厚生労働省は11月12日に開催した社会保障審議会(厚労相の諮問機関)医療保険部会で、後期高齢者の医療費の自己負担を2割に引き上げた場合、課税所得が145万円未満では、1人当たり自己負担額が年間3万4000円の増加になるとの推計値を示した。ただ、負担割合が2倍になっても、負担額は2倍にはならず、4割増程度にとどまるとの見方も紹介した。
後期高齢者の自己負担を2割に引き上げる方針をめぐり議論した
昨年12月の全世代型社会保障検討会議の中間報告で、一定所得以上の後期高齢者の医療費の窓口負担割合を2割とするとの方針が示された。その際、具体的な施行時期や2割負担の具体的な所得基準、長期にわたり頻繁に受診が必要な高齢者の生活などに与える影響を見極め、適切な配慮を検討するとされている。
同省の昨年度の調査によると、高齢者の平均収入は50~54歳をピークに年齢を重ねるにつれて低下し、75歳以上の個人の収入は、50%以上が150万円未満の階層に分布していた。
また、外来診療を受けた患者のうち、受診した月数が2カ月以下の割合は、被用者保険と国民健康保険では約3割であるのに対し、後期高齢者医療では1割弱で、外来受診者の5割弱が毎月診療を受けていた。
さらに、課税所得が145万円未満で、世帯全員が住民税非課税ではない後期高齢者の自己負担の推計分布では、2万円超から3万円以下が14%強で最も多かった。この層を対象に、自己負担を現在の1割から2割に引き上げて試算を行うと、年間の自己負担額は、年間8万1000円から11万5000円になることが分かった。
この日の会合では、支払側や財界、識者の委員からは現役世代への負担を軽減することや、皆保険制度を維持することなどを理由に、2割負担への引き上げに賛同する意見が出された。一方、診療側委員からは、受診を控えるようになって重症化し、かえって医療費が増加するなどの理由により、引き上げに反対する考えが示された。また、引き上げるにしても段階的な引き上げを求める声や、引き上げるにしても2割が限界とする意見もあった。