第126回社会保障審議会介護保険部会が10月9日に開かれ、「人口減少・サービス需要の変化に応じたサービス提供体制の構築等」「地域包括ケアシステムの深化(相談支援の在り方)」などが議論された。
「人口減少…に応じたサービス提供体制の構築等」の論点は①地域の類型の考え方、②地域の実情に応じたサービス提供体制の維持のための仕組み、③地域の実情に応じた包括的な評価の仕組み、④介護サービスを事業として実施する仕組み、⑤介護事業者の連携強化、⑥地域の実情に応じた既存施設の有効活用、⑦調整交付金の在り方、と多岐にわたる。
以下、①~⑤について事務局からの提案をまとめる。
①については、サービス需要が減少する「中山間・人口減少地域」ではサービス提供の維持・確保を前提に新たな柔軟化のための枠組みを設ける必要がある。
その対象は「特別地域加算」の対象地域が基本となるが、拡充も考えられる。また、市町村の中でもエリアによって人口減少の進み方は異なるため、市町村内の一部エリアも対象とできないか。
「中山間・人口減少地域」は、介護保険(支援)計画の策定時に、都道府県が市町村の意向を確認して決定する。「大都市部」「一般市等」では、現行制度の枠組みを活用したサービス基盤の維持・確保が求められる。
委員からは、地域類型を定める根拠となる高齢者人口について、「その場合の高齢者とは何歳以上か、定義を定める必要がある」との指摘が相次いだ。
②は「中山間・人口減少地域」のサービス提供体制の維持・確保のために、特例介護サービスの枠組みを拡張する。新たな類型は下図の赤い部分だ。

第126回介護保険部会「資料1」より抜粋(以下同)
現行の特例介護サービスは図の青い部分、「基準該当サービス」「離島等相当サービス」だ。どちらもサービス類型は「居宅サービス」で、これを「地域密着型サービス」「施設サービス」に拡大するかが、今後の焦点となる。
新たな類型を実施するには人員配置基準などの変更も必要となり、サービス・事業所間での連携を前提に、管理者や専門職の常勤・専従要件、夜勤要件を緩和する。地域の実情に応じた包括的な評価の仕組みを実施可能とする(=論点③)。
過去の部会では「特例的な対応は人材確保を重点的に行う、生産性向上など他の施策を講じたうえで、それでもなおサービス維持・確保のためやむを得ない場合に検討する」「管理職や専門職の要件緩和は、職員の負担増に配慮し、ICT危機の活用やサービス・職種間で必要な連携体制が確保されていることを前提とする」「市町村の適切な関与、配置職員の専門性への配慮を行う」などが指摘されている。
今回も、委員からはサービスの質の担保や職員の負担増にどう配慮するか、といった課題が指摘された。
③は中山間・人口減少地域の訪問介護に限定して、現行の出来高報酬と月単位の定額報酬(=包括的な評価の仕組み)を選択可能にする、というもの。事務局は出来高報酬のメリット・デメリットをふまえ、定額報酬のポイントを示す(下図)。

定額報酬については、利用者間に不公平感が生じる、利用者の費用負担が増える、限度額との関係から利用が制限される、その逆にモラルハザードが生じる(利用者が必要以上に利用する、事業者が必要なサービス提供を控える)、などデメリットが指摘される。
これらの抑止のため、複数段階の報酬区分を設定する、定額報酬の対象範囲を限定するなどきめ細かな報酬体系とする方向で検討できないか、モラルハザードは、適切なケアマネジメントを担保することで抑制できるのではないか、との考えが示された。
委員からは「ベースは定額とし、そこに出来高を組み合わせる形はどうか」「医療ではDPCによりコストが抑制され医療の質の均てん化も進み、一定の効果があった。介護は医療に比べサービス内容が多様で、提供機関も長期的・継続的だ。単純な定額化は質の低下や重度の利用者受け入れが抑制される懸念がある」との意見が出た。
④は、中山間・人口減少地域の市町村がサービス基盤を柔軟に維持・確保できるよう、介護保険財源を活用して、給付に代わる新たな介護サービス事業(新類型)を実施。その仕組みは、事業者にサービス提供を委託して、事業費(委託費)は利用者への個別給付ではなく事業の対価として支払う、というもの。サービス提供は複数サービスの組み合わせも可能、とする(下図)。

⑤介護事業者の連携強化は、中山間・人口減少地域で複数の介護事業所間の連携を促進し、事業継続や、他法人・事業所の間接業務を担うなどの生産性向上を推進する。連携において中心的な役割を果たす法人・事業所に対してインセンティブを付与する(下図)。

委員からは「介護事業所の間接業務は請求や記録など複雑で、連携できる部分と難しい部分を整理する必要がある」「連携については実態調査が少ない。実態を把握してからインセンティブを検討すべき」といった意見が出された。