ソフトウエア開発のnemuli(千葉県柏市)など3者は3月31日、病院外から遠隔で再来受付を可能にする「遠隔チェックイン」サービスの実証試験を、国立がん研究センター東病院(同)で開始した。
参加しているのは同社のほか、柏の葉 IoT ビジネス共創ラボ(三井不動産ほか)、柏の葉アーバンデザインセンター(UDCK)。柏の葉スマートシティにおける、IoTを活用したスマートホスピタル実現に向けたプロジェクトの一環として実施する。
同サービスでは、事前に診察予約を行った患者が、診察当日に病院の最寄り駅である柏の葉キャンパス駅に到着すると、アプリ内で位置を認識し、遠隔チェックインするためのボタンが起動する。
患者がボタンを押し、チェックインに成功すると、病院側の管理画面に通知が飛び、再来受付が行われる。このため、患者は直接診察室に向かうことができるようになる。
通常、患者は来院すると再来受付機でチェックインし、その後、自分の順番が来るまで待合室やロビーで待つことになり、患者にとって大きなストレスとなっている。実証試験では、遠隔チェックイン・サービスを導入することで、実際にどの程度の院内待ち時間が削減できたかを精査する。
また、新型コロナ禍で、病院の待合室などでの密状態を避けたいという患者もいることから、患者の心理的なストレス軽減にもつながると考えられる。
このサービスが実装された場合、病院にとっては再来受付機と再来受付業務のスリム化が実現でき、コストメリットにつながることが予想される。また、予約のある患者の当日の移動状況を細かく確認できることで、患者ごとに必要な検査機器の事前準備など、業務効率の向上にもつながることが期待される。
さらに、院内業務の最適化・効率化で生み出された余剰リソースを、患者1人1人に対するきめ細やかなサービスの実現へシフトすることも可能になる。
遠隔チェックインのサービスは、スマートホスピタルの実現に向けた第一歩で、アプリケーションの機能拡張に向け、チェックイン後、待ち時間を周辺の街で楽しく過ごしてもらうためのサービスや院内の人流計測、病院までの移動手段との連携などの検証も同時に行っていく。
今回の取り組みは、柏の葉IoTビジネス共創ラボの「ヘルスケア・ワーキンググループ」での議論から生まれた。「イノベーションフィールド柏の葉」(事務局:UDCK)の枠組みを活用したプロジェクトで、UDCKが地域との連携を支援し、nemuliが開発したGPSによるチェックインシステムと、病院側が患者の移動状況を確認するためのアプリケーションを活用する。
nemuliや国立がん研究センター東病院も参加する「柏の葉スマートシティコンソーシアム」(事務局代表:UDCK)の「ウェルネス」プロジェクトとしても位置付けられ、国土交通省のスマートシティモデル事業に選定されており、柏の葉スマートシティでのスマートホスピタルのモデル構築や、地域内外での展開を目指している。