厚生労働省の社会保障審議会(厚労相の諮問機関)介護給付費分科会は10月9日、第187回会合を開催し、2021年度介護報酬改定に向けた基本的な視点案を提示するとともに、各事業所に関する検討の方向性と論点を示した。
基本的な視点案では課題を「感染症や災害への対応力強化」「地域包括ケアシステムの推進」「自立支援・重度化防止の取組の推進」「介護人材の確保・介護現場の革新」「制度の安定性・持続可能性の確保」の5つに整理した。
感染症や災害への対応力強化では、日ごろから発生に備えた取り組みや発生時の業務継続に向けた取り組みの必要性、地域包括ケアシステムの推進では、在宅サービスの機能と連携の強化、医療と介護の連携の推進、看取りへの対応の充実、認知症への対応力向上に向けた取り組みなどが必要とした。
自立支援・重度化防止に向けた取り組みの推進では、リハビリ・機能訓練、口腔、栄養の取り組みを連携・強化して進めることや、ストラクチャー、プロセス、アウトカムの評価をバランスよく組み合わせた介護サービスの質の評価の推進、介護人材の確保・介護現場の革新では、ロボット・ICTの活用や人員基準・運営基準の緩和を通じた業務効率化、業務負担の軽減などを進めることの必要性を掲げた。
制度の安定性・持続可能性の確保については、評価の適正化・重点化や報酬体系の簡素化を進めるとした。
こうした基本的な視点案に沿って、定期巡回・随時対応型訪問介護看護と夜間対応型訪問介護、認知症対応型共同生活介護(グループホーム)、小規模多機能型居宅介護、看護小規模多機能型居宅介護、高齢者住まい(特定施設入居者生活介護)の各事業所に関する報酬・検討の論点が示された。
各事業所の検討課題のうち、特に委員から意見が多かったのは、グループホームの夜勤職員の配置を1ユニット1人から2ユニットに1人とするとの案。日本認知症グループホーム協会の調査で、夜勤をできる介護従事者が限られているため、夜勤のシフト調整に苦慮していると回答した事業所が半数以上あったことから、検討課題とした。ただ、同調査でも引き続きユニットごとに1人以上の夜勤配置を求める事業所が7~8割あったうえ、この日の会合でも現状を維持する意見が出された。
その理由として、委員から1ユニット1人でも夜勤の負担は重く、2ユニットでは過剰労働につながること、火災などが発生した場合、1人で2ユニットの入居者を避難させるのは困難なことなどが述べられていた。
また、小多機については、半数以上の事業所が赤字となっており、その要因として、契約終了者は重度の人が多い一方、新規契約者は軽度者が多いことがある。そこで、要介護度ごとの報酬設定のバランスを見直すことを検討する案が示された。
また、小多機と看多機では、事業所の登録定員に空きがあることを要件に、登録者以外の短期利用が可能となっていることから、宿泊室に空きがあるだけでは利用できず、登録者以外の緊急時の宿泊ニーズに対応できないことが課題となっている。この対策としては、宿泊室の空きを柔軟に活用できるようにするとの提案が示された。これらの検討案に関しては賛同する委員が多かった。