21年度薬価改定で業界団体が意見 中医協部会

2020年 12月 11日

 中央社会保険医療協議会(厚労相の諮問機関)薬価専門部会は12月11日、毎年薬価改定の初年度となる2021年度の薬価改定について、日本製薬団体連合会(日薬連)・米国研究製薬工業協会(PhRMA)・欧州製薬団体連合会(EFPIA)から意見を聞いた。

 最初に日薬連の手代木功会長が3団体を代表して意見を述べた。21年度の薬価改定の対象範囲については、新型コロナの影響により、平時と大きく異なる状況であることから、薬価と実勢価格の乖離率がすべての既収載品目の平均乖離率より著しく大きい品目に限定すべきとした。

 また、20年度薬価調査以降に薬価収載された品目は、実勢価格が存在しないことから対象範囲から除外すべきとし、需要が極めて少なく実勢価格が把握できなかった品目についても同様とした。

 その上で、改定方法については市場実勢価格に基づき行うルール、実勢価格と連動して影響を補正するルールのみ実施することを求めた。

 次に、PhRMAのジェームス・フェリシアーノ在日執行委員会副委員長は、手代木会長の意見とまったく同じとした上で、日本にある米国製薬企業の社長としての立場から、この数年間の薬価制度の変更により日本市場の魅力が薄れ、以前のイノベーション政策から大きく後退するのではないかという懸念を、世界の製薬産業が持ち始めていると指摘した。

 その中で薬価を毎年引き下げる仕組みに移行すると、G7の中でそうした仕組みを持つ唯一の国になり、日本はイノベーションを推進する世界的なリーダーの座から底辺に滑り落ちることになりかねないと警鐘を鳴らした。

 続いて、欧州製薬団体連合会のハイケ・プリンツ会長も手代木会長と同意見とする一方、グローバル企業として日本の患者に革新的な医薬品をいちはやく届けるためには、本社に日本を優先的な位置付けにしてもらう必要があり、そのためには日本でイノベーションが評価され、高い事業の予見性があることが必須だとした。

 そして、中間年改定が乖離の大小にかかわらず実施されることになれば、本社の認識が変わり、日本市場の優先度を下げざるを得ないと警告を発した。

 こうした意見に対し、健康保険組合連合会の幸野庄司理事は、新薬創出加算でイノベーションが評価されているのに、イノベーションと毎年薬価改定がどう関連するのか理解できないと疑問を呈した。

 また、全国健康保険協会の𠮷森俊和理事は、新型コロナの影響に関して、業界代表の意見は定性的な影響について総論的に述べているだけで、定量的なエビデンスによる影響を示していないとして、具体的かつエビデンスベースで議論する必要性を指摘した。

このカテゴリーの最新の記事

このカテゴリはメンバーだけが閲覧できます。このカテゴリを表示するには、年会費(年間購読料) もしくは 月会費(月間購読料)を購入してサインアップしてください。

今年上半期の介護事業者の倒産件数が過去最多に

 東京商工リサーチの調査によると、今年上半期(1-6月)の介護事業者の倒産件数は81件(前年同期比50.0%増)で、介護保険法が施行された2000年以降、最多件数を更新した。これまでの最多はコロナ禍の2020年の58件だった。
 
 業種別では、訪問介護が40件(同42.8%増)で最も多く、デイサービスなどの通所・短期入所が25件(同38.8%増)、有料老人ホームが9件(同125.0%増)で、主要3業種そろって上半期での最多を更新した。
 
 倒産の理由としては、売上不振が64件(構成比79.0%)と約8割を占めた。利用者の獲得が進まず…

ユニット型特養の建設費が過去最高 福祉医療機構

福祉・医療機関に融資を行っている福祉医療機構の調べによると、2023年度のユニット型特別養護老人ホームの建設費は平米単価34万2000円で、調査を開始した2008年度以降で最高額を記録した。 定員1人当たり建設費は1508万円となり前年度に比べ下がったが、高止まりの状態が続いている。 病院の平米単価は 41万1000円、定員1人当たり建設費は 2387万2000円で、いずれも前年度から上昇した。 保育所と認定こども園の平米単価は 42万8000円、定員1人当たり建設費は 367万9000...

2040年度に介護職員数が約57万人不足 厚労省推計

 厚生労働省の推計によると、65歳以上の高齢者数がピークを迎える2040年度に必要な職員数は約272万人で、現状のままでは約57万人不足することが分かった。26年度に必要な職員数は約240万人で同約25万人不足する。
 
22年度の介護職員数は約215万人。40年度に必要な職員数を確保するには…

訪問看護ステーション数が過去最多に 全訪看

 全国訪問看護事業協会がまとめた4月1日現在の全国の訪問看護ステーションの稼働数は1万7329カ所で、前年に比べ1632カ所(12.3%)増加して過去最高となった。
 
 2023年度中に新規に開設された事業所数は2437カ所で、同469カ所(23.8%)増えた。訪問看護ステーション数は10年度以降、右肩上がりで増加しており…

新たな介護予防サービスを3区で開始 横浜市

 横浜市はフレイルを予防・改善し、多くの高齢者が自立した生活を続けられることを目的に6月から新たな介護予防サービスを南・栄・泉の3区で開始した。
 
 健診データ・診療データ・要介護認定情報またはフレイルチェックシートを活用し、フレイルなどの高齢者を把握する。身体機能や栄養状態、口腔機能の低下が懸念される人に介護予防サービス利用の案内を送付。個人の状態に合わせて…

1週間無料でお試し購読ができます  詳しくはここをクリック

新着記事は1カ月無料で公開

有料記事は990円(税込)で1カ月読み放題

*1年間は1万1000円(同)

〈新着情報〉〈政策・審議会・統計〉〈業界の動き〉は無料

【アーカイブ】テーマ特集/対談・インタビュー

コラム一覧

【アーカイブ】現場ルポ/医療介護ビジネス新時代

アクセスランキング(8月26-9月1日)

  • 1位
  • 2位
  • 3位 90% 90%
メディカ出版 医療と介護Next バックナンバーのご案内

公式SNS