診療報酬改定へ支払側・診療側が見解 中医協

2023年 12月 9日

 中央社会保険医療協議会(厚生労働相の諮問機関)は12月8日、来年度の診療報酬改定に関して支払側委員と診療側委員双方が基本的な見解を述べた。

 支払側委員は医療保険制度の持続可能性への懸念や国民負担の状況などから、診療報酬の引き上げに反対した。

 これに対し、診療側委員は政府の重要政策とされる医療従事者の賃上げ、物価高騰に対応するため、従来以上の大幅なプラス改定を求めた。

 医療機関の経営状況に関して、診療側委員は、2022年度の一般病院はコロナ関連補助金を含め1.4%の黒字、一般診療所は黒字が拡大し、医療法人では9.7%の黒字、歯科診療所と保険薬局は黒字基調で安定的に推移したと指摘した。

 また、医療法人における看護職員や看護補助職員の平均給料年額は、一般病院で1%台半ば、一般診療所で2%程度の伸びとなったと述べた。

 資産・負債の状況では、一般病院・一般診療所・歯科診療所・保険薬局のいずれも、長期借入金をはじめとする固定負債が減少して資本が増加し、一般診療所を中心に医療機関・薬局の経営は堅調と言えるとした。

 そして、薬価改定については市場実勢価格の低下に伴う引下げ分を国民に還元すべきとの見解を示した。

 これに対し、診療側委員はコロナに関する診療報酬上の特例や補助金などの影響を排除すると、コロナ後3年間の病院・診療所の損益率の平均は、コロナ前の平均を下回っているとした。

 その上で、診療報酬上の特例やコロナ補助金は一過性の収益で、しかも感染対策経費の増加や追加的人員の確保などの診療体制の整備に活用されており、すべての医療機関の収益となっていないことから、診療報酬改定の議論は、これらの影響を除いた上で行うべきであることを強調した。

 さらに、薬価改定に関しては、物価高騰・賃金上昇への対応に加え、医療DX対応に向けた環境整備の必要性もあることから、改定により生じる財源を診療報酬に当てることを求めた。

 今後はこれらの見解や薬価調査の結果などを踏まえ、公益委員が厚労相に対する意見書の素案を作成。その上で、中医協で議論して意見書を取りまとめ、中医協から厚労相への意見書として提出することになる。

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2割負担は先送り 介護保険部会が「意見」🆕

 第133回社会保障審議会介護保険部会が12月25日に開かれ、「介護保険制度の見直しに関する意見」が確定した。
 
 議論が続いた「一定以上所得」の判断基準については、第10期介護保険事業計画(2027~29年度)の開始前までに結論を得ることとなった。
 
 これは利用者負担が2割となる基準で、現行制度では年金収入+その他の合計所得が年280万円以上340万円未満である(単身世帯の場合)。340万円以上は「現役並み所得」とされ、3割負担だ。
 
 介護保険制度の持続可能性確保のためにその基準を拡大し、2割・3割負担となる層を広げるかどうか。
 
 具体的には、「一定以上所得(2割負担)」の下限を260万円~230万円の範囲で引き下げる案が示され、長く議論されてきたが、決着には至らなかった。「現役並み所得」の判断基準は「引き続き検討を行う」と、期限も示されなかった。
 
 そのほか、軽度者への生活援助サービスを給付から切り離して総合事業に移行する案も結論は出ず、「引き続き包括的に検討する」となった。

制度見直しの議論続く 介護保険部会🆕

 第132回社会保障審議会介護保険部会が12月22日に開かれ、前回に続き「介護保険制度の見直しに関する意見(案)」などが議論された。
 
 今回提示された案では、「一定以上所得の判断基準」について、これまで同様、年金収入+その他の合計所得を「年260万円~230万円の範囲」とした。まだ具体的な方向は見えない。委員の中には「2割負担の対象を拡大すべきでない」との意見も根強い。
 
 「拡大すべきでない」論者の意見は、
 
 ・医療ではOTC類似薬への新たな負担など、高齢者の負担増が確実。介護でも負担増は避けるべき
 
 ・負担増から利用控えが起こると、子世代にしわ寄せがくる。介護離職が増えるのでは
 
 ・現役世代の負担軽減は重要だが、サービスを使えなくなった親を子が援助すれば結局子の負担は増える
 
 などがある。持続可能性を高めるには被保険者の範囲や公費負担も見直すべき、との意見もあった。

2割負担、ケアマネジメントの在り方は 部会

 第131回社会保障審議会介護保険部会が12月15日に開かれ、「介護保険制度の見直しに関する意見(案)」などが議論された。
 
 「介護保険制度の見直しに関する意見」は2022年12月に“第1弾”が公表されている。このとき結論が出されなかった、〈「一定以上所得」「現役並み所得」の判断基準〉〈補足給付の在り方〉〈ケアマネジメントに関する給付の在り方〉〈軽度者への生活援助サービスに関する給付の在り方〉などについて、これまで部会で議論が続けられた。
 
 これらは「次期計画に向けて得ることが適当」「第10期計画の開始までに出すのが適当」「引き続き検討」とされた。次期計画とは現在の第9期(2024-26年度)、第10期は27-29年度である。
 
 「一定以上所得の判断基準」は「次期計画に向けて」だったが、まだ決着していない。2割負担の拡大、すなわち適用される所得の引き下げにつながることから、反対意見が根強かった。現行制度では、2割負担となる所得基準は年280万円以上だ。これをどこまで引き下げるか。年260万円~230万円の範囲が提案されている。
 
 引き下げ幅が大きいほど、2割負担となる人は増える。ただ引き下げと同時に「配慮措置」も提案されている。①新たに負担増となる場合、増加の上限を月額7000円とする、②預貯金等が一定額以下の人は申請により1割負担に戻す、の2つだ。

訪問介護の倒産止まらず 報酬引き下げなど響く

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2割負担対象も預貯金に応じ1割の案 部会

 第130回社会保障審議会介護保険部会が12月1日に開かれ、「持続可能性の確保」「論点ごとの議論の状況」などが議論された。
 
 今回、「持続可能性の確保」は
 
 ●「一定以上所得」「現役並み所得」の判断基準
 ●補足給付に関する給付の在り方
 ●ケアマネジメントに関する給付の在り方
 
 の3つの論点に絞って議論された。
 
 「一定以上所得」「現役並み所得」の「一定以上」とは、介護保険サービス利用時の自己負担を2割とする所得層で、「現役並み」とは自己負担3割の所得層だ。簡単にいえば所得の多い人は自己負担も多く、という応能負担の考え方に基づく施策である。現行の「一定以上所得」「現役並み所得」の基準は以下の通り。

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