厚生労働省の専門委員会がまとめた子どもの虐待死に関する報告書によると、2018年度(18年4月1日~19年3月31日)の間に虐待により死亡した子どもの数は、前年度に比べ8人増の73人となり、2年連続で増加した。心中以外の虐待死も54人で前年度に比べ2人増え、2年連続の増加となっている。
54人の内訳をみると、0歳児が22人で40.7%を占めた。うち月齢0カ月児も7人いた。虐待としては「ネグレクト(育児放棄)」が最も多く25人(46.3%)、次いで「身体的虐待」の23人(42.6%)だった。主たる加害者は実母が25人(46.3%)で、実父は9人(16.7)。
加害の動機については「保護を怠ったことによる死亡」が8人(14.8%)で最多となった。妊娠期・周産期の問題(複数回答)としては「遺棄」が19人(35.2%)、「予期しない妊娠/計画していない妊娠」が13人(24.1%)。実母の心理的・精神的問題(同)では、「養育能力の低さ」が11人(22.0%)で最も多かった。
また、近年の虐待死でDVが指摘されているケースがあることを受け、07~17年度の心中以外に虐待で死亡した587人について、実母がDVを受けた経験を調べた。その結果、「未記入」(19人)、「不明」(298人)を除くと、DVを受けた経験がある実母が51人(18.9%)いた。
DVを受けた実母に関しては、60.8%が10代で妊娠・出産を経験し、23.5%が生活保護を受けており、未婚の1人親や内縁関係といった、子育てへの支援が必要と考えられる家庭が多いことや、地域社会・親族との接触が乏しい傾向にあることが分かった。さらに、実父母を除くと、主な加害者は実母の交際相手が多いことも明らかになった。
報告書では、実母がDVを受けている場合、DVに加え、実母自身の社会経験の少なさやパートナーとの関係性などが相まって、安定した家族関係を築くことに難しさを抱え、子ども虐待が深刻な結果になる場合が多いのではないかと指摘。家族への支援では「子どもを守ると同時にDV被害者を守るという視点を持ち支援することが必要」としている。