〈新田國夫〉の記事一覧
第47回 かかりつけ医と新しい地域医療構想🆕

第47回 かかりつけ医と新しい地域医療構想🆕

■かかりつけ医のイメージは「専門医を紹介する」
 『社会保険旬報』に、かかりつけ医のイメージに関する興味深い記事が出ていた(岩本伸一.「かかりつけ医」のイメージは医師と府民の理解に相違がある.
 
2024.No.2920)。 大阪府医師会が実施した、かかりつけ医に関する調査に基づくレポートで、筆者は調査委員会委員長である。この調査は2023年3月にインターネットで実施され、医師会員1047人、府民1200人が回答した。
 
 かかりつけ医に関してはこの連載でも述べてきたように、1980年代から今日まで議論が続けられている。実に40年以上だ。
 
 2013年には一応、かかりつけ医とかかりつけ医機能が定義されたが、実効性をもって社会に根付いたとはいえない。新型コロナ禍では、かかりつけ医の力を十分に発揮できなかった。
 
 そんななかで実施された大阪府医師会の調査は、かかりつけ医に対する医師(大阪府医師会員)と一般市民(府民)の現在のイメージや理解度を知る機会となった。
 
 かかりつけ医のイメージとして、医師会員も府民も多いのは「必要な時には専門医・専門医療機関を紹介」「距離が近い」…

第47回 かかりつけ医と新しい地域医療構想🆕

第46回 能登半島の高齢者ケアをどう立て直せばいいのか

■避難先から帰ってこられない
 4月、能登半島を訪れた。震災後としては1月以来、2度目の訪問である。珠洲市、輪島市、能登町の3市町を回った。石川県は北から能登北部(奥能登)、能登中部、石川中央、加賀南部の4地域に区分されるが、これら3市町はすべて奥能登である。
 
 奥能登では、インフラの復旧は徐々に進んでいるものの、水道はまだ全面復旧に至っていない。道路も大部分で車が通行できるようになってはいるが、まだ崩れたままの箇所も多く、通行止めの区間もあった。
 
 高齢化率は珠洲市が50.3%、輪島市が47.6%、能登町が50.0%と、いずれも市民・町民のほぼ半数が高齢者である。後期高齢者の割合は珠洲市28.6%、輪島市28.1%、能登町29.4%。(以上は珠洲市が2020年、輪島市・能登町は2023年)
 
 高齢者が多いなら、在宅医療も普及していると思われるかもしれない。しかし、地域医療の中心は総合病院であった。奥能登には公立病院が4つあって…

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第45回 「日本在宅医療コングレス」で各地の実践を知る

■15の都道県から発表
 3月上旬、全国在宅療養支援医協会が主催する「第1回 日本在宅医療コングレス」が開かれた。
 
 コングレスは、2019年まで開催された「全国在宅医療医歯薬連合会全国大会」の後継イベントで、今回のテーマは「地域包括ケア時代の在宅医療~その質を問う~」である。会場とオンライン合わせて200人以上が参加した。
 
 第2部「2023年度ブロックフォーラム報告会」では、北海道から沖縄まで15カ所の医師が発表した。発表を聞いて、それぞれの地域課題について独自に活動するということが、都道府県レベルでできるようになってきたことを実感した。こういう場で各地の実践を直接聞くことは、とても意味があると改めて思う。
 
 これまでは全国を8ブロックに分けた単位でのブロック大会であった。ブロック単位だと、県単位の課題には焦点が当たらない。今回は、都道府県の課題がよく見えた。次は市町村単位と…

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第44回 沖縄と函館の在宅医療推進フォーラム

 2月3日に開催された「沖縄県在宅医療推進フォーラム2023」と10日の「第12回北海道在宅医療推進フォーラムIN函館」に参加した。両者を通じて、在宅医療はもうすっかり当たり前の存在になったとつくづく思う。
 
■波照間島の小多機に感動する
 
 沖縄のテーマは「未来へ紡ぐ物語~全てのひとが共存できる社会へ~」。波照間島の小多機の発表に感銘を受けた。波照間島はいわゆる沖縄の離島である。日本最南端の有人島で、天体観測や白い砂浜が有名だ。
 
 この波照間島に小多機「すむづれの家」がある。石垣島を中心とする八重山諸島は石垣市・竹富町・与那国町で構成され、竹富町には西表島や武富島、波照間島など10の有人島が属する。「すむづれの家」は、竹富町唯一の小多機だそうだ。
 
 石垣市や那覇市の病院を退院し、波照間に戻って「すむづれの家」を利用する場合は、病院と連携し…

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第43回 多職種の災害支援チーム、LSATをつくりたい

■地域を守りながら復興を
 能登半島地震からもう1カ月半、高齢化が進む地域の人びとを思う。在宅ケアアライアンスの参加団体も、それぞれが動いている。アライアンスとしても災害対策委員会が発災翌日から動き、連絡網をつくり、活動している。
 
 能登半島という地形の特性が被害を大きくし、東日本大震災や熊本地震とは異なる被害の様相である。まだ水道が復旧しない地域もある。ようやく仮設住宅ができ始めたが、もとの暮らしを取り戻すには時間がかかるだろう。ご苦労はいかばかりか。
 
 2011年の東日本大震災では、仮設住宅に入居する際、もともと暮らしていた地域が考慮されなかったので、隣人もお向かいも知らない人ばかり、という状況になった。地域はバラバラになってしまった。2016年の熊本地震では…

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第42回 愚直かかりつけ医保存会も必要だ

■かかりつけ医機能報告制度が始まる
 前回の「愚直在宅医療保存会」に加えて「愚直かかりつけ医保存会」も必要なんだろうなと思うようになっている。
 
 かかりつけ医機能についての議論は、徐々に形になりつつある。まず、2024(令和6)年4月に「医療機能情報提供制度」が刷新される。これにより、
 
〈かかりつけ医機能(「身近な地域における日常的な診療、疾病の予防のための措置その他の医療の提供を行う機能」と定義)を十分に理解した上で、自ら適切に医療機関を選択できるよう、医療機能情報提供制度による国民・患者への情報提供の充実・強化を図る。〉
 
こととなる。
 
 2025年4月には「かかりつけ医機能報告」が施行され…

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第41回 愚直在宅医療保存会を結成した

■在宅医療に第3世代が登場
 「愚直在宅医療保存会」を結成した。会員はまだ2、3人だし、団体としての体裁が整っているわけでもない、冗談半分の集まりだ。半分は冗談でも、残り半分はいたって真剣である。どうしてこんな保存会を結成したか…。
 
 在宅医療は長らく往診として提供されてきた。往診とは患者の求めに応じて随時、医師が患家を訪問するもので、もちろん現在もある。在宅医療の制度が生まれる以前の1950~80年代にかけて家庭医療を提唱し実践した先駆者が、レジェンドと称される佐藤智医師らである。彼らは、いうなれば“プレ在宅医療世代”であろう。
 
 1992年、「寝たきり老人在宅総合診療料」が創設され、現在の訪問診療の原型ができた。このころから在宅医療を提供してきた我々を「在宅医療第1世代」とすれば、2006年の「在宅時医学総合管理料(在医総管)」や在宅療養支援診療所の創設後に在宅医療に参入した医師たちが第2世代だ。彼らの多くは外来をやらず、訪問診療専業である。
 
 そして今、在宅医療の世界には第3世代の医師たちが登場し、活躍している。第3世代に特徴的なのは…

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第40回 食欲不振を考察した研修医のレポート

 新田クリニックで研修医を受け入れていることは、これまでも触れてきた。地域医療研修として訪問や外来に加わってもらう。ある研修医は当院での研修を先日終えて、「高齢者の食欲減退」についてレポートを書いた。
 
 研修医は十数年受け入れているが、食欲減退にフォーカスした人は初めてで、興味深いレポートであった。今回はその内容をもとに考察したい。なお〈〉はレポートからの引用である。
 
■はっきりした理由なく食欲低下
 彼女が着目したのは79歳の男性患者である。進行性核上性麻痺+アルツハイマー型認知症の疑いで神経病院に通院していた。2022年頃より怒りっぽくなり暴力行為もみられるようになって、ADLも徐々に低下。この年11月の頭部MRI検査では…

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第39回 タイの医療・介護事情を垣間見る

■高齢化が急速に進む
 8月終わりから9月頭まで、タイを訪問した。JICA(独立行政法人国際協力機構)の「草の根技術協力事業」のひとつ、「自治体ネットワークによるコミュニティベース統合型高齢者ケアプロジェクト」に参加し、現地で地域包括ケアや認知症について講義した。
 
 訪問したのは首都バンコクではなく、パトムタニ県ブンイトー市、プラチュアップキリカン県ホワヒン市、ラーチャブリ県ポータラム郡の3カ所である。
 
 ポータラムはリゾート地として知られる。3地域で診療所や介護士養成学校、ヘルスセンター、一般家庭を訪問する機会をいただいた。以下は、私が直接見聞きした、タイの医療・介護事情である。
 
 まず、タイでは60歳以上を高齢者と定義する。日本で高齢者と定義されるのは65歳以上だが、日本では今や65歳を高齢者とは呼べないだろう。
 
 本質的には、高齢者と定義されるべきは85歳以上かもしれない。高齢者をどう定義するかは…

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第38回 クリニックは「総合診療科」を標榜できない

■標榜し広告できる診療科の原則
 医療機関が標榜する診療科名として広告可能な範囲は、医療法や厚生労働省令に定められる。
 
 2008(平成20)年に見直しが行われ、原則は①内科、②外科、③〈内科または外科〉+〈臓器・疾病・性別や年齢・医学的処置〉、④単独名称か、単独名称に臓器・疾病・性別や年齢・医学的処置の組み合わせ――の4種とされた。
 
 ③は消化器内科、糖尿病内科、女性内科、老年内科、形成外科などがある。④の単独で標榜できる名称は、精神科、アレルギー科、リウマチ科、小児科、皮膚科、泌尿器科、産婦人科など18科である。
 
 これら18科に臓器・疾病・性別や年齢・医学的処置を組み合わせた診療科としては…

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