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第17回 「新しい総合事業」は介護保険の根幹を揺るがす制度変更

第17回 「新しい総合事業」は介護保険の根幹を揺るがす制度変更

■国は医療系サービスまで移行させようとしていた
 
 2015年4月、介護保険法が改正され、市町村事業である地域支援事業に「介護予防・日常生活支援総合事業」(新しい総合事業)が創設された。介護予防サービスのうち訪問介護と通所介護は廃止され、これらは新しい総合事業に移行することになった。
 
 もともと厚労省は、予防の訪問と通所だけじゃなく、もっと多くのサービスを新しい総合事業に移行させる、という考えでした。介護予防訪問看護とか介護予防通所リハも移すと。法改正前の厚労省担当者と学識経験者、市町村代表との非公式な検討段階の議論で、私はそれに猛反対しました。
 
 その理由は、訪問看護や通所リハは医療系サービスなので医師会の影響下にあり、基本的に市町村独自では単価の設定や需給調整などをコントロールできないからです。
 
 そもそも総合事業の目的は何だったのか。厚生労働省が2015年6月に示したガイドラインでは、①住民主体の多様なサービスを充実することで要支援者の選択肢を広げる、②多様な担い手による多様な単価、住民主体による低廉な単価の設定、③高齢者の社会参加の促進や効果的な介護予防ケアマネジメントを通じて費用の効率化を図る、といった狙いが示されていました。
 
 つまり、総合事業は市町村が住民主体の多様なサービスを創設し育成してコントロールするのが原則じゃないですか。でも、訪問看護や通所リハといった医療系のサービスが、果たして市町村のコントロールで受給調整できるのか。医師会など医療関係者と市町村には、連携しつつもどうしても緊張関係があって…

第17回 「新しい総合事業」は介護保険の根幹を揺るがす制度変更

第16回 制度改革を訴える提言

■フォーラムや実態調査をもとに
 
 フォーラムから2年後の2003年12月、武蔵野市は「介護保険施行5年後の見直しに向けて~武蔵野市からの提言~」を公表する。
 
 介護保険法の附則第5条には、政府は見直しの検討にあたって、「地方公共団体その他の関係者から当該検討に関わる事項に関する意見の提出があったときは、当該意見を十分に考慮しなければならない」と明記されています。
 
 武蔵野市は介護保険法が成立する前、法案に対して批判的なブックレットを発行したような(第3回参照)“もの言う自治体”です。5年後の見直しについて意見や要望をしっかり表明するのも、自然な成り行きと言えます。
 
 そこで、庁内に「介護保険施行5年後の制度見直しワーキングチーム」を設置しました。05年度(平成17年度)に予定されている見直しが検討されるのは04年度まででしょうから、01年のフォーラムで出された意見などに基づいてワーキングチームで検討し…

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第48回 病院で生まれた緩和ケアと地域での看取り

第48回 病院で生まれた緩和ケアと地域での看取り

■状態が悪化して帰れなくなった
 
 70代前半の独居男性が希少なタイプの胃がんと診断された。病院ではできることがないと言われ、新田クリニックの外来で経過を診ていた。次第に動けなくなってきて、看多機を利用することになった。娘さんは父親を心配しながら、最期はどうするか、家に帰らせていいものかどうかと思い悩んでいる。
 
 ある金曜、私が看多機に立ち寄ると、彼から話があると言われた。娘さんと一緒に翌日行くと、家に帰りたい、と言う。つねづね、いつでも帰っていいですよ、自由に決めてください、と言っていたくらいだから、もちろん異論はない。
 
 これまで本人は、帰ったあと一人で暮らせるか心配で、踏み切れなかった。最期を意識するようになって、やっぱり帰りたい、という気持ちになったようだ。
 
 その週末で訪問看護などのめどがついて、週明けの月曜に娘さんと一緒に帰宅するはずだった。ところが、その月曜、状態像が急激に落ち…

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第17回 余白なき社会に「地域共生」を築けるか~重層的支援体制整備事業のポイントとは

第17回 余白なき社会に「地域共生」を築けるか~重層的支援体制整備事業のポイントとは

■なぜ制度・分野の隙間が問題になるのか?
 自治体では、2021(令和3)年度からスタートした「重層的支援体制整備事業(以下、「重層事業」)」への対応が進められています。
 
 重層事業は包括的な支援体制を構築し、今日的な課題に対応できるよう地域福祉をアップデートする政策で、すでに300を超える自治体が着手しています。今回は、この地域共生社会を実現するための前提となる考え方について私の考えを整理してみたいと思います。
 
 「地域共生社会」について国は以下のように定義しています。
 
 「制度・分野ごとの『縦割り』や「支え手」「受け手」という関係を超えて、地域住民や地域の多様な主体が参画し、人と人、人と資源が世代や分野を超えてつながることで、住民一人ひとりの暮らしと生きがい、地域をともに創っていく社会」
 
 この定義から、地域共生社会は、「住民一人ひとりの暮らしと生きがいを創っていく社会」づくりといえそうですし…

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第17回 「新しい総合事業」は介護保険の根幹を揺るがす制度変更

第15回 制度見直しに向けたフォーラム開催

 介護保険制度が始まっておよそ1年半後の2001年11月8~9日、武蔵野市は「介護保険フォーラムin武蔵野 介護保険制度の検証と改革を……」を開催した。主催は武蔵野市で、全国市長会が後援した。
 
■保険者が現場から声を上げる
 全国市長会の後援をいただいたこともあって、全国各地の市町村長、自治体の実務担当者、学識経験者、サービス事業者、市民など大勢参加してくださいました。
 
 事前に開催案内したところ600人以上の参加希望があって、会場である武蔵野公会堂のキャパを大幅に超えてしまいました。急遽、近くのホテルも借り、それでも参加希望者全員は収容できないので、抽選で465人に絞って開催しました。
 
 介護保険という全く新しい制度が導入され、しかも市町村は保険者、いわば制度運営者です。市町村はみんな、準備段階から大変な思いをしてきて、いざ始まったという高揚感というか、熱いものがあったと思います。スタートから2年目ともなると…

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第48回 病院で生まれた緩和ケアと地域での看取り

第47回 かかりつけ医と新しい地域医療構想

■かかりつけ医のイメージは「専門医を紹介する」
 『社会保険旬報』に、かかりつけ医のイメージに関する興味深い記事が出ていた(岩本伸一.「かかりつけ医」のイメージは医師と府民の理解に相違がある.
 
2024.No.2920)。 大阪府医師会が実施した、かかりつけ医に関する調査に基づくレポートで、筆者は調査委員会委員長である。この調査は2023年3月にインターネットで実施され、医師会員1047人、府民1200人が回答した。
 
 かかりつけ医に関してはこの連載でも述べてきたように、1980年代から今日まで議論が続けられている。実に40年以上だ。
 
 2013年には一応、かかりつけ医とかかりつけ医機能が定義されたが、実効性をもって社会に根付いたとはいえない。新型コロナ禍では、かかりつけ医の力を十分に発揮できなかった。
 
 そんななかで実施された大阪府医師会の調査は、かかりつけ医に対する医師(大阪府医師会員)と一般市民(府民)の現在のイメージや理解度を知る機会となった。
 
 かかりつけ医のイメージとして、医師会員も府民も多いのは「必要な時には専門医・専門医療機関を紹介」「距離が近い」…

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第21回 医薬品と健康食品の違いを正しく知ろう

第21回 医薬品と健康食品の違いを正しく知ろう

 これからの薬局のあり方を示す調剤報酬(24年度改定)が6月からスタートしました。その方向として、①OTCの充実、②選定医療の患者負担の増額、③医療用医薬品のスイッチOTC化が挙げられます。さらに、報酬の算定用件に48 薬効群の品目を取り扱うことという規定が入りました。実際にその分類の薬を店舗に置かなければなりません。
 
■医薬品は安全基準が担保されている
 薬局の大きな役割は、地域住民の健康と安全を守ることです。医療費高騰の中、軽医療であるOTC推進も大きな課題です。セルフメディケーションの根幹であるOTCは、薬剤師にとっては薬を通して保険外で患者様の健康に貢献できるツールです。
 
 薬局薬剤師が処方箋で薬剤を交付する際は、他に飲んでいる薬剤・健康食品をお聞きし、相互作用・副作用があるかないか、確認しています。相互作用のあるものは中止していただくよう指導しています。
 
 医薬品の販売に必要な資格は、医薬品の分類に応じて…

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第22回 介護保険料の伸び率が低かった事情とカラクリ

第22回 介護保険料の伸び率が低かった事情とカラクリ

 令和6~8年度の65歳以上の高齢者が納める介護保険料(第9期)は全国平均で月に6225円になった。
 
■整合性ある報道か
 マスコミは概ね、「こんなに高くなって大変だ」というニュアンスで報じている。あれだけ介護職の処遇改善が必要だと書きたててきたのに、保険料が上がると「高過ぎる」というのは、整合性がない気がする。
 
 資金は天から降ってこないので、処遇改善をするなら保険料の引き上げは致し方ない。覚悟と責任をもって記事を書いてほしいと思ってしまう。
 
 しかも、伸び率3.5%は過去8回の改定の中で下から3番目という低さだ。高齢者数は増えているし、6~8年度は介護職の処遇改善のために、介護報酬を1.59%も引き上げたのに、よくこの程度の保険料の伸びに収めた…

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第48回 病院で生まれた緩和ケアと地域での看取り

第46回 能登半島の高齢者ケアをどう立て直せばいいのか

■避難先から帰ってこられない
 4月、能登半島を訪れた。震災後としては1月以来、2度目の訪問である。珠洲市、輪島市、能登町の3市町を回った。石川県は北から能登北部(奥能登)、能登中部、石川中央、加賀南部の4地域に区分されるが、これら3市町はすべて奥能登である。
 
 奥能登では、インフラの復旧は徐々に進んでいるものの、水道はまだ全面復旧に至っていない。道路も大部分で車が通行できるようになってはいるが、まだ崩れたままの箇所も多く、通行止めの区間もあった。
 
 高齢化率は珠洲市が50.3%、輪島市が47.6%、能登町が50.0%と、いずれも市民・町民のほぼ半数が高齢者である。後期高齢者の割合は珠洲市28.6%、輪島市28.1%、能登町29.4%。(以上は珠洲市が2020年、輪島市・能登町は2023年)
 
 高齢者が多いなら、在宅医療も普及していると思われるかもしれない。しかし、地域医療の中心は総合病院であった。奥能登には公立病院が4つあって…

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第17回 「新しい総合事業」は介護保険の根幹を揺るがす制度変更

第14回 医療と介護の連携は介護保険創設前から

 2015年度(平成27年度)には、介護保険法に「在宅医療・介護連携推進事業」が市町村事業として定められ、18年度以降はすべての市町村がこの事業に取り組んでいる。要介護高齢者が住み慣れた地域で暮らし続けるために医療と介護の連携が不可欠であることは、今ではほとんど常識だが、武蔵野市の医療介護連携は、介護保険の開始からまもない時期に始まっていたという。
 
■ケアマネジャーが主治医と情報共有するために
 武蔵野市における医療と介護の連携の歴史は、ケアマネジャーとの関わりから始まったといえます。
 
 連載第9回で、武蔵野市がケアマネジャーを大切にしていることをお話ししました。武蔵野市は1999年度(平成11年度)に武蔵野市居宅介護支援事業者連絡協議会を立ち上げて、ケアマネジャー研修会を定期的に開催したり、情報公開や質疑応答などを実施したりしていました。
 
 そして2000年度の介護保険スタートと同時に「武蔵野市ケアマネジャーガイドライン」作成に着手し、01年3月にその第1版が完成したわけです。当時から、介護保険サービスを適切に提供する要はケアマネジャーであり…

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