基本報酬、訪問介護は引き下げ 給付費分科会

2024年 1月 23日

 1月22日、第239回社会保障審議会介護給付費分科会が開催され、令和6年度介護報酬改定に向けて(介護報酬改定案について)議論し、改定案を了承した。

 全体の改定率は+1.59%で、うち0.98%は介護職員の処遇改善に充てられる。施行時期は訪問介護・訪問リハビリテーション・居宅療養管理指導・通所リハビリテーションの4項目は診療報酬改定に合わせて6月1日。これら以外は4月1日となる。

 ただし処遇改善関連加算の加算率引き上げと加算の一本化は6月1日施行。「現行の処遇改善関係加算について事業所内での柔軟な職種間配分を認めることとする」改正は4月1日施行となった。補足給付については、基準費用額の見直しが8月1日施行、多床室の室料負担見直しは2025年8月1日施行となった。

 全体としてプラス改定ではあるが、基本報酬を細かく見ると、訪問介護の点数がすべて下げられている。たとえば「身体介護の20分以上30分未満」は従来の250単位から244単位、「生活援助の20分以上45分未満」は従来の183単位から179単位に変わる。

 委員からはこの点について批判が集まった。ある委員は「訪問介護は人材不足が最も深刻で事業所の休廃業も多い。なのに引き下げとは」と失望をあらわにした。訪問介護の収支差率がプラス7.8%(2023年度介護事業経営実態調査)と、他のサービス類型に比べて高いことが引き下げの背景にある。

 基本報酬は引き下げられたが、処遇改善加算は他の類型より高い。厚労省は「訪問は人件費が7割。処遇改善を最優先し、他サービスと比較して最も高い14.5%から24.5%までとれる。小規模事業所が加算を取得できるよう応援する。看取りや認知症ケアの充実など、加算を取りやすい仕組みとした」と釈明した。

 別の委員は「訪問介護の収支差率7.8%というが、実際には多くの事業所が廃業している。7.8%はサ高住など同一建物へのサービス提供事業者の収支によるのではないか」と指摘し、「訪問介護をひとくくりにするのではなく、精密な実態調査が必要」と訴えた。

 新設の加算は療養通所介護に「重度者ケア体制加算」、特養などに「配置医師緊急時対応加算」、訪問入浴介護に「看取り連携体制加算」、認知症グループホームや特養、老健、介護医療院などに「認知症チームケア加算」など。

 訪問介護などには「口腔連携強化加算」、施設系に「退所時栄養情報連携加算」が新設される。居住系・多機能系サービスなどにはテクノロジー活用を促進する「生産性向上推進体制加算」も。

 定期巡回・随時対応型訪問介護看護と夜間対応型訪問介護の統合が取りざたされていることから、定期巡回の基本報酬に新たな区分を設け、夜間対応型の利用者負担に配慮して、夜間のみ利用者に対して出来高払いが加えられる。

 また、全サービスを対象に高齢者虐待防止措置未実施減算も新設される。

このカテゴリーの最新の記事

このカテゴリはメンバーだけが閲覧できます。このカテゴリを表示するには、年会費(年間購読料) もしくは 月会費(月間購読料)を購入してサインアップしてください。

24年度の生活保護申請件数 5年連続で増加🆕

 厚生労働省の調査によると、2024年度の生活保護申請件数は25万9353件(速報値)で前年度に比べ3.2%増加したことが分かった。前年度を上回るのは5年連続で、高齢者世帯の増加が主な要因。...

24年の出生数70万人割れ 出生率は過去最低に🆕

 厚生労働省の人口動態調査によると、2024年の出生数は68万6061人で、前年の72万7288人から4万1227人減少した。統計を取り始めてから70万人を下回ったのは初めて。すべての都道府県で減少した。  女性が一生のうちに子どもを産む数の指標となる合計特殊出生率は1.15で前年の1.20からさらに低下した。出生数を母の年齢(5歳階級)別にみると、すべての階級で減少している。  都道府県別に最も合計特殊出生率が少ないのは東京都の0.96で、人口の東京への一極集中がその一因と考えられる。...

整備補助金の減額でサ高住の増加ペースが鈍化🆕

住宅型有料の居室数が老健を上回る 高齢者住宅のデータベースとコンサルティングを提供するタムラプランニングアンドオペレーティングは、「高齢者住宅データ〔全国版〕」2025 年度上半期号を発行した。  それによると、4月時点で集計した全国の高齢者住宅・施設の13 種類のうち、ホーム数ではグループホームが1万4354カ所で最多となり、次いで住宅型有料老人ホーム(住宅方有料)の1万2900カ所、地域密着型を含む特別養護老人ホーム(特養)の1万474カ所の順となっている。  サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)の登録数は...

ケアプランデータ連携普及率で都城市が1位に

 善光総合研究所(東京都港区)が採択された宮崎県の「ケアプランデータ連携システム活用促進モデル地域づくり支援事業」で、都城市の124事業所へのシステム導入が完了し、人口10万人以上の市町村におけるケアプランデータ連携システムの普及率が36.2%を達成した。  厚生労働省の介護現場の生産性向上とケアプランデータ連携システムに掲載されている地域事業者数と、WAMNETに掲載のシステム導入数を基に算出した普及率によれば、同市が全国1位だという。...

東温市が遠隔医療など活用した健康増進事業実施

 愛媛県東温市は2024年10月から中山間地域の住民や市内企業で働く従業員の健康増進、医療機関などの人手不足解消に向け、市内公共施設や公民館、事業所などで最新のデジタル機器・技術を活用した「とうおんスマートヘルスケア創出事業」を行っている。  愛媛大学や市内企業、医師会・歯科医師会などと連携し、市民の健康寿命の延伸や最新のデジタル機器の活用を促進する。...

1週間無料でお試し購読ができます  詳しくはここをクリック

新着記事は1カ月無料で公開

有料記事は990円(税込)で1カ月読み放題

*1年間は1万1000円(同)

〈新着情報〉〈政策・審議会・統計〉〈業界の動き〉は無料

【アーカイブ】テーマ特集/対談・インタビュー

コラム一覧

【アーカイブ】現場ルポ/医療介護ビジネス新時代

アクセスランキング(6月2-8日)

  • 1位
  • 2位
  • 3位 90% 90%
メディカ出版 医療と介護Next バックナンバーのご案内

公式SNS