「増大する社会保障費をどう賄うか」という問いに対し、これまでどのような議論が行われてきたのであろうか。
前回で紹介した橋本内閣の財政構造改革が挫折した後に登場した小渕内閣において…
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■練馬区が実施する死亡小票分析
筆者は2020年から東京都練馬区在宅療養推進協議会の会長を務めている。練馬区では、2011年から区民の「看取り死」(死亡診断書が発行された死亡=後述)の状況を分析している。「練馬区死亡小票分析」と呼んでいるが、厚生労働省が実施する人口動態調査の死亡票を区独自に集計・分析したものである。
この2020年の結果について、社会保険旬報のコラム「霞が関と現場の間で」(2022年4月1日号)で「東京都練馬区における『看取り死』の状況」と題し取り上げたことがある。
2020年は新型コロナウイルス感染症の蔓延に見舞われた年であり、これが練馬区における「看取り死」にどのような影響を与えたか、注目に値すると考えたからである。
2023年3月、2021年中に死亡した練馬区民を対象とした2022年度の死亡小票分析が公表されたので、その結果を紹介したい。
その前に、なぜこの死亡小票分析に注目するのかについて説明したい。この死亡小票とは、厚生労働省が実施する人口動態調査の死亡票を練馬区が独自に集計・分析したものであるが、このような取り組みをしているのは、東京都23区では練馬区のみであり…
■世田谷区とのお付き合いの発端
厚生省・厚生労働省に勤務していたときは公務員宿舎住まいであった。スウェーデン勤務や北海道道庁勤務で東京を離れた時を除き、目黒区と世田谷区の公務員宿舎で暮らした。
厚生労働省を退官して、現在は多摩川に近い世田谷区上野毛に住んでいる。世田谷区民である。
1990年に厚生省の老人福祉課長となった際、全国の市町村に老人保健福祉計画を策定してもらうことになった(1990年の福祉八法改正の結果)。担当課長として、計画策定のマニュアルづくりをすることとなった。
ところが当時、東京都、とりわけ特別区である23区との情報に乏しく、接点を求めた。そこで23区の老人福祉担当課長会とのお付き合いができ、何人かの課長さんとは交際が深まり、交流が長く続いた。
厚生労働省を退官し、医療介護福祉政策研究フォーラムを2012年に立ち上げた。最初にフォーラムで「首都大都市部における地域包括ケア推進に関する研究」をすることとなり、研究会を組織した。
そこに東京都庁と特別区の職員にも参加してもらうこととなり、世田谷区の副区長であった秋山由美子さん…
2023年最初の原稿なのでまずは、ご挨拶から。年末年始、どのようにお過ごしでしたか。よい年明けを迎えられたでしょうか。
私は、年末年始を京都で過ごしました。私たち夫婦には3人の子(長女、長男、次女)がおり、次女夫婦が京都に住んでいます。長男夫婦は現在大阪におり、昨年、両夫婦に第一子が誕生しました。
そこで、東京にいる私たち夫婦と長女夫婦(小学1年生の息子がいる)が京都に行き、お正月に京都で「一族集合」となりました。初めて京都で迎えるお正月でしたが、いつもは混雑する観光スポットも年末は空いており、なかなか良いものでした。
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1月4日、岸田首相は「異次元の少子化対策」を打ち出しました。年末に政府がまとめた来年度予算案では防衛費が大幅に伸びました。その財源をどうするか、増税するか否かが焦点となりましたが、一応増税ということで決着しました。
首相が増税にこだわった結果ですが、今国会には増税法案を提出しないという妥協の上です。自民党内の政争の火種になるという見方も強いようです。
首相は昨年4月に「将来的な子ども予算倍増」を約束していました。しかし、昨年10月の国会答弁で、子ども・子育てについては今年の骨太方針で取りまとめると、早々に先送りをしました。
年明け早々の「異次元の少子化対策」発言は、「防衛費だけ突出」という批判をかわす狙いがあるのだと思います。
首相の指示で、少子化政策担当大臣の下に設置された関係府省会議で3月中に少子化対策の内容を固めるとしています。肝心の財源問題は、統一地方選挙前の議論を避け、例年6月に決定する骨太方針までは明らかにしないのではないでしょうか。
1月19日の関係府省会議の初会合では、①児童手当などの経済支援…
3 貧困・格差の問題
以上のような状況の下で、日本は不平等社会になっているのだろうか。1990年代以降、経済の低迷が続く中で貧困・格差の問題が取り上げられるようになり、2006年1月には「月例経済報告等に関する関係閣僚会議」でも「経済的格差の動向」が議論されるようになった。
厚生労働省では、3年に1度、所得再分配調査を実施し、ジニ係数…
前回に続き、社会保障をめぐる論点について取り上げる。今回のテーマは「回復しない所得と貧困・格差問題」である。
1 所得等の動向
1990年以降の日本の経済的な低迷は著しい。1990年から2020年までの30年間、日本の国内総生産(GDP)は…
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