〈【新田國夫】治し、支える〉の記事一覧
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第34回 要介護高齢者の自立を考える

第34回 要介護高齢者の自立を考える

■重度障害者の自立とは
 『異端の福祉』(高浜敏之、幻冬舎メディアコンサルティング)という本に、重い障害をもつ人の自立について考察する一節がある。興味深い考察であり、自立とはどういうことか、改めて考えてみたい。
 
 著者の高浜氏は重度障害者の在宅サービス「重度訪問介護」の事業所を経営する。この事業所は全国展開し、重度障害者の脱施設化に寄与している。当事者は施設を出て地域で、在宅で暮らせるようになってきた。
 
 本書のなかで、自立生活運動の父と呼ばれる米国のエド・ロバーツ氏(1939-1995)が紹介されている。障害者のための組織「自立生活センター(CIL)」を創設したロバーツ氏はポリオの後遺症で四肢不自由となり、人工呼吸器も使用していた。
 
 本書によれば、彼は「できるだけ普通の人間になろうとしてリハビリテーションを受けた」という。その結果、装置を使えば自分ひとりで食事できるようになったが…

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第34回 要介護高齢者の自立を考える

第33回 在宅医療の圏域は地域包括ケアシステム圏域

■第8次医療計画に向けた議論で
 2024(令和6)年度から、介護の世界では第9期介護保険事業計画に入り、医療では、第8次医療計画が始まる。医療計画は都道府県が策定し、1次6年だから第8次は2029年度までとなる。このなかで在宅医療はどのように位置づけられるのか。
 
 厚労省「第8次医療計画等に関する検討会」のワーキンググループ(WG)の1つ、「在宅医療及び医療・介護連携に関するWG」で議論が続けられている。
 
 WGでの議論は、①在宅医療の提供体制、②急変時・看取り、災害時等における在宅医療の体制整備、③在宅医療における各職種の関わり、の3点に集約される。
 
 一方、東京都は、地域の実情に応じた在宅療養の推進を図るため、「東京都在宅療養推進会議」を設置して議論を続けている。この会議は医師・看護師といった専門職、都の3師会と看護協会、行政、患者・家族など、幅広い委員から構成され、私は会長を拝命している。
 
 「東京都在宅療養推進会議」は3月、「在宅医療及び医療・介護連携に関するWG」が提示する①~③について検討した。今回は、そのうち①について考えたい。
 
 WGは①在宅医療の提供体制について、適切な在宅医療の圏域を設定することとしている。その前提として、在宅医療の提供体制に求められる機能を…

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第34回 要介護高齢者の自立を考える

第32回 認知症でもひとり暮らしができる条件

 この連載で2年前、新田クリニックが訪問診療している在宅患者のTさん(90代女性、独居)を紹介した。
 
 Tさんはもともと新田クリニックの外来に来ていた患者ではない。4年前、家の中で転倒して動けなくなり、大声で助けを呼んだ。近所の人が気づいて地域包括支援センターに連絡し、その依頼で訪問診療を始めた。
 
 当時は近所の植え込みを勝手に刈り取ってしまい、近隣住民とトラブルになったこともある。当時から認知症があり、ADLは落ちていたが、とりたてて治療を必要とする持病はなかった。
 
■ケアはほとんど介護だけ
 現在98歳のTさんは、認知症が進みADLも低下してきたものの健在である。ヘルパーが朝昼夕と3回入り、食事や排泄を介助している。
 
 室内を伝い歩きしてポータブルトイレを使い、買い物や調理はできないが、ヘルパーが作った食事を1人で食べる。
 
 訪問看護も入って健康管理しているが、Tさんは医療をきらって血圧を測るのも一苦労だ。採血は、これまで1回もできていない。それでもコロナ流行期に発熱することもなく、暮らしを維持している。
 
 近隣住民は次第にTさんを理解し、受け入れるようになった。外に出てきても危なくないよう、スロープを要請したのも近所の人だ。Tさんがだれかを探すように歩き回れば…

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第34回 要介護高齢者の自立を考える

第31回 医療的ケア児も地域包括ケアでみる

■「うちの子にはかかりつけ医が3人」
 子どものかかりつけ医をどう考えるか、未就学児や小学生の母親たちに聞いたことがある。
 
 ある母親は「うちの子にはかかりつけ医が3人いる」と答えた。予防接種を受けさせるクリニック、発熱したら受診させるクリニック、受傷したとき連れていくクリニック。自宅から行ける範囲のそういうクリニックを、ネットで調べたという。
 
 この母親にとって子どものかかりつけ医の役割は、予防接種や熱やけがへの対処に限定されているようである。
 
 この母親に限らず、小さい子の親御さんは20代や30代であることが多いだろうから、「なんでも相談できるかかりつけ医」という存在そのものが身近に感じられないのかもしれない。なんでも相談できるのは、友人たちか。
 
 なんでも相談できるかかりつけ医が子どもにも必要であることは、言うまでもない。ただし、高齢者のかかりつけ医(機能)とは切り離して議論する必要がある。
 
 子どもの日常生活は成長と隣り合わせで、教育も必須だ。親など周囲のおとなとの関わりも重要で、これらは健康にも大きく作用する。
 
 子どものかかりつけ医(機能)にはこうした視点が欠かせない。高齢者のかかりつけ医(機能)に必要な視点とは全く異なる。高齢者と子どもには、病気やけがといったイベント発生時のみならず…

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第34回 要介護高齢者の自立を考える

第30回 かかりつけ医は誰に必要なのか

■広辞苑の変化に注目
 広辞苑の「医療」の項目をご覧になったことはあるだろうか。広辞苑で「医療」がどう定義されているか、現在発売されている第七版(2018年)と、その1つ前の第六版(2008年)を比べてみた。その変化はとても興味深い。
 第六版では、医療とは「医術で病気をなおすこと。療治。治療。」とあるのみで、この次には「医療過誤」「医療技術短期大学」が出てくる。それが、第七版では「①医術で病気をなおすこと。療治。治療。②医学的知識をもとに、福祉分野とも関係しつつ、病気の治療・予防あるいは健康増進をめざす社会的活動の総体。」と、②が加えられている。そのあとに「医療過誤」「医療技術短期大学」だ。
 医療とは何か。広辞苑の解釈はこのように変わった。第七版の記述は、高齢者向け医療が念頭にあるのだろう。「福祉分野とも関係しつつ」「社会的活動の総体」を加えたこの筆者は見事だと思う。現代の医療、超高齢社会の医療をきちんと理解し、新しい概念を反映している。
■かかりつけ医を法制度に明文化する動き
 厚生労働省の社会保障審議会医療部会が、「かかりつけ医機能が発揮される制度整備」について議論している。医療法を改正して明文化する方針という。
 この制度の骨格案が昨年12月の部会に示された。肝は…

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第34回 要介護高齢者の自立を考える

第29回 かかりつけ「医」よりかかりつけ「医療機関」

 新田クリニックを初めて受診した外来患者さんに、「私のかかりつけ医になっていただけますか」と言われ、喜んで、と答えた。これまで都心の企業に勤め、会社近くのクリニックにかかっていたんだけど、定年退職したから、という。大都市のサラリーマンには…

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第34回 要介護高齢者の自立を考える

第28回 かかりつけ医・機能をめぐる議論が活発になっている

 日本医師会の医療政策会議は、かかりつけ医・かかりつけ医機能のあり方についてワーキンググループを作って議論している。私はそのメンバーの一人で、このほど第1次報告を公表した。
 新型コロナの流行は、日本の医療提供体制の問題点をいくつか明らかにしたが、かかりつけ医のあり方は…

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第34回 要介護高齢者の自立を考える

第27回 日本人のメンタリティと終末期

■65歳でステージ4の胃がん
 前回に続いて、患者の意思決定についてもう少し考えたい。今回紹介するのは65歳の男性で、今年6月下旬、病院に紹介されて新田クリニックを初診された。病名は胃がん、ステージ4であった。
 2月初めに病院を受診し、この月の中旬から外来で抗がん剤による治療が開始された。3月、担当医が交替して…

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第34回 要介護高齢者の自立を考える

第26回 意思決定とパターナリズム

■86歳の初診患者が外来に
 5月、初診患者が新田クリニック外来に来られた。86歳男性で、頭頸部がんが見つかったという。すでに都内の大学病院の口腔外科と腫瘍科にかかっていて、これから治療法が決まると話す。
 そうですか、と話を聞いていると…

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第34回 要介護高齢者の自立を考える

第25回 家の前で転倒した98歳にすべきことは

■通りかかった人が119番
 私の自宅の6軒先に、98歳の女性がひとりで住んでいる。その女性は重度の認知症で、今の日課は家の前の道路を掃除することだ。冬も夏も、毎日掃除する。近所の人も知っていて、それとなく気にかけている。
 先月のある日、朝6時ごろ、女性は家の前で倒れ…

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