第33回 在宅医療の圏域は地域包括ケアシステム圏域

2023年 5月 5日

■第8次医療計画に向けた議論で
 2024(令和6)年度から、介護の世界では第9期介護保険事業計画に入り、医療では、第8次医療計画が始まる。医療計画は都道府県が策定し、1次6年だから第8次は2029年度までとなる。このなかで在宅医療はどのように位置づけられるのか。
 
 厚労省「第8次医療計画等に関する検討会」のワーキンググループ(WG)の1つ、「在宅医療及び医療・介護連携に関するWG」で議論が続けられている。
 
 WGでの議論は、①在宅医療の提供体制、②急変時・看取り、災害時等における在宅医療の体制整備、③在宅医療における各職種の関わり、の3点に集約される。
 
 一方、東京都は、地域の実情に応じた在宅療養の推進を図るため、「東京都在宅療養推進会議」を設置して議論を続けている。この会議は医師・看護師といった専門職、都の3師会と看護協会、行政、患者・家族など、幅広い委員から構成され、私は会長を拝命している。
 
 「東京都在宅療養推進会議」は3月、「在宅医療及び医療・介護連携に関するWG」が提示する①~③について検討した。今回は、そのうち①について考えたい。
 
 WGは①在宅医療の提供体制について、適切な在宅医療の圏域を設定することとしている。その前提として、在宅医療の提供体制に求められる機能を…
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第50回 医師の働き方改革にあえて言いたい🆕

■多くを学んだ研修医時代
 2024年4月から、医師の働き方改革の新制度が始まっている。医療法が改正され、医師に対する時間外労働の上限規制が設けられた。労働基準法に設けられている労働時間の上限規制が原則的に医師にも適用される。ただし、救急や研修といった医療機関の類型により、一般労働者とは異なる水準が設定されている。
 
 ワーク・ライフ・バランスを重視する時代、医師もその流れには逆らえない、ということなのだろう。それは理解できるのだが、「愚直在宅医療保存会」「愚直かかりつけ医保存会」(連載42・43回参照)の私としては、あえて疑問を呈したくなる。
 
 私はいわゆる旧研修制度を経験した。2004年に始まった現行の研修制度の前の制度である。旧研修制度の問題点はいろいろ指摘されたが、なかでも批判が集中したのは…

第49回 ケベックの家庭医はゲートキーパーではなかった🆕

■かかりつけ医のイメージ
 かかりつけ医の役割をめぐる議論で、「かかりつけ医とはゲートキーパーである」という意見をしばしば耳にする。かかりつけ医の役割はプライマリな医療を提供し、必要に応じて専門医や専門医療機関を紹介すること、というものだ。
 
 この意見からは、「かかりつけ医は初歩的・基礎的な医療を提供すればよく、手に余るなら専門医に渡せばよい」といった考えが透けて見える。これは、かかりつけ医がいつもどんな仕事をしているか全く知らない人が、勝手に抱く “かかりつけ医のイメージ”に基づいて考えているに過ぎない。かかりつけ医のそういうイメージは、間違いだ。
 
 どうして日本では「かかりつけ医は初歩的・基礎的な医療を提供すればよいゲートキーパー」のイメージなのか。先日、カナダ・ケベック州を訪れ、家庭医の位置づけや養成システムについて聞く機会を得た。多くの点で日本とは異なり…

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第48回 病院で生まれた緩和ケアと地域での看取り

■状態が悪化して帰れなくなった
 
 70代前半の独居男性が希少なタイプの胃がんと診断された。病院ではできることがないと言われ、新田クリニックの外来で経過を診ていた。次第に動けなくなってきて、看多機を利用することになった。娘さんは父親を心配しながら、最期はどうするか、家に帰らせていいものかどうかと思い悩んでいる。
 
 ある金曜、私が看多機に立ち寄ると、彼から話があると言われた。娘さんと一緒に翌日行くと、家に帰りたい、と言う。つねづね、いつでも帰っていいですよ、自由に決めてください、と言っていたくらいだから、もちろん異論はない。
 
 これまで本人は、帰ったあと一人で暮らせるか心配で、踏み切れなかった。最期を意識するようになって、やっぱり帰りたい、という気持ちになったようだ。
 
 その週末で訪問看護などのめどがついて、週明けの月曜に娘さんと一緒に帰宅するはずだった。ところが、その月曜、状態像が急激に落ち…

第47回 かかりつけ医と新しい地域医療構想

■かかりつけ医のイメージは「専門医を紹介する」
 『社会保険旬報』に、かかりつけ医のイメージに関する興味深い記事が出ていた(岩本伸一.「かかりつけ医」のイメージは医師と府民の理解に相違がある.
 
2024.No.2920)。 大阪府医師会が実施した、かかりつけ医に関する調査に基づくレポートで、筆者は調査委員会委員長である。この調査は2023年3月にインターネットで実施され、医師会員1047人、府民1200人が回答した。
 
 かかりつけ医に関してはこの連載でも述べてきたように、1980年代から今日まで議論が続けられている。実に40年以上だ。
 
 2013年には一応、かかりつけ医とかかりつけ医機能が定義されたが、実効性をもって社会に根付いたとはいえない。新型コロナ禍では、かかりつけ医の力を十分に発揮できなかった。
 
 そんななかで実施された大阪府医師会の調査は、かかりつけ医に対する医師(大阪府医師会員)と一般市民(府民)の現在のイメージや理解度を知る機会となった。
 
 かかりつけ医のイメージとして、医師会員も府民も多いのは「必要な時には専門医・専門医療機関を紹介」「距離が近い」…

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第46回 能登半島の高齢者ケアをどう立て直せばいいのか

■避難先から帰ってこられない
 4月、能登半島を訪れた。震災後としては1月以来、2度目の訪問である。珠洲市、輪島市、能登町の3市町を回った。石川県は北から能登北部(奥能登)、能登中部、石川中央、加賀南部の4地域に区分されるが、これら3市町はすべて奥能登である。
 
 奥能登では、インフラの復旧は徐々に進んでいるものの、水道はまだ全面復旧に至っていない。道路も大部分で車が通行できるようになってはいるが、まだ崩れたままの箇所も多く、通行止めの区間もあった。
 
 高齢化率は珠洲市が50.3%、輪島市が47.6%、能登町が50.0%と、いずれも市民・町民のほぼ半数が高齢者である。後期高齢者の割合は珠洲市28.6%、輪島市28.1%、能登町29.4%。(以上は珠洲市が2020年、輪島市・能登町は2023年)
 
 高齢者が多いなら、在宅医療も普及していると思われるかもしれない。しかし、地域医療の中心は総合病院であった。奥能登には公立病院が4つあって…

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