順天堂大学大学院医学研究科の田端宏樹博士研究員らの研究グループは、中学・高校生期と高齢期の両方の時期に運動習慣がある高齢者は、サルコペニアや筋機能低下のリスクが低いことを明らかにした。
東京都文京区在住の65~84歳の高齢者1607人(男性679人、女性928人)の骨格筋量、握力、脚伸展・屈曲筋力、最大歩行速度、血中マイオカイン濃度による骨格筋機能指標と、質問による運動習慣調査のデータを使って解析を行った。
その結果、男性では中学・高校生期と高齢期のどちらの期間でも運動習慣がある人は、いずれの時期にも運動習慣を持たない人に比べ、サルコペニアの有病率が0.29倍、筋量低下の保有率が0.21倍、筋力・身体機能低下の保有率が0.52倍低かった。
女性ではサルコペニアの有病率に差はみられなかったものの、中学・高校生期と高齢期のいずれの時期にも運動習慣がある人は、両時期で運動習慣を持つ人に比べて筋力・身体機能低下の保有率が0.53倍低いことが示された。
サルコペニアは、加齢や疾患により骨格筋の筋量や筋力などの骨格筋機能が著しく低下し、身体機能に障害が生じた状態のこと。ADLの制限や転倒・骨折など要介護につながる可能性がある。
アジア人は欧米人に比べBMIの低い人が多く、生来の骨格筋量が少ないため、アジア人の高齢者はサルコペニアになりやすいと言われている。
運動は骨格筋機能を維持・改善できるため、サルコペニアの予防に有効だが、生涯のいずれの時期の運動がサルコペニアの予防により有効であるか、これまで十分に解明されていなかった。