新型コロナウイルス感染症の第5波は、9月に入って新規陽性者は減少傾向にあるものの、重症者は高止まりし自宅療養者が激増している。そして、自宅療養者の健康観察がなされず急激な悪化が見逃され、亡くなるという、あってはならない事態が相次いでいる。これは一体…
第39回 タイの医療・介護事情を垣間見る
■高齢化が急速に進む
8月終わりから9月頭まで、タイを訪問した。JICA(独立行政法人国際協力機構)の「草の根技術協力事業」のひとつ、「自治体ネットワークによるコミュニティベース統合型高齢者ケアプロジェクト」に参加し、現地で地域包括ケアや認知症について講義した。
訪問したのは首都バンコクではなく、パトムタニ県ブンイトー市、プラチュアップキリカン県ホワヒン市、ラーチャブリ県ポータラム郡の3カ所である。
ポータラムはリゾート地として知られる。3地域で診療所や介護士養成学校、ヘルスセンター、一般家庭を訪問する機会をいただいた。以下は、私が直接見聞きした、タイの医療・介護事情である。
まず、タイでは60歳以上を高齢者と定義する。日本で高齢者と定義されるのは65歳以上だが、日本では今や65歳を高齢者とは呼べないだろう。
本質的には、高齢者と定義されるべきは85歳以上かもしれない。高齢者をどう定義するかは…