第23回 外国人介護職への訪問解禁を契機に

2024年 10月 25日

 厚生労働省が、「特定技能」や「技能実習」などで働く外国人介護職に、訪問介護に従事してもらう方針だという。実施は来年度の見通しだ。
 
 日本人の介護職は「初任者研修」を終えていれば、訪問介護に携わることができる。だが、外国人介護職は今は、さらに上級の資格である「介護福祉士」を取ることが、訪問を行う事実上の要件になっている。これを変更し、日本人と同じスキルがあれば訪問介護に従事できるようにするのだという。
 
■介護の本質は生活の継続を支援すること
 従事する要件に差を設けていた背景に、日本語によるコミュニケーションが不十分だと訪問介護はうまくいかない、という配慮があったことは理解できる。それはそうだろう。訪問介護では、利用者のニーズを汲み、個別のサービスを提供することが必要になるからだ。
 
 だが、訪問介護のノウハウを伝えずに、いったい今までどんな介護を伝授してきたのだろう、とも思う。介護の本質は、要介護の人の生活の継続を支援することのはずだ。
 
 自宅で利用者の生活を見て、どう暮らしたいかを聞き、日々の目的を共有し、どんなサービスで暮らしを支えるかを考える。その訓練なくしては、介護を本質的に理解できないのではないか。
 
 技能実習は特に、外国人に介護の技術を学んで持ち帰ってもらうことが目的なのに、介護の基本である「生活の継続」を教えずに…
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第24回 社会保険料引き下げは誰の首を絞めるのか🆕

 「現役世代の手取りを増やす」が、流行りの言葉らしい。そのために、税と社会保険料を引き下げるのだという。その先に何が起きるか分かっているのか? と思ってしまう。
 
 社会保険料を引き下げれば、給付は細る。保険制度は本来、負担と給付が見合うもので、制度を通して所得の高い人から低い人への再分配が行われる。だから、制度が細ったときに影響を大きく受けるのは所得の低い人だ。病気になっても医療を受けられなかったり、老後の防貧機能が薄くなったりしかねない。
 
 税や保険料を軽減して手取りを増やすと言っている人は、いずれ立場の弱い人にダメージが生じると分かっているのだろうか、と思う。
 
■治療断念を誘発しかねない
 象徴的なのが、今国会でもめた高額療養費の引き上げだ。医療費の自己負担に月額の上限を設けて、大病をしても、患者負担が高くなりすぎないようにする仕組みだ。「医療保険のセーフティネット」と呼ばれる。
 
 2025年度予算案に引き上げが盛り込まれたが、がん患者らの強い反対で修正された。長期療養の自己負担は現状維持となる。ただ、全年齢、全所得層で月額上限を引き上げる方針は変わらない見通しだ。
 
 目的は、保険料負担の軽減だという。つまり、病人の負担を上げて、日ごろの負担を減らすわけだ。本末転倒ではないか。
 
 皆保険制度の目的は、元気な時に少しずつ保険料を出しあい、命のかかった重病や大けがのときに不安なく治療を受けられるようにすることだ。家を売ったり、子どもに進学をあきらめさせたりしなければ治療できないようでは困る。
 
 しかも、厚生労働相の諮問機関、医療保険部会の資料によると、高額療養費の引き上げによる医療費削減効果には「長瀬効果」も見込まれている。長瀬効果とは、患者が負担を避けるために治療を断念するなどで生じる医療費の削減効果である。機械的な試算だというが、「よく、こんなこと書くなぁ」という印象だった。
 
 財務省の資料にも、「よく、こんなこと書くなぁ」という表記があった。2025年度予算案のポイント解説だ。高額療養費の引き上げによる社会保険料負担の軽減効果を…

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第22回 介護保険料の伸び率が低かった事情とカラクリ

 令和6~8年度の65歳以上の高齢者が納める介護保険料(第9期)は全国平均で月に6225円になった。
 
■整合性ある報道か
 マスコミは概ね、「こんなに高くなって大変だ」というニュアンスで報じている。あれだけ介護職の処遇改善が必要だと書きたててきたのに、保険料が上がると「高過ぎる」というのは、整合性がない気がする。
 
 資金は天から降ってこないので、処遇改善をするなら保険料の引き上げは致し方ない。覚悟と責任をもって記事を書いてほしいと思ってしまう。
 
 しかも、伸び率3.5%は過去8回の改定の中で下から3番目という低さだ。高齢者数は増えているし、6~8年度は介護職の処遇改善のために、介護報酬を1.59%も引き上げたのに、よくこの程度の保険料の伸びに収めた…

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第21回 医療も介護もプラス改定だけど、ホントは

 医療も介護も新年度からの報酬改定がまとまった。どちらも、かなりぎりぎりの内容である。表向きは「プラス改定」だが、人件費のベースアップを除けば、医療も介護もほぼゼロ改定だ。深刻さが世の中に共有されていないと思う。いくらか話題になったのは介護報酬の訪問介護だろうか。
 
■訪問介護引き下げの背景
 介護報酬は、介護職の処遇改善に0.98%、介護職以外の処遇改善に0.61%を充てて1.59%のプラス改定である。プラス改定の全てを賃上げに充てた格好だ。事業所の収入に当たる報酬はゼロ改定だ。
 
 そうはいっても、報酬改定は政策誘導のために行うものだから、上げる部分もあれば下げる部分もある。引き上げたのは、特別養護老人ホームなどの介護保険施設の基本報酬だ。事前の経営実態調査で赤字であることが分かっていた。
 
 ゼロ改定なのに、どこかを引き上げるには、どこかを下げて原資を調達するしかない。ターゲットになったのは…

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第20回 抗認知症薬レケンビの登場で生じる新たな懸念

 エーザイの抗認知症薬「レカネマブ(レケンビ)」が日本でも承認された。年内には薬価がついて医療現場に登場する。だが、気になることがある。
 
 今までよりも、「認知症早期」の診断を、多くの人が受けるようになる。レケンビの対象者が、アルツハイマー型認知症「早期」と軽度認知障害(MCI)の人だからだ。
 
 早期に検査を受ける人が増えて、確定診断を受ける人も増えるはずだ。その不安に対応できる社会になっているのだろうか?
 
 この人たちは、要介護認定を受けるには症状が軽い。行政サービスの網の目からはこぼれ、日々の暮らしや将来への不安を抱える人がむしろ増えるのではないか…

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第19回 公式見解と現場感覚が乖離するケアマネ不足

 医療と介護2040でも特集している通り、現場のケアマネジャー不足が顕著なのである。
 
 旧知の介護事業者から、「足りないのは介護職じゃなくてケアマネですよ。このままだと、ケアプランを作れなくなるんじゃないですかね」と吐露されたのが半年ほど前。ただ、地域差もあるのか、厚生労働省の資料では数値で明確に裏付けられてはいない。
 
 厚労相の諮問機関「介護給付費分科会」に6月に出された資料では、居宅介護支援事業所におけるケアマネジャーの従事者数は2021(令和3)年に11万7000人。19年の11万8000人から1000人減っているが、20年からは変わっていない。厚労省は…

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