慶應義塾大学医学部の岸本泰士郎特任教授らとデータ解析企業のFRONTEOは、自然言語処理(NLP)を用いた「会話型認知症診断支援AIプログラム」を開発した。
高齢者と医療者の間で行う自由会話文を基に認知症を検知するもので、記憶や計算などの検査を行わなくても、認知症の識別が可能となる。
認知症の診断は通常、病歴の問診に加え、画像検査、記憶や計算力などを測る複数の認知機能検査によって行われる。
しかし、これらの検査は専門性が高く、検査を行う医療従事者が訓練を受ける必要があったり、時間がかかったりするなどの問題があった。
そこで、135人の協力者から合計432回分の会話を書き起こし、形態素と品詞への分解、ベクトル変換、機械学習を行った。
その結果、認知症への罹患を精度0.90、感度0.88、特異度0.92で判定することに成功した。この精度は3-5分程度の発話から得られる語彙数で実現できた。
このプログラムにより簡便に検査を行うことができ、医療従事者・患者双方の負担を軽減できる。
また、従来の認知機能検査の課題であった、検査を繰り返し行うことで被験者が検査内容を覚えてしまい、検査の精度が低下する「学習効果」を避けることが可能な技術として、スクリーニング検査などへの実用化が期待される。
研究の成果に基づき、FRONTEOは同プログラムのAI医療機器としての実用化に向けた臨床試験を実施。現在、臨床試験の結果を踏まえ、薬事承認へのプロセスを進めている。