サルコペニア肥満で認知症リスク増加 順天堂

2022年 4月 18日

 順天堂大学大学院医学研究科スポートロジーセンターの研究グループは、東京都文京区在住の高齢者を対象とした調査により、肥満で握力が弱い「サルコペニア肥満」の人は、軽度認知機能障害と認知症のリスクが高いことを明らかにした。

 調査を行ったのは染谷由希特任助教(現スポーツ健康科学部助教)、代謝内分泌内科学・スポートロジーセンターの田村好史准教授、河盛隆造特任教授、綿田裕孝教授らのグループ。

 コホート研究「Bunkyo Health Study」に参加した65~84歳の高齢者1615人(男性684人、女性931人)を対象に、身長・体重測定、握力測定、認知機能検査を実施した。

 まず身長と体重から算出されるBMIが25kg/m²以上を「肥満」とした。一方、日本では高齢の肥満者で、骨格筋量と筋力の両方が低下しているサルコペニアを合併している人はほとんどいないため、研究では筋力低下のみを基準として使い、握力が男性で28㎏、女性は18.5kg未満を「サルコペニア」と定義した。

 次に、肥満もサルコペニアも該当しない「正常」、肥満のみ該当する「肥満」、サルコペニアのみ該当する「サルコペニア」、両方とも該当する「サルコペニア肥満」の4群に分類し、各認知機能検査の点数や軽度認知機能障害、認知症の有病率を比較した。

 その結果、正常・肥満・サルコペニア・サルコペニア肥満の順で、各認知機能検査の点数が低下し、軽度認知機能障害・認知症ともに有病率が増加していることが明らかになった。

 また、年齢や教育歴、高血圧や糖尿病などの基礎疾患を調整した結果、サルコペニア肥満は、正常と比べて軽度認知機能障害のリスクが約2倍、認知症のリスクが約6倍になることが示された。認知症では、サルコペニアだけでも正常の約3倍のリスクになることが明らかになった。

 今回の研究により、握力やBMI(身長・体重)といった簡便な方法によって、認知機能低下の早期発見に役立つことが示唆されたが、サルコペニア肥満と認知機能低下が関連するメカニズムや、認知機能低下の原因など不明な点が多く残されているため、今後さらなる研究を進めていく方針だ。

このカテゴリーの最新の記事

このカテゴリはメンバーだけが閲覧できます。このカテゴリを表示するには、年会費(年間購読料) もしくは 月会費(月間購読料)を購入してサインアップしてください。

新たなリハビリマットの体験評価で実証実験🆕

 ユカリア(東京都千代田区)とボディメトリクスジャパン(東京都新宿区)は、前橋市の善衆会病院で、ボディメトリクスジャパンのトレーニング・リハビリマット「メトリクスフォーム」を使ったリハビリテーションツールの体験評価に関する実証実験を行う。  高齢化社会の進展に伴い、膝関節全置換術(TKA)や股関節全置換術(THA)を受ける患者が増加している。これらの手術後のリハビリテーションは患者のQOL向上に不可欠だが、従来のリハビリテーションツールでは個々の患者の状態に最適化されたサポートが難しいという課題があった。...

サルコペニア予防へNMNと運動の影響を研究

 三菱商事ライフサイエンスは東京都健康長寿医療センター研究所・自立促進と精神保健研究チームと、ニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)摂取と運動が筋肉に及ぼす影響について共同研究を開始する。  筋肉量が減少している高齢者を対象に、主にNMNの成分摂取と運動が骨格筋の量と機能に及ぼす影響に関する検証と、加齢により変動する遺伝子の解析、睡眠・認知機能など老化に伴うQOL低下も含めた探索的な調査を実施する予定だ。...

車いす利用者の立ち上がり歩行支援機器を開発

 医療用品メーカーのダイヤ工業(岡山市)と有料老人ホーム事業などを全国展開するはれコーポレーション(同)は、車いすを必要とする要介護者が立ち上がって歩行できる「自立支援型サポートギア」の開発を行い、はれコーポレーションが運営する介護施設に導入する。
 
 自立支援型サポートギアは背中のコントローラーが入ったバッグと脚部につける人工筋肉で構成されている。コントローラーは重さが2kgで、介護者が持つ無線スイッチからの入力信号をバッグ内で読み取り…

1週間無料でお試し購読ができます  詳しくはここをクリック

新着記事は1カ月無料で公開

有料記事は990円(税込)で1カ月読み放題

*1年間は1万1000円(同)

〈新着情報〉〈政策・審議会・統計〉〈業界の動き〉は無料

【アーカイブ】テーマ特集/対談・インタビュー

コラム一覧

【アーカイブ】現場ルポ/医療介護ビジネス新時代

アクセスランキング(5月6日-12日)

  • 1位
  • 2位
  • 3位 90% 90%
メディカ出版 医療と介護Next バックナンバーのご案内

公式SNS