視覚障害者が自立して街を移動するためのナビゲーションロボット「AIスーツケース」=写真=の開発を進めている次世代移動支援技術開発コンソーシアムは、昨年11月30日までと予定していた活動期間を1年間延長した。
また、実用度を高めた新しいモデルを開発し、東京・日本橋で実証実験を昨年9月から1カ月間実施し、成功している。
コンソーシアムはアルプスアルパイン、オムロン、清水建設、日本アイ・ビー・エムの4社が正会員となって活動している。
AIスーツケースは上部に壁や障害物との距離を計測する装置と歩行者を認識するカメラを搭載。ケースの内部にはバッテリーと画像認識装置、自立走行を制御する装置、モーターが入っている。ハンドルには操作ボタンと進行方向を伝える振動子が付いている。
視覚障害者はこのスーツケースと歩くことで、自立して街を移動し、日常の活動をスムーズに行うことができる。
実用モデルはバッグメーカーであるエースの協力により、走行時安定性の向上、交換可能なバッテリーの採用によるメンテナンス性の向上、発熱の低減などを実現した。また、市街地を連続走行できるようにソフトウエアも改良した。
このモデルを使い、三井不動産が管理する日本橋室町地区の5つのビルと東京メトロ三越前駅地下道を結ぶ市街域内の店舗や施設を自由に移動するパイロット実験を行った。
実験には40人の視覚障害者が参加し、実験開始前の数分間の練習だけで30分から1時間、安全に利用できることを確認した。参加者からは、「人とぶつからずに移動できて感動した」「自分一人で歩ける達成感がある」といったコメントが寄せられた。
コンソーシアムでは引き続き、障害者の生活の質の向上を目指し、AIを活用した先進的移動支援技術のさらなる研究開発を進めていく。
また、関係する組織と連携しながら、ビジネスモデルの確立や、制度・インフラストラクチャーの整備など社会実装のための課題解決にも取り組む。