過齢児の移行調整で新たな枠組みを提示 厚労省

2021年 7月 28日

 厚生労働省は7月28日、社会保障審議会(厚生労働相の諮問機関)障害者部会に、障害児入所施設の18歳以上の入所者(過齢児)が、地域や成人施設へ移行するための都道府県による新たな移行調整の枠組みを示した。

 前日、障害児の新たな移行調整の枠組みに向けた実務者会議が報告書案として取りまとめたもの。8月中に都道府県に通知を発出する。

 都道府県による新たな移行調整の枠組みとして、障害児入所施設で15歳以上のすべての入所児童の移行支援を開始する。円滑な移行が難しいケースは、都道府県(政令市)が移行調整の責任主体となり、協議の場を設け、関係者の協力の下で移行調整を進める。

 移行先としては家庭復帰やグループホームなど、地域への移行を積極的に検討すべきだが、専門的な手厚い支援必要な人も多いことから、新たなグループホームなどの整備の要否・具体的内容について、15歳以上の移行支援対象者数の中長期的な見通しを考慮しながら、都道府県などで検討する。

 その際、障害児入所施設から障害者支援施設への児者転換、障害児入所施設を分割し、一方を障害者支援施設とする児者併設も選択肢とする。

 強度行動障害者のケアのための基盤整備は、ハード面だけでなく支援人材の育成も重要なことから、2024年度報酬改定に向けて検討する。

 移行支援のための新たな制度として、現在は制度上関わっていない相談支援事業所が、15歳頃から成人としての生活への移行・定着までを、一貫して支援することを可能とする仕組みを設ける。

 また、障害児入所施設の措置・給付決定主体である都道府県などが、移行調整に必要な相談支援・体験利用について、障害児入所施設の処遇の一環として、一元的・包括的に決定できる仕組みも設ける。

 ただし、18歳近くで入所した場合や、強度行動障害等が18歳近くなって強く顕在化し、18歳での移行が適切でない場合もあることを踏まえ、都道府県などの協議の場での判断を経て、22歳満了時まで移行せずに障害児入所施設への入所継続ができるよう制度的対応を図る。

 一方、成人としての基準を満たさないまま「みなし規定」により継続する「経過的サービス費」の支給は、未移行者の移行完了に向けた「準備期間」として、23年度末まで継続する。
 この厚労省案について、委員からは「過齢児の問題が解決しないのは、大人の入所施設から地域への移行が進まないのと同じ」「問題は住宅の確保で、施設の類型が変わっただけとならないように」「やまゆり園の問題があったのに、まだ施設というのは世界的に周回遅れなのでは」など、あくまでも地域への移行を進めるべきとの考えが示された。

 また、移行先の体験のために、現在認められていない複数の制度の一時的な併用、虐待の背景に支援者が追い込まれている状況があることから、支援者が相談できる環境の整備、福祉型障害児入所施設での医療や専門スタッフの拡充を求める意見なども出されていた。

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有料は届出から登録へ 望ましいあり方検討会🆕

 第7回有料老人ホームにおける望ましいサービス提供のあり方に関する検討会が10月31日に開催され、とりまとめ案について議論した。
 
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 ●こうした有料については、高齢者の尊厳の保障やサービスの質の確保の観点から、職員体制や運営体制に関する一定の基準を法令で儲ける。

ケアマネ資格要件など議論 介護保険部会🆕

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 資格要件については、参入促進のため「受験対象である国家資格の範囲拡充」を提案。具体的には診療放射線技師、臨床検査技師、臨床工学技士、救急救命士、公認心理師が挙げられる。これら5資格の業務などは以下の通り。

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 10月9日、第126回社会保障審議会介護保険部会が開かれ、「人口減少・サービス需要の変化に応じたサービス提供体制の構築等」「地域包括ケアシステムの深化(相談支援の在り方)」などが議論された。
 
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 以下、①~⑤について事務局からの提案をまとめる。
 
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 ①地域の類型の考え方
 ②地域の実情に応じたサービス提供体制の維持のための仕組み
 ③地域の実情に応じた包括的な評価の仕組み
 ④介護サービスを事業として実施する仕組み
 ⑤介護事業者の連携強化
 ⑥地域の実情に応じた既存施設の有効活用
 
 ①地域の類型の考え方は、全国を「中山間・人口減少地域」「大都市部」「一般市等」の3つに分類し、状況に応じたサービス提供体制を構築していくことが重要、とする。「中山間・人口減少地域」についてはサービス提供の維持・確保を前提として新たな柔軟化のための枠組みを設けることを提案する。

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