第21回 医薬品と健康食品の違いを正しく知ろう🆕

2024年 6月 21日

 これからの薬局のあり方を示す調剤報酬(24年度改定)が6月からスタートしました。その方向として、①OTCの充実、②選定医療の患者負担の増額、③医療用医薬品のスイッチOTC化が挙げられます。さらに、報酬の算定用件に48 薬効群の品目を取り扱うことという規定が入りました。実際にその分類の薬を店舗に置かなければなりません。

医薬品は安全基準が担保されている
 薬局の大きな役割は、地域住民の健康と安全を守ることです。医療費高騰の中、軽医療であるOTC推進も大きな課題です。セルフメディケーションの根幹であるOTCは、薬剤師にとっては薬を通して保険外で患者様の健康に貢献できるツールです。

 薬局薬剤師が処方箋で薬剤を交付する際は、他に飲んでいる薬剤・健康食品をお聞きし、相互作用・副作用があるかないか、確認しています。相互作用のあるものは中止していただくよう指導しています。

 医薬品の販売に必要な資格は、医薬品の分類に応じて以下のように変わります。

医薬品分類

 要指導医薬品とは、新しい医薬品で直接OTCとして承認されたものや、医療用からOTCにスイッチされた直後のものなどで、薬局やドラッグストアで対面でのみ販売できます。

 このように医薬品に関しては国の安全基準がしっかり担保されています。製造過程で不備があった場合は改善命令が出されるほど、非常に厳しいものです。

サプリメントは健康食品
 小林製薬が販売していた、紅麹のサプリメントによる健康被害が発生した問題で、厚生労働省と大阪市が5月24日に合同で会見を開き、摂取後に健康被害を訴えたおよそ2000人を対象にした調査結果を発表しました。

 大阪市が全国の保健所に聞き取りを依頼し、5月15日までに集まった2050人の分析結果についてまとめました。発症した月が分かる1467人の分析では、去年11月から今年3月の期間に発症した人が全体のおよそ7割に上りました。全ての製品回収が終わっておらず、まだ増えることが予想されます。

 まだ原因は解明されていませんが、大量に摂取できる粒などを喫食することは勧められません。

 紅麹サプリ商品は機能性表示食品に分類されます。食品ですから、国の安全管理は医薬品とは全く異なります。食品の中でも特定保健用食品(トクホ)に指定されているものは国の審査を受け、特定の保健の目的に役立つと認められたものです。

 栄養機能食品は特定の栄養成分の機能を表示できるもので、国の規格基準に適合しています。機能性表示食品は科学的根拠に基づいた食品で、製造会社が自己責任で機能や効果を表示できるものです。上記のいずれにも該当しない健康食品もあります。すべて、医薬品と誤解されないように表示に制限があります。

保健機能食品

 この分類を踏まえて認識しなければならないのは、機能性表示食品は企業が大きな責任を負うということです。

 機能性表示食品には販売規制がないので、消費者が自分の責任で購買していくことになります。現在のこのような商品の購入先はテレビショッピングやネット通販が多くを占めています。医薬品や健康にかかわる商品の小売り形態が対面からネット・TVなどにとってかわられてきています。

 もう1カ所、機能性食品を多く扱っているのはドラッグストアで、調剤薬局では機能性食品の取り扱いは多くありません。ですから、小林製薬の紅麹サプリ問題は、薬局では大きな問題となっていません。私の薬局でも販売していませんでした。

 私どもが扱っている健康食品は、植物繊維やメイバランス・マイサイズなど、医薬品の補助としてつかうもの、エクレル・マヌカハニーなど美容・健康のサポートですが、メーカーがしっかりした会社であると判断し、採用指定します。

古代から利用されてきた紅麹
 紅麹は古代から使われている成分で、後漢の時代に著された『神農本草経』にも登場しています。中国や台湾では、古くから「血行促進」「内臓を温める」などの健康効果が知られ、重用される一方で、肉の加工や酒の製造に用いられ、さらには、調味料、食品用防腐剤や天然着色料としても使われてきました。

 浙江省や福建省では、現在も妊婦の保健食品として利用されています。日本には奈良時代に伝わり、その後、食品の保存や味付けに使われるようになりました。

 紅麹をつくる紅麹菌はモナスカス属に属し、血清コレステロール降下作用を示すモナコリンKという物質をつくります。このため、紅麴はコレステロール降下作用をもつ機能性食品または医薬品(血清コレステロール降下薬。ロラスタチン・シトリシニンは産生しない)として製品化されています。

 ところが、ある特定のモナスカス属には、カビ毒のシトリニンを産生する菌株も存在します。この毒は腎臓に作用し、腎疾患をもたらします。米国では、モナコリンKを少しでも含む紅麹製品をサプリメントとして売ることはできないと法律上定めています。

 小林製薬も信用できる会社と思っていましたので、残念です。国も規制を強化するようですが、健康食品についても医薬品医療機器総合機構(PMDA)のような機関が設置され、様々な情報を共有し、安全安心を担保しながら財布にやさしい商品がでてくれればと期待しています。

 消費者のみなさまにお願いです。くすりの専門家である薬剤師は健康食品の作用・副作用にも精通しています。ネットでの情報をうのみにしないで、薬剤師に相談していただければ、服用している薬も踏まえアドバイスできます。ぜひ地域の薬剤師を活用してください。

高橋眞生氏

高橋眞生(たかはし・まなぶ) ㈱カネマタ代表取締役
在宅医療薬剤師。千葉・船橋で保険調剤薬局を展開。訪問薬剤管理を長年実践し、在宅患者からの信頼も篤く地域医療に貢献している。

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 DXを取り入れることで業務を効率化し、医療費の無駄をなくして、患者に適正で質の高い医療を提供できる。市民は、より安全で安心な生活を送れるようになる。それが目標です。
 
 2023年4月には特例措置でマイナ保険証関連の医療費をさらに引き上げ、マイナ保険証を使えば患者自己負担も低くなる報酬改定を行っています。
 
 2022年10月より、マイナ保険証に対応した医療機関を受診した場合の医療費の負担について、利用した際は21円から6円に引き下げ、従来の健康保険証を利用した際は9円から12円に引き上げられました。
 
 患者側のメリットはほかにもあります。マイナンバーで情報を承認すると、「お薬手帳」に相当する処方内容や健康診断の結果などが閲覧でき、いつどこを受診されどのような処方であったか確認できます。それにより薬剤の重複や適正使用を確認できます。
 
 薬局薬剤師の役割も進化します。正しく調剤することだけでなく、得られた情報を吟味し、処方された薬剤が適切かどうかを検証し、問題があれば…

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