第213回社会保障審議会介護給付費分科会は1月16日、①令和3年度介護報酬改定の効果検証及び調査研究に係る調査(令和5年度調査)の進め方について、②介護職員処遇改善加算等の申請様式の簡素化等について、③訪問看護ステーションにおける人員基準に関する地方分権改革提案について、④令和6年度同時改定に向けた意見交換会について、議論した。
①については事務局から調査実施のスケジュール案が示され、2023年夏に調査を実施、集計・分析し、秋に分科会に速報値を報告、冬に分析・検証する。24年3月ごろの分科会で調査結果を議論する、との方針が了承された。
ICTの活用状況、老健・介護医療院でのサービス提供実態、LIFEの活用状況などを、介護サービス事業者(施設系・通所系など全サービス種別)と指定権者(都道府県・市町村)に対して調査する。
②はこれまで要望が多かった問題である。2022年改定により、介護職への処遇改善加算は「介護職員処遇改善加算」「介護職員等特定処遇改善加算」「介護職員等ベースアップ等支援加算」の3つとなっている。それぞれ対象と算定要件は異なり、申請の煩雑さが指摘されていた。
取得状況は介護職員処遇改善加算が93.1%、介護職員等特定処遇改善加算が75.1%(22年4月)。この差について、委員や事務局から「申請様式が複雑すぎて取得が広がらなかった」との意見が出された。
事務局が提案する申請の新様式は、これら3つの加算の対象者ごとでなく、3加算を一本化して計算するというもの。委員はこの方針を歓迎する一方、不正が起きないようチェック体制が必要と指摘した。
③は訪看ステーションの人員基準について、利用者の確保が難しい中山間地域では、市区町村が認めた場合は常勤換算2.5人の基準を満たさなくても訪問看護を提供できる特例がある。
21年度介護報酬改定では、地域の実情に応じた柔軟なサービス提供をより可能にするため、特別地域加算の対象とは別の申請が可能となった。
これには一定の効果があったと考えられ、事務局は、全国一律の人員基準は引き続き「従うべき基準」とする案を提出。委員から反対意見はなく、提案通り認められた。
④については、令和6年度(2024年度)の診療報酬・介護報酬同時改定に向け、介護給付費分科会と中医協が意見交換の場を設けることが提案された。障害福祉も同じ年に改定が予定されている。これも委員から異論なく、認められた。
これらの議論が終わった後、事務局から、田中滋分科会長の任期が1月28日であり、事実上、この日の会合が最後となると説明された。田中分科会長は2001年(平成13年)の第1回から参加し、13年からは分科会長を務めた。
スピーチを求められた田中分科会長はこの20年を振り返って「かつての中医協や米価審議会などは引き上げを求める側と抑える側、両者を調整する委員が三つどもえの様相であった。しかしこの分科会は全員が対等な有識者として参加され、トータルとして介護保険をよくしよう、前進させようとの議論が進んだ」。
「介護は介護サービスだけでなく、医療や生活支援、予防などと一体的に提供され、地域包括ケアシステムの深化が不可欠。介護分野を長く見てきたが、介護は地域包括支援センターや看多機、介護医療院などが誕生し、成長してきた」「リハビリ、栄養、口腔ケアの視点、科学的ケアの方向性も示した。今後もこうした進展を期待する」などと語った。