介護報酬改定に向けた視点案提示 社保審分科会

2020年 10月 12日

 厚生労働省の社会保障審議会(厚労相の諮問機関)介護給付費分科会は10月9日、第187回会合を開催し、2021年度介護報酬改定に向けた基本的な視点案を提示するとともに、各事業所に関する検討の方向性と論点を示した。

 基本的な視点案では課題を「感染症や災害への対応力強化」「地域包括ケアシステムの推進」「自立支援・重度化防止の取組の推進」「介護人材の確保・介護現場の革新」「制度の安定性・持続可能性の確保」の5つに整理した。

 感染症や災害への対応力強化では、日ごろから発生に備えた取り組みや発生時の業務継続に向けた取り組みの必要性、地域包括ケアシステムの推進では、在宅サービスの機能と連携の強化、医療と介護の連携の推進、看取りへの対応の充実、認知症への対応力向上に向けた取り組みなどが必要とした。

 自立支援・重度化防止に向けた取り組みの推進では、リハビリ・機能訓練、口腔、栄養の取り組みを連携・強化して進めることや、ストラクチャー、プロセス、アウトカムの評価をバランスよく組み合わせた介護サービスの質の評価の推進、介護人材の確保・介護現場の革新では、ロボット・ICTの活用や人員基準・運営基準の緩和を通じた業務効率化、業務負担の軽減などを進めることの必要性を掲げた。

 制度の安定性・持続可能性の確保については、評価の適正化・重点化や報酬体系の簡素化を進めるとした。

 こうした基本的な視点案に沿って、定期巡回・随時対応型訪問介護看護と夜間対応型訪問介護、認知症対応型共同生活介護(グループホーム)、小規模多機能型居宅介護、看護小規模多機能型居宅介護、高齢者住まい(特定施設入居者生活介護)の各事業所に関する報酬・検討の論点が示された。

 各事業所の検討課題のうち、特に委員から意見が多かったのは、グループホームの夜勤職員の配置を1ユニット1人から2ユニットに1人とするとの案。日本認知症グループホーム協会の調査で、夜勤をできる介護従事者が限られているため、夜勤のシフト調整に苦慮していると回答した事業所が半数以上あったことから、検討課題とした。ただ、同調査でも引き続きユニットごとに1人以上の夜勤配置を求める事業所が7~8割あったうえ、この日の会合でも現状を維持する意見が出された。

 その理由として、委員から1ユニット1人でも夜勤の負担は重く、2ユニットでは過剰労働につながること、火災などが発生した場合、1人で2ユニットの入居者を避難させるのは困難なことなどが述べられていた。

 また、小多機については、半数以上の事業所が赤字となっており、その要因として、契約終了者は重度の人が多い一方、新規契約者は軽度者が多いことがある。そこで、要介護度ごとの報酬設定のバランスを見直すことを検討する案が示された。

 また、小多機と看多機では、事業所の登録定員に空きがあることを要件に、登録者以外の短期利用が可能となっていることから、宿泊室に空きがあるだけでは利用できず、登録者以外の緊急時の宿泊ニーズに対応できないことが課題となっている。この対策としては、宿泊室の空きを柔軟に活用できるようにするとの提案が示された。これらの検討案に関しては賛同する委員が多かった。

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2割負担は先送り 介護保険部会が「意見」🆕

 第133回社会保障審議会介護保険部会が12月25日に開かれ、「介護保険制度の見直しに関する意見」が確定した。
 
 議論が続いた「一定以上所得」の判断基準については、第10期介護保険事業計画(2027~29年度)の開始前までに結論を得ることとなった。
 
 これは利用者負担が2割となる基準で、現行制度では年金収入+その他の合計所得が年280万円以上340万円未満である(単身世帯の場合)。340万円以上は「現役並み所得」とされ、3割負担だ。
 
 介護保険制度の持続可能性確保のためにその基準を拡大し、2割・3割負担となる層を広げるかどうか。
 
 具体的には、「一定以上所得(2割負担)」の下限を260万円~230万円の範囲で引き下げる案が示され、長く議論されてきたが、決着には至らなかった。「現役並み所得」の判断基準は「引き続き検討を行う」と、期限も示されなかった。
 
 そのほか、軽度者への生活援助サービスを給付から切り離して総合事業に移行する案も結論は出ず、「引き続き包括的に検討する」となった。

制度見直しの議論続く 介護保険部会🆕

 第132回社会保障審議会介護保険部会が12月22日に開かれ、前回に続き「介護保険制度の見直しに関する意見(案)」などが議論された。
 
 今回提示された案では、「一定以上所得の判断基準」について、これまで同様、年金収入+その他の合計所得を「年260万円~230万円の範囲」とした。まだ具体的な方向は見えない。委員の中には「2割負担の対象を拡大すべきでない」との意見も根強い。
 
 「拡大すべきでない」論者の意見は、
 
 ・医療ではOTC類似薬への新たな負担など、高齢者の負担増が確実。介護でも負担増は避けるべき
 
 ・負担増から利用控えが起こると、子世代にしわ寄せがくる。介護離職が増えるのでは
 
 ・現役世代の負担軽減は重要だが、サービスを使えなくなった親を子が援助すれば結局子の負担は増える
 
 などがある。持続可能性を高めるには被保険者の範囲や公費負担も見直すべき、との意見もあった。

2割負担、ケアマネジメントの在り方は 部会

 第131回社会保障審議会介護保険部会が12月15日に開かれ、「介護保険制度の見直しに関する意見(案)」などが議論された。
 
 「介護保険制度の見直しに関する意見」は2022年12月に“第1弾”が公表されている。このとき結論が出されなかった、〈「一定以上所得」「現役並み所得」の判断基準〉〈補足給付の在り方〉〈ケアマネジメントに関する給付の在り方〉〈軽度者への生活援助サービスに関する給付の在り方〉などについて、これまで部会で議論が続けられた。
 
 これらは「次期計画に向けて得ることが適当」「第10期計画の開始までに出すのが適当」「引き続き検討」とされた。次期計画とは現在の第9期(2024-26年度)、第10期は27-29年度である。
 
 「一定以上所得の判断基準」は「次期計画に向けて」だったが、まだ決着していない。2割負担の拡大、すなわち適用される所得の引き下げにつながることから、反対意見が根強かった。現行制度では、2割負担となる所得基準は年280万円以上だ。これをどこまで引き下げるか。年260万円~230万円の範囲が提案されている。
 
 引き下げ幅が大きいほど、2割負担となる人は増える。ただ引き下げと同時に「配慮措置」も提案されている。①新たに負担増となる場合、増加の上限を月額7000円とする、②預貯金等が一定額以下の人は申請により1割負担に戻す、の2つだ。

訪問介護の倒産止まらず 報酬引き下げなど響く

 東京商工リサーチの調査によると、訪問介護事業者の2025年の倒産(負債1000万円以上)が11月末までに85件に達し、これまで最多だった23年67件、24年81件をすでに超え、3年連続で最多を更新した。  人手不足や24年度の介護報酬改定で訪問介護の基本報酬が引き下げられたことに加え、人件費やガソリン代、運営コストの上昇が要因と見込まれる。  25年の訪問介護事業者の倒産は11月末までに85件(前年81件)で、3年連続で年間最多を更新した。...

2割負担対象も預貯金に応じ1割の案 部会

 第130回社会保障審議会介護保険部会が12月1日に開かれ、「持続可能性の確保」「論点ごとの議論の状況」などが議論された。
 
 今回、「持続可能性の確保」は
 
 ●「一定以上所得」「現役並み所得」の判断基準
 ●補足給付に関する給付の在り方
 ●ケアマネジメントに関する給付の在り方
 
 の3つの論点に絞って議論された。
 
 「一定以上所得」「現役並み所得」の「一定以上」とは、介護保険サービス利用時の自己負担を2割とする所得層で、「現役並み」とは自己負担3割の所得層だ。簡単にいえば所得の多い人は自己負担も多く、という応能負担の考え方に基づく施策である。現行の「一定以上所得」「現役並み所得」の基準は以下の通り。

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