厚生労働省は11月19日に開催した社会保障審議会(厚労相の諮問機関)医療保険部会で、後期高齢者の医療費の窓口負担の引き上げについて、対象となる所得基準で5つの案を提示した。
後期高齢者の負担割合は現在、3割負担となっている課税所得が145万円以上の現役並み所得層(後期高齢者の約7%)を除くと、1割負担となっている。このうち世帯全体が住民税非課税の低所得層を除く、一般層を対象に負担を2割に引き上げる方針が示されている。
厚労省は一般層のうち2割負担となる層を、所得を基準として①介護保険の2割負担の対象者の割合(上位20%)と同等の本人収入240万円以上(現役並み区分を除くと上位13%、約200万人)②現行2割負担である70~74歳の平均収入額(約218万円)を上回る同220万円以上(同18%、約285万人)③平均的な収入で算定した年金額(単身187万円)を上回る同200万円以上(同23%、約370万人)④本人に課税の対象となる所得がある同170万円以上(同31%、約520万人)⑤本人に住民税の負担能力が認められる同155万円以上(同37%、約605万人)の5つに分類し、選択肢として挙げた。
また、75歳以上の高齢者は、ほぼすべてが外来受診しており、そのうち5割弱が毎月受診している。窓口負担の2割引き上げの影響を受ける人の多くが外来受診者であり、2割負担とした場合、約6割の人が高額療養費の限度額に該当せず負担が2倍となる。
そこで、長期にわたる外来受診について、急激な負担増を抑制するため、2割負担になる人の外来受診の負担増加額を、最大の場合の月9000円の半分である月4500円とする、2年間の経過措置を設ける案も提示した。この措置の対象となる人は、2割負担となる人の約6割になる。
この日の会合では、5案のうち①の介護保険の2割負担の人は、本人収入が280万円以上なので、整合性がないとの意見が複数の委員から出された。また、一般層全体(約945万人)を選択肢に入れるべきとの意見や、②が妥当とする意見を複数の委員が述べていた。
前回の会合同様、経済界や保険者などの委員は、現役世代への負担減や医療保険制度の持続可能性などの観点から2割負担への引き上げを求め、医療関係者や老人団体の委員は、受診控えにより重度化し、かえって医療費が増加するなどの理由で反対の意見を述べたため、結論は次回以降に持ち越された。
なお、この日の会合では、大病院への患者の集中を防ぎ、かかりつけ医機能を強化するため、大病院で紹介状なしに受診する場合、初診料に5000円を上乗せする定額負担を、7000円以上に引き上げるとともに、対象病院を拡大する案も示された。