整備補助金の減額でサ高住の増加ペースが鈍化

2025年 6月 4日

住宅型有料の居室数が老健を上回る
 高齢者住宅のデータベースとコンサルティングを提供するタムラプランニングアンドオペレーティングは、「高齢者住宅データ〔全国版〕」2025 年度上半期号を発行した。

 それによると、4月時点で集計した全国の高齢者住宅・施設の13 種類のうち、ホーム数ではグループホームが1万4354カ所で最多となり、次いで住宅型有料老人ホーム(住宅方有料)の1万2900カ所、地域密着型を含む特別養護老人ホーム(特養)の1万474カ所の順となっている。

 サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)の登録数は 8284カ所で、増加しているものの国土交通省による整備補助金の減額もあり、そのペースは鈍化している。サ高住は11年の制度開始時に、25年時点で60万戸以上の整備目標を掲げていたが、各種の補助制度が整えられながらも目標の半数程度にとどまっている。

 また、介護付有料老人ホームは増加し続けているものの、各自治体における総量規制の影響もあり、居室数は4572カ所とサ高住の半分となっている。

 居室数/定員数では、特養の66万7241床が最多で、近年は利用者数の減少もあって介護老人保健施設(老健)が減少傾向にあるため、今回の集計では住宅型有料の居室数が37万6417戸で老健の36万5439床を抜き、特養に次ぐ規模となった。

 介護療養型医療施設については、医療保険施設や介護医療院などへ転換され、2023年度末に廃止された。後継である介護医療院は924カ所・5万2253床まで増加している。

個別ケアのホーム数・戸数が増加
 データベースでは、高齢者住宅・施設を介護保険サービスの提供方法により「包括ケア」と「個別ケア」に分けて集計している。

 包括ケアは特定施設入居生活介護・認知症グループホーム・特養・老健などの居住サービスの提供事業者が介護サービスも包括的に提供するもの。個別ケアは居住サービスの提供とは別に、入居者が個別に外部の介護保険サービス(居宅サービス)と契約して利用するもののこと。

 個別ケアでは入居者が外部事業者による居宅サービスを自由に選択でき、必要な分だけのサービスを受けることができることが利点とされている。しかし、一部事業者では入居者に対する「囲い込み」を行ない、居住サービス事業者の関連事業者が提供する居宅サービスを選択させている可能性がある。

 また、居宅サービスの報酬体系がサービス量の出来高払いのため、利潤追求による過剰サービス提供が生じる恐れもある。

 今回の集計で個別ケアのホーム数・戸数は 1万9634カ所・58万7417 戸となった。10 年前の15 年上半期集計に比べ9054カ所・28万9969戸増え、包括ケアのホーム数・戸数の増加数3918カ所・22万8980 戸を大きく上回った。

 これは、特養の整備が抑制され、特定施設入居生活介護も総量規制による制限がなされたことなどにより、包括ケアの開設が妨げられていること、囲い込みで収益を上げるため個別ケアを選択する一部事業者が存在することが理由として挙げられている。

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訪問介護の倒産止まらず 報酬引き下げなど響く🆕

 東京商工リサーチの調査によると、訪問介護事業者の2025年の倒産(負債1000万円以上)が11月末までに85件に達し、これまで最多だった23年67件、24年81件をすでに超え、3年連続で最多を更新した。  人手不足や24年度の介護報酬改定で訪問介護の基本報酬が引き下げられたことに加え、人件費やガソリン代、運営コストの上昇が要因と見込まれる。  25年の訪問介護事業者の倒産は11月末までに85件(前年81件)で、3年連続で年間最多を更新した。...

2割負担対象も預貯金に応じ1割の案 部会🆕

 第130回社会保障審議会介護保険部会が12月1日に開かれ、「持続可能性の確保」「論点ごとの議論の状況」などが議論された。
 
 今回、「持続可能性の確保」は
 
 ●「一定以上所得」「現役並み所得」の判断基準
 ●補足給付に関する給付の在り方
 ●ケアマネジメントに関する給付の在り方
 
 の3つの論点に絞って議論された。
 
 「一定以上所得」「現役並み所得」の「一定以上」とは、介護保険サービス利用時の自己負担を2割とする所得層で、「現役並み」とは自己負担3割の所得層だ。簡単にいえば所得の多い人は自己負担も多く、という応能負担の考え方に基づく施策である。現行の「一定以上所得」「現役並み所得」の基準は以下の通り。

賛否分かれる論点に進展なし 介護保険部会

 第129回社会保障審議会介護保険部会が11月20日に開かれ、「介護保険制度に関するその他の議題」「持続可能性の確保」などが議論された。
 
 「持続可能性の確保」の内容は
 
 ●1号保険料負担の在り方
 ●「一定以上所得」「現役並み所得」の判断基準
 ●ケアマネジメントに関する給付の在り方
 ●軽度者への生活援助サービスに関する給付の在り方
 ●被保険者範囲・受給者範囲
 ●金融所得・金融資産の反映の在り方
 
 など、注目度が高い項目が多く、これまでも議論が続いてきたが、今回は事務局から具体的にどうするか、施策の方向は示されていない。
 
 ケアマネジメントに関する給付の在り方については、他サービスと同様に幅広い利用者に負担を求めること(ケアマネジメント有料化)や、その判断にあたって利用者の所得状況を考慮することをどう考えるか、住宅型有料老人ホームの入居者に係るケアマネジメントについて利用者負担を求めるか、などの論点が示された。

特例介護の新類型を提案 介護保険部会

 第128回社会保障審議会介護保険部会が11月10日に開かれ、「人口減少・サービス需要の変化に応じたサービス提供体制の構築等」「地域包括ケアシステムの深化(介護予防・日常生活支援総合事業等)」「地域包括ケアシステムの深化(高齢者向け住まい)」などが議論された。
 
 「人口減少・サービス需要の変化に応じたサービス提供体制の構築等」は、10月に開催された第126回部会で提案された、「特例介護サービス」の新たな類型案について、具体的に提案された。
 
 現行の特例介護サービスは、全国を対象地域とする「基準該当サービス」と厚労大臣が定める地域を対象とする「離島等相当サービス」である。事業者は指定でなく登録、人員配置基準は指定サービスより緩和されている(離島等相当サービスでは人員配置基準の規定はない)。報酬も、介護報酬を基準に市町村が設定する。これらは居宅サービスに適用される。

有料は届出から登録へ 望ましいあり方検討会

 第7回有料老人ホームにおける望ましいサービス提供のあり方に関する検討会が10月31日に開催され、とりまとめ案について議論した。
 
 とりまとめ案は有料老人ホーム(以下、有料)における安全性やサービスの質の確保、入居契約の透明性確保、紹介事業の透明性や質の確保、指導監督や「囲い込み」対策の在り方など多岐にわたる。主な内容を以下に挙げる。
 
 ●中重度の要介護者(要介護3以上)や医療ケアを必要とする要介護者、認知症の人などを入居対象とする有料については、行政の関与により入居者保護を強化するため、登録制を導入。
 
 ●登録制は、公平性の観点から、要件に該当する既存の有料にも適用される。既存の有料が新制度に移行する際は一定の経過措置を設ける。
 
 ●参入後も事業運営の質の維持が求められるため、更新制や更新拒否の仕組みもつくる。行政処分を受けた運営事業者は一定期間、有料の開設が制限される。
 
 ●こうした有料については、高齢者の尊厳の保障やサービスの質の確保の観点から、職員体制や運営体制に関する一定の基準を法令で儲ける。

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