シンポジウムではリモートによる登壇者も交え、新型コロナが感染拡大している状況下で、何を変え、何を変えずに守っていかなければならないか、などをテーマに意見を述べ合った
11月23日、第16回在宅医療推進フォーラムが会場(東京ビッグサイト)とYouTubeライブ配信のハイブリッド形式で開催された(主催は国立研究開発法人国立長寿医療研究センターと公益財団法人在宅医療助成勇美記念財団、共催は日本在宅ケアアライアンス)。今回のテーマは「Withコロナ時代の在宅医療~暮らしと生きがいを支える~」。
新型コロナ流行下での開催のため、会場への入場は例年の5分の1以下である150人に制限した。一方でYouTubeライブ視聴者は1500人に上り、合計で過去最多となった。プログラムも例年は朝9時から始まるが、今年は13時スタートと短縮しての開催となった。
プログラム構成は、基調講演が4、ブロックフォーラムとシンポジウムが各1。一部の演者はリモートでの登壇となった。総合司会はつるかめ診療所の鶴岡優子所長が務めた。
プログラムの最後、シンポジウムのディスカッションでは、座長の日本在宅ケアアライアンス武田俊彦副理事長がシンポジストに「これまでも在宅医療を実践してきて、コロナという大きな問題に直面している。私たちはそんな状況下で、①何を変えていかなければならないか。②逆に、何を変えずに守っていかなければならないか」を問いかけた。シンポジストと指定発言者の答えから、以下に抜粋する。
フォーラムの開催に当たっては、会場に入る際に検温を行うなど、万全のコロナ感染対策を実施した
①過度に恐れること、余りに恐れないこと、対応を保健所など誰かに任せきりにすること。(北海道・静明館診療所の大友宣医師)
①コロナ前のような訪問診療での長時間の対話を見直し、短時間診療とした。ただし、効率化を求めるあまりに短すぎてもいけない。濃密に対応するところと、効率化する業務と、感染対応を並列に。(新宿ヒロクリニックの英裕雄院長)
①意識を変えることが重要。②基本的な感染対策を行いながら人とのつながりを保つ。基本的人権としての移動の自由が公共の利益のために制限されている。入院した場合に尊厳が守られないこともある。これを感染対策とどのように両立させるか。知恵を絞り、試行錯誤しながら積み重ねる。(山形県庄内保健所の蘆野吉和所長)
①市民の力を信じて患者力を上げることを働きかける。いわば双方向の医療が必要。自分の健康は自分で守ることができる人を育てていく。②在宅医療を連携してやりながら、人生の軌跡を大切に守ること。(白十字訪問看護ステーションの秋山正子統括所長)
②かかりつけ医をもつことがいかに重要か、実感している。日本の医療がいい方向に動くようにムーブメントが起こるといい。(厚生労働省の迫井正深医政局長)
①病院ではコロナ以後、入院中のカンファが開かれなくなり、その場しのぎの医療介護が活発になってきている。面会制限のためにケアマネも病院に来なくなって、円滑な退院調整の障害となっている。今、病院は患者さんの暮らしよりも、コロナかコロナでないかばかりを気にしている。地域医療全体があまりにもコロナシフトしすぎていて、それが円滑さを失わせる原因になっている。(沖縄県立中部病院の高山義浩副部長)
①介護の現場から感じることを。今、人は近づかないで、話さないで、離れて、となっている。それに慣れてしまうのではないかと不安。これに慣れないようにすること。(ホームホスピス宮崎の市原美穂理事長)