2024年度診療報酬改定は、“短冊”(個別改定項目)が発表され、方向性が見えてきました。今回の改定は単に点数が変わっただけでなく、これからの日本の医療の行く末を示す重要な改定であると認識しています。
それは「2040年を展望し、誰もがより長く元気に活躍できる社会の実現」に示されたものが、本気で始まってきたことです。
高齢者人口はやがて伸びなくなり、単身世帯・夫婦のみ世帯が急増することを見据えています。現役世代が急減することも明らかです。その対策は「より少ない人手でも回る医療・福祉の現場を実現」することで、その方向性が今回の改定のキーワードではないでしょうか。。
DX化はその切り札であると位置づけられ、そこを見据えて診療・介護報酬の改定も行われているように感じます。診療報酬は、今回6月1日実施と、2カ月後ろ倒しになります。
在宅医療の需要増に対応
調剤では、在宅医療・服薬フォローアップ・医療DXの3点が大きなテーマです。
トリプル改定においては「在宅医療」が重視されています。2040年に向けて在宅医療の需要が増大していくとみられており、患者が望む場所で看取りがなされるような体制を整えていくことが求められ、診療報酬上も適応していく必要があると評価されています。
地域包括ケアシステムを構築するうえでも、住み慣れた場所で自分らしい生活を続けることは重要であり、その意味で在宅医療は不可欠の要素であると考えられています。
薬剤師や薬局に関しては、在宅医療における薬剤管理状況を把握すること、医療機関や高齢者施設との情報共有が重要な役割とされています。
かかりつけ医と連携し、在宅医療でも患者が安心して薬物療法を受けられる環境を作っていかなければなりません。なお、在宅患者に対しては薬剤の管理だけでなく、服薬指導を行うことも重要です。
服薬フォローアップ
2023年7月の中医協(中央社会保険医療協議会)総会では、調剤に関する議論で、今後充実させるべき対人業務の1つとして「服薬フォローアップ」が取り上げられています。
服薬フォローアップには「適正な使用の推進」「服薬アドヒアランスの向上」「異常が起こったときの受診勧奨」「医療機関に対するフィードバック」などの効果が期待されています。
適切にフォローアップがなされることで薬物治療に対する患者の不安も解消され、また、服薬に対する意識も高まります。
ただそうは言っても、実際に取り組む薬局薬剤師には高いハードルのようです。当初、電話によるフォローを実施したのですが件数は伸びませんでした。2020年9月、改正薬剤師法ならびに薬機法が施行され、服薬後フォローアップの義務化が明記されました。
私どもでは22年8月時点は電話でのフォローアップがメインであり、月平均4件の実施でした。同年9月よりLINEと連動したフォローアップアプリを導入しました。
アプリ導入にあたりスタッフの手間や業務量増加が懸念されてもいたため、現状の調査と積極的な服薬後フォローを行う体制およびその方法と有用であった実例の共有から始まりました。
医療DXはこんな形でも
アプリ導入店舗2店において、導入時の22年9月から翌年10月までの服薬後フォローアップ状況について調査しました。またフォローアップを進めるにあたり、以下の3点の施策を意識的に行いました。
• チラシの配布
投薬時に利用方法や友達追加のための2次元コード付きのチラシ(図1)をお渡しし、補足説明を口頭で行った。
• 朝礼時のスタッフへの声掛け
朝礼ノートに1日のご案内数の目標値や現時点の登録者数などを記載し、モチベーションの維持に努めた。
• 患者様へのご案内数の集計
毎日各々のスタッフがご案内した数を表に記載し(図2)、視覚的に推進状況が把握できるよう工夫した。
図1
図2
その結果、以下のような変化が起こりました。
該当店舗のスタッフからは、以下のような感想も上がりました。
• アプリを使用することでフォローアップ時の文章が残り、認識の齟齬発生を防ぐことが出来る点が有用。
• メッセージ機能を利用した患者様の不安の軽減や処方医への連携がしやすくなるため、メンタル系クリニックの近隣薬局ではフォローアップツールの導入が有用。
• アプリと薬歴の連動性は重要。
• 患者様の特性によってはアプリでのフォローアップが不適切な場合もあるため、電話など口頭でのフォローアップを行う必要もある。
以上のような方法も有用な1つと考えています。ものから人への変化にもDX化を活用することが必須になるようです。診療報酬の改定も、いろいろことがDX化という名のもと、急激に進んでいくようです。
高橋眞生(たかはし・まなぶ) ㈱カネマタ代表取締役
在宅医療薬剤師。千葉・船橋で保険調剤薬局を展開。訪問薬剤管理を長年実践し、在宅患者からの信頼も篤く地域医療に貢献している。