第16回 認知症だけじゃない、初期集中支援の重要性🆕

2024年 2月 9日

 今回は、「初期集中支援」について考えてみたいと思います。初期集中支援といえば、「認知症初期集中支援チーム」がよく知られています。初期集中支援という考え方が、地域包括ケアシステムの中では、とても大切な考え方であることを、他の事業にも触れながらお話ししたいと思います。

認知症初期集中支援チームの「初期」は「症状の初期」ではない
 そもそも、初期集中支援における「初期」とは何でしょう? 認知症ケアでは早期発見・早期受診が推奨されることもあり、軽度のうちに認知症を認識し、早めに受診して集中的な支援をイメージすると思います。

 もちろん認知症のケアでは、できるだけ軽度の段階での関わりが大切なのはいうまでもありません。とはいえ症状が進行した状況ではチームの意味がないということでもないでしょう。

 誤解されることも少なくありませんが、認知症初期集中支援チーム事業における初期は、「疾患の初期段階」という意味ではなく、「介入の初期段階」を意味しています。つまり症状の段階に関係なく、専門職が介入する最初の段階での集中的な支援を意味しています。

 認知症の人の療養生活の開始は、本人・家族にとって大きな不安を伴うもの。今までとは様子の違う家族の言動を目の当たりにし、どうしたらよいのかわからなくなるのは当然です。

 いくら介護サービスがあっても、生活のすべての時間帯を専門職がサポートできない以上、療養生活の初期段階における不安除去は、在宅での限界点を引き上げていく上で最重要課題です。

 そこで認知症初期集中支援チームは、ケアの入り口段階で認知症の人とその家族を実際に訪問し、本人をアセスメントし、家族支援も含めた包括的なケア計画を立案し、集中的な支援を行ったうえで、在宅ケアのチームに引き継いでいくことをイメージします。在宅生活へのソフトランディングを設えるのがチームの役割といえます。

入退院支援における初期集中支援
 こうした初期段階での丁寧な関わりが効果を上げるのは、認知症ケアだけではありません。在宅医療・介護連携における入退院支援もまた、初期集中支援が欠かせない取り組みです。

 脳卒中で入院し、退院する人は、身体状況がこれまでと全く異なる状態で、なじみのある家に戻ります。体が思うように動かず、これまでできたことができない。再発も含め在宅療養中に何か異変があったらどうしたらよいのか? 再発を防ぐには何が大切なのか? 様々な不安を抱えています。

 病院やケアマネジャーからの説明が不十分であれば、退院時の本人・家族の不安はさらに大きくなります。介護サービスが入るといっても、それが24時間365日でないことは家族も承知していますし、結局は家族の関わりがあることを前提に在宅療養を考える場合が多いからです。

 本人・家族の不安は、サービス不在時はどうするのかという素朴な疑問に端を発していますし、予後予測できないところに根本的な問題があります。

 したがって、退院後の生活をソフトランディングさせるためには、適切な情報提供と今後の見込み、対応について説明が行われ、必要なケアが生活に定着するまで集中的に支援することがポイントなのです。

フレイルに対する初期集中支援
 少しタイプは違うものの、フレイル対応にも短期集中サービス(C型サービス)という初期集中支援があります。

 このサービスは、虚弱状態になりかけている方に対して、従来の生活に戻るための集中的な支援を専門職が中心になって行うものです。リハ職を中心に多職種の支援で行われることから、軽度者向けの医療介護連携の一形態ともいえます。

 このサービスはリエイブルメント(再びできるようになるための支援)とも言われますが、単に虚弱の高齢者に筋力トレーニングを行うものではありません。本人の(もともとの)生活スタイルをしっかりとアセスメントしながら、元の生活に戻るため、動機付けを中心に3~6か月程度の期間で区切って支援します。

 体力が低下している中で、本人すら諦めかけている元の生活に戻すためには、強い動機付けが必要ですから、丁寧なアセスメントと相談支援が不可欠なわけです。まさに虚弱高齢者への関わりの初期段階における集中的な支援といえます。

 実はこうした、介入初期段階への集中支援という考え方は、介護保険サービスの中でも、実践として随所に見られる一般的なものです。例えば、包括払いサービスである定期巡回随時対応サービスでも、利用開始時は、生活リズムとニーズをアセスメントするため、より多くの訪問を計画するといいます。

 その上で、生活の輪郭が見えてくるにしたがい、徐々にその人にあった回数とタイミングに調整し(一般的には回数を減らしながら)、通常の支援状態にもっていきます。これも、ソフトランディングを狙った、言ってみれば「初期集中支援」なのです。

変化から通常の生活にソフトランディングするための先回り支援
 今回取り上げた3つの支援は、それぞれ、地域支援事業の中で異なる事業に位置付けられています。とはいえ、いずれも状態や環境の変化する場面で短期間に集中的な支援を投入し、その後は、通常の介護サービスや地域の場につなぐためのソフトランディングを実現する点で共通しています。

 こうしたソフトランディング支援が求められるのは、言ってみれば現在の介護保険サービス(個人給付の対象となるサービス)が定常的・安定的な生活ニーズへの対応を前提としているからです。

 そのため心身状態が変化したタイミングでは、家族の不安軽減に十分に寄与するとはいえず、また多くのサービスが事後対応的でもあります。未然防止・初期対応という視点からデザインされていないことの現れともいえます。

  かつては、虚弱状態が進んでいても要支援状態になるまで介護保険サービスは提供できませんでした。現在は総合事業に位置付けられることで 間口が広がり、事業対象者も含め虚弱の入り口にいる高齢者も短期集中サービスを使うことができます。

 認知症ケアも、状態が悪化してからの事後的な対応に追われるのではなく、周囲の理解と適切なケアによって安定した生活ができることが期待されています。

 こうした考え方は、「できないことを補う」という従来のお世話型のケアからの脱却も意味しています。重度化防止、介護予防といった表現も使われますが、言ってみれば悪化前に「先回りするケア」ともいえます。

 この点でも、初期集中支援は、地域包括ケアにおける住み慣れた地域で自分らしく生活するための条件を少しでも早い段階から支援する取り組みとして期待されているのです。

岩名礼介(いわな・れいすけ) 三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社主席研究員、共生・社会政策部長

自治体支援を専門とし、在宅医療・介護連携推進事業や生活支援体制整備事業、介護保険事業計画などのコンサルティング・研修に携わる。

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 新年度に入り、第9期介護保険事業計画の策定が本格化しています。今回は、施設サービスの基盤整備に焦点をあて、「なぜ広域指定の特養整備が、地域サービス基盤の安定化におけるリスクになるのか」について述べたいと思います。
 
■2040年とその先にむけたサービス基盤整備の方向性
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 地域包括ケアシステムの当初の目標年度である2025年が、いよいよ目前に迫っていることもあり、今後の人口動態にあわせたサービス基盤整備が強調されています。
 
 非常に簡単に整理すれば、今後は、介護需要が増加し続ける地域、一定期間増加した後ピークアウトする地域、継続的に需要が減少する地域の3つに整理される中、向こう数十年の需要予測をしながら基盤整備の方針を立てるべきであるということです。
 
 住み慣れた地域を単位とした生活を前提とする以上、今後の介護サービス基盤の整備の主力は地域密着型サービスです。しかし、他方で、特別養護老人ホームなど、従来からある都道府県が指定する施設についても、議会や住民から整備に向けた根強い要望が出ることがあります。
 
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第13回 地域に「多様な支援・サービス」は本当にないのか?

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 私も自治体職員から「有償ボランティアはやはり難しい」、「うちの地域にはそういう団体はない」という声もよく聞きます。今回は、「地域に多様な支援・サービスは本当にないのか?」という点を少し考えてみたいと思います。
 
■地域の宝物を見落としていないか?
 
 住民主体の活動や有償ボランティアは、住民の自発性や篤志で成り立っているという意味で貴重なものです。したがって自治体職員が「そうした資源の育成は時間がかかるし、難しい」というのは正しいと思います。
 
 しかし、一方で、自治体側がこうした貴重な資源を十分に把握できているのかという点では、まだまだ努力の余地があると感じています。最近、私自身、素晴らしい助け合い活動を展開する団体に相次いで出会いました。
 
 ところが、一つの団体は自治体から補助金が得られず苦しい財政状況の中で運営していることがわかりました。もう一つの団体は、活動領域を拡大したいけど、マッチングを担うコーディネーターの人件費が確保できないと苦心していました。
 
 自治体側でも有償ボランティア活動があることは知っていたけど、支援の対象になるのかよくわからないままだったという事例にも遭遇しています。いずれも総合事業を活用すればしっかり支援できるケースでした。
 
 問題なのは、活動に取り組む団体側も、総合事業の複雑怪奇な補助の仕組みを熟知しているわけではないため、受けられるはずの支援を十分に認識できていないこと、また行政側も団体運営の厳しさを十分に把握していない場合があるということです。
 
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