MCIに関連する腸内細菌叢の異常を解明

2023年 6月 29日

 シンバイオシス・ソリューションズは軽度認知障害(MCI)に関連する腸内細菌叢の異常(dysbiosis)を解明した。また、MCI罹患者の腸内細菌叢の特徴に基づき、腸内細菌叢の組成データを用いた新たなMCIの診断(リスクの推定)方法を開発した。

 同社の畑山耕太氏らの研究チームは、認知機能が腸内細菌叢の影響を受ける可能性を検証するため、70代日本人のMCI群と、疾病に罹患していない対照群との腸内細菌叢を調べ、MCIと腸内細菌叢との関連性について調査した。

 調査にあたっては性別を考慮し、男女別に比較した。その結果、男女に共通してMCI群に多い腸内細菌の分類群と少ない分類群があることが分かった。

 これらの腸内細菌についての特徴から、MCI群の腸内細菌叢の構成は、腸内細菌叢の調節異常、腸管バリアの透過性増大、血液脳関門の透過性増大、慢性神経炎症の亢進を引き起こし、その異常が長期間持続することによって最終的に認知機能低下につながるというメカニズムが導き出された。

 さらに、MCI群の腸内細菌叢の特徴に基づき、腸内細菌叢データを使ったMCIのリスクの推定方法を開発。MCI罹患者とMCIではない健康者を高い精度で判別できることを示した。

 今回の研究でMCIに関連するdysbiosisの全体像が明らかとなったことから、MCIの発症・進行のメカニズムの理解、治療、予防方法の研究・開発が大きく進展することが期待される。

 また、新たに開発したMCIリスクの推定方法を使うことで、MCI罹患者やMCIリスクが高い人を簡便かつ効率的にスクリーニングすることが可能になる。

 さらに、研究の成果はMCIから認知症への進行を抑制または防止することによって認知症を予防するという新たなアプローチの実現につながるという。

 この研究はお茶の水健康長寿クリニックとあしかりクリニックとの共同研究で行われた。研究成果は国際学術誌『Biomedicines』(2023年6月22日付)に掲載された。

このカテゴリーの最新の記事

このカテゴリはメンバーだけが閲覧できます。このカテゴリを表示するには、年会費(年間購読料) もしくは 月会費(月間購読料)を購入してサインアップしてください。

自治体向けに「オンライン受診相談サービス」🆕

 KDDIとファストドクターは、KDDIが運営する「スマホdeドック」の付加サービスとして、自治体・企業・健康保険組合向けに「オンライン受診相談サービス」を提供することになり、導入する自治体の第1弾として、香川県高松市で10月1日からサービスを開始した。  スマホdeドックは血液検査セットとウエブサービスを組み合わせ、自宅にいながら一般的な健康診断と同等の検査が行えるサービス。検査結果で「C/D」判定を受けた人を対象に、KDDIからオンライン受診相談の案内メールを送信する。...

がん服薬アドヒアランスの評価で共同研究🆕

 がん研究会有明病院(東京都江東区)とスズケンの子会社コラボプレイスは、同社が開発した服薬管理システム「CubixxDT(キュービックスDT)」を使い、服薬アドヒアランスの評価を行う共同研究を開始した。  服薬アドヒアランスとは、患者が医療従事者の指示や治療計画に基づき治療を受けること。特に薬物治療でアドヒアランスが低い場合、治療効果が十分に得られない可能性がある。  キュービックスDTは、治療薬を充填する専用服薬パックと、データをサーバーに自動送信する専用通信機器で構成されている。...

小児用歩行トレーニングロボ開発 AssistMotion

 信州大学発のベンチャーであるAssistMotion(長野県上田市)は、身長90㎝から着用可能な小児用歩行トレーニングロボット「curara(クララ)」を長野県立こども病院と共同開発した。
 
 同社はリハビリ用歩行トレーニングロボットcuraraの事業を展開している。今回、同病院とともに、脳性まひなどの子どもが使用する小型軽量なcuraraを開発した。
 
 小児は成長により体格の変化が大きいため、Sサイズ(身長115cm~)とSSサイズ(身長90cm~)の2つのサイズを…

据置式手すり新製品を10月発売 マツ六

 据置式手すり「たよレール」シリーズを展開するマツ六(大阪市天王寺区)は、新製品「たよレールUPDATE(アップデート)」を10月に発売する。
 
 立ち上がり動作を考えた「高さ」と「低さ」とし、膝立ち位・端坐位からの立ち上がりに使いやすい高さ(最低55cm)から、立位の補助に使いやすい高さ(最高85cm)までをカバーした。
 
 握っても押上げてもいいように、手すり上段の断面は丸みをおびた逆三角形とした。手すり棒をぎゅっと握ることも…

医療処置が必要な人の大分県内での旅行が容易に

羅漢(福岡県糸島市)が運営する介護職・看護師が付き添い、旅行や外出をする民間救急らかんと、別府・大分バリアフリーツアーセンター(大分県別府市)が業務提携した。らかんと地域の異業種連携は、佐賀県嬉野バリアフリーツアーセンターに次いで2例目となる。 らかんは酸素・吸引・点滴などの医療処置が必要な人にも、介護職・看護師が付き添うことで、安心・安全に旅行ができる「むにたび」を提供している。...

1週間無料でお試し購読ができます  詳しくはここをクリック

新着記事は1カ月無料で公開

有料記事は990円(税込)で1カ月読み放題

*1年間は1万1000円(同)

〈新着情報〉〈政策・審議会・統計〉〈業界の動き〉は無料

【アーカイブ】テーマ特集/対談・インタビュー

コラム一覧

【アーカイブ】現場ルポ/医療介護ビジネス新時代

アクセスランキング(10月7-13日)

  • 1位
  • 2位
  • 3位 90% 90%
メディカ出版 医療と介護Next バックナンバーのご案内

公式SNS