地域包括ケアの更なる深化議論 介護保険部会

2022年 5月 16日

 社会保障審議会(厚生労働相の諮問機関)介護保険部会は5月16日、ほぼ2カ月ぶりの会合をウェブで開催し=写真、地域包括ケアシステムの更なる深化・推進について議論した。

0516介護保険部会1size

 具体的な内容は①在宅・施設を通じた介護サービスの基盤整備、住まいと生活の一体的な支援、②医療と介護の連携強化、自立支援・重度化防止の取組の推進、③認知症施策、家族を含めた相談支援体制、④地域における介護予防や社会参加活動の充実、⑤保険者機能の強化、の5つ。会議の冒頭、事務局(厚労省の各課)がポイントを説明した。

 ①は2014年度から「低所得高齢者等住まい・生活支援モデル事業」を実施、助成を行っている。17年度からは地域支援事業交付金により支援できるようになっているが、実施している自治体は非常に少ない。21年度からは「高齢者住まい・生活支援伴走支援プロジェクト」が始まっている。

 ②は介護給付費分科会での指摘もふまえ、さまざまな施設類型での医療提供についてまとめた。また、本格運用が始まったLIFEの活用とリハビリテーション重視の姿勢が示された。

 ③は普及啓発と本人発信の支援、そして予防が柱となる。ここでの予防とは、「認知症にならないようにする」のではなく、「認知症になるのを遅らせる」「認知症になっても進行を緩やかにする」ことを指す。ヤングケアラーなど家族介護者への支援も盛り込まれた。

 ④では20年春以降のコロナ禍により、「通いの場」が大幅に活動自粛を強いられている現状が報告された。この調査によれば、3回目の緊急事態宣言が解除された21年10月以降はコロナ前の8割強が活動を再開している。コロナ後を見据えた総合事業の動向や、介護保険外サービスの現状も報告された。

 ⑤はいわゆるインセンティブ交付金について、22年度は前年度と同額が予算化された。給付適正化主要5事業の実施状況もまとめられている。

 以上のような事務局の説明に対し、委員からは、以下のような意見が出された。

 ・介護保険は市町村、医療保険は都道府県。両者をつなぐワーキンググループをつくり、包括的に議論する必要がある
 ・自立支援に反する過剰サービスが財政を圧迫している
 ・介護施設に医師が適正に訪問できるよう診療報酬の見直しを
 ・看多機はこれから需要増が見込まれる。さらなる促進・支援が必要
 ・「住み慣れた場所で最期まで」の実現には在宅サービスの充実が不可欠だが、小規模事業所が多く、経営は不安定で赤字も多い
 ・若年性認知症の当事者の声は聞こえるが、高齢の認知症当事者の声が届いてこない
 ・中山間地や離島では人口減少と高齢化がかなり進んでいる。そのためサービス提供人材が全く足りない。全国一律ではなく、地域の実情に応じた柔軟な施策が必要
 ・介護職への処遇改善が進み賃金が手当てされたため、医療機関で働く介護職が介護施設に移ってしまった。医療機関で介護人材が足りず、看護師が代わりにならざるを得ない
・介護保険制度は複雑でわかりにくい。市民にわかりやすく説明する工夫を
・居宅サービスの給付を削減すれば家族にしわ寄せが。介護離職やヤングケアラーを増やすことになるだけ。ホームヘルプやデイサービスの給付を確保すべき
・地域医療構想と介護保険事業計画を結び付け、「地域医療介護計画構想」が必要

このカテゴリーの最新の記事

このカテゴリはメンバーだけが閲覧できます。このカテゴリを表示するには、年会費(年間購読料) もしくは 月会費(月間購読料)を購入してサインアップしてください。

訪問介護事業者の倒産が10月で年間最多上回る🆕

 東京商工リサーチによると、介護事業者(老人福祉・介護事業)の倒産が1-10月で145件発生し、これまで年間最多だった2022年の143件を上回り、2カ月残して過去最多を記録した。  業種別では、訪問介護72件で23年の67件を抜いて過去最多となった。ヘルパー不足や燃料代などの運営コスト上昇に加え、24年の介護報酬マイナス改定の影響が出ている可能性がある。  訪問介護以外では、通所・短期入所が48件、有料老人ホームが11件、その他が14件だった。...

23年度の介護保険費用の総額は11兆5139億円

 厚生労働省によると、介護給付費と自己負担額を合わせた2023年度の介護保険費用の総額は11兆5139億円で、前年度に比べ約3227(2.9%)増え過去最多となった。  介護サービス費は11兆2146億円で、同3066億円(2.8%)増、介護予防サービス費は2993億円で同161億円(5.7%)増えた。  受給者数は介護サービスが566万6500人で同7万4900人(1.3%)の増加、介護予防サービスは124万4600人で同5万9900人(5.4%)増えている。...

高齢者数が過去最多、高齢化率は200カ国中最高に

 総務省がまとめた65歳以上の高齢者人口推計によると、「敬老の日」の9月15日時点の高齢者数は3625万人で過去最多となった。総人口に占める割合は29.3%で過去最高となっている。  総人口が前年に比べ59万人減少しているのに対し、65歳以上人口は2万人増加した。この結果、総人口に占める割合は前年に比べ0.2ポイント増加した。  総人口に占める65歳以上人口の割合の推移をみると、1950年(4.9%)以降、一貫して上昇しており、1985年に10%、2005年に20%を超えていた。...

「高齢社会対策大綱」決定 医療費負担拡大を検討

 政府は6月13日、2018年以来6年ぶりの改定となる「高齢社会対策大綱」を閣議決定。75歳以上の後期高齢者の医療費について、窓口負担が3割となる対象範囲の拡大を検討する方針を示した。  後期高齢者の窓口負担は現在、原則1割、一定の所得があれば2割、現役並みの所得があれば3割負担となっている。これを、年齢にかかわりなく、能力に応じて支え合うという観点から、3割負担の対象の拡大を検討することになった。...

6月の訪問介護事業所の廃業が前年に比べ1割増

 厚生労働省の調査によると、6月の訪問介護事業所の廃業数が前年同月に比べ1割増加していることが分かった。4月の介護報酬改定で訪問介護の基本報酬が引き下げられたことも一因と見られそうだ。  都道府県・政令市・中核市129自治体に照会し、126自治体から回答を得た。その結果、廃止事業所数は133で、前年同月の119から11.8%増加した。...

1週間無料でお試し購読ができます  詳しくはここをクリック

新着記事は1カ月無料で公開

有料記事は990円(税込)で1カ月読み放題

*1年間は1万1000円(同)

〈新着情報〉〈政策・審議会・統計〉〈業界の動き〉は無料

【アーカイブ】テーマ特集/対談・インタビュー

コラム一覧

【アーカイブ】現場ルポ/医療介護ビジネス新時代

アクセスランキング(11月11-17日)

  • 1位
  • 2位
  • 3位 90% 90%
メディカ出版 医療と介護Next バックナンバーのご案内

公式SNS