順天堂大学大学院医学研究科の木村考伸大学院生、田部陽子教授らとシスメックスの共同研究グループは、人工知能(AI)の深層学習技術を使い、複数の血液検査結果を総合的に判断することで、血液疾患鑑別が可能な「統合型AI分析システム」を構築した。
このシステムを用いて、血液がんであるフィラデルフィア染色体陰性(Ph-)骨髄増殖性腫瘍患者の病型分類に対する網羅的解析を行い、高精度な自動鑑別が可能であることを実証した。
今回の成果は今後、骨髄増殖性腫瘍の鑑別にあたり、AI自動分析技術による末梢血を使った、迅速で簡便なスクリーニング検査・診断支援への応用につながることが期待される。
血液疾患の診断では、血球数算定検査や顕微鏡による血液細胞形態検査、細胞表面抗原検査、遺伝子検査など、複数の検査情報に基づいた総合的な判断が必要だ。
しかし、これらの検査に携わる熟練した検査技師や医師が不足していることから、AI深層学習技術を用いた血液疾患の診断支援のニーズが高まっている。
特に、血液がんのフィラデルフィア染色体陰性骨髄増殖性腫瘍は血液細胞形態での判別が難しく、病型分類が困難だった。
そこで今回の研究では、血液細胞形態のAI自動分析と、血液基本検査である血球数算定の測定結果を組合せたシステムによる、早期スクリーニング検査・診断支援システムの構築を目指した。
今後は研究成果の臨床実用化を進めるとともに、さらに多種類の検査データを組み入れることにより、汎用性のあるAI自動分析システムの構築を進めていく。
さらに、白血病などの血液疾患の確定診断に不可欠な、骨髄検査の自動化を次のターゲットとして、骨髄中の細胞の自動識別に挑戦し、確定診断に踏み込んだAIシステムの構築を目指す。