社会保障審議会(厚労相の諮問機関)は1月29日、オンラインで第29回会合を開催し=写真、田中滋・埼玉県立大学理事長・慶應義塾大学名誉教授を委員長に選出した。
この日の会合では、厚労省から全世代型社会保障改革と2021年度予算案の報告があり、これに対し各委員から多様な意見が述べられたが、自治体の委員からは新型コロナワクチンの接種体制に関する懸念や要望など、研究者の委員から全世代型社会保障改革についての見解などが示されていた。
自治体の委員では、平井伸治・全国知事会社会保障常任委員会委員長(鳥取県知事)が、ワクチン接種のための会場やコールセンターなどの設置について「100%国が措置すると言っているが内示がない」として、きめ細かな財政措置を要望した。
荒木泰臣・全国町村会会長(熊本県嘉島町長)も「市町村では早期のワクチン接種体制の確立が大きな課題」と指摘。立谷秀清・全国市長会会長(相馬市長)は「集団接種会場でのドクター確保に苦慮している」と述べ、知事会での検討を依頼するとともに、「厚労省の示しているワクチン接種単価では接種の促進が困難」との判断から、市長会として財源の検討などの要望を菅首相に行ったことを紹介した。
一方、研究者の委員では、宮本太郎・中央大学法学部教授は全社会型保障改革に関して、「コロナ禍で就職氷河期世代、非正規の若年層女性に打撃が集中している。その打撃が子どもたちにも影響している。今後、すべての世代が能力を発揮できる場づくりと条件づくりに力点を置いて、議論を発展させていってほしい」と要望を述べた。
また、小塩隆士・一橋大学経済研究所教授も、現役世代の貧困の問題に触れ「年金をもらっている人たちに支えられている面があり、貧困が顕在化していない。こうした人たちが高齢になると、貧困の問題が一気に出てくる」として、セーフティネットの見直しの必要性を指摘した。