を抱える島根県出雲市の「えるだー」(黒松基子取締役)は、サービス提供時間が長めの利用者を対象とすることで長距離移動の負担をカバーし、中山間地への訪問に対応できるようにしている。
 
■処遇困難ケースを積極的に受け入れ
 えるだーは訪問介護事業所「ヘルパーステーション・えるだー」と小規模多機能型居宅介護「セカンド・サロン えるだー」を運営している。福祉タクシー事業も行っているが、これはあくまでも、えるだーの利用者の病院や学校への送迎のために使うものだ。
 
 黒松氏によると、出雲市には島根県内の自治体で最も多くの介護施設があるものの、介護職員が足りないという話はあまり聞かない。不足しているとすれば、県西部の…

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業務内容への正しい理解を 自立支援や重度化防止が本来の役割 全国ホームヘルパー協議会・鍋谷晴子副会長🆕

業務内容への正しい理解を 自立支援や重度化防止が本来の役割 全国ホームヘルパー協議会・鍋谷晴子副会長🆕

 ホームヘルパーの全国組織は2つある。前回の日本ホームヘルパー協会に続き、今回は全国ホームヘルパー協議会の鍋谷晴子副会長(石川県ホームヘルパー協議会会長)に、訪問介護事業をめぐる課題や協議会の取り組みなどを聞いた。
 
■ヘルパーの仕事内容が正しく伝わっていない
――訪問介護事業をめぐる課題は。
 
 ホームヘルパーの高齢化が問題の1つです。若い人たちが入って来ないため、2000年の介護保険の開始から依然として現役を続けているヘルパーがいる事業所も少なくありません。
 
 また、ヘルパーの仕事内容が正しく伝わっていないという問題もあります。介護保険ができる前は、訪問介護のサービスは家庭奉仕員という名前で、週2回ほど家事援助を行っていました。そのイメージを今も持っている方には「お手伝いさんでしょう」と言われてしまいます。
 
 利用者だけではなく、ケアマネジャーや医師など、連携している専門職の中にも…

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