中澤まゆみ ノンフィクションライター
デイサービスやショートステイなど、通所系・短期入所系事業者に対して、厚生労働省が6月1日から特例措置で始めた介護報酬の上乗せに、混乱が広がっている。
■利用者は悩み事業所は困惑
この「特例」では毎月一定の回数に限り、実際にサービスを提供した時間に基づく報酬よりも「2区分上位の報酬」を算定できる。たとえば2時間以上3時間未満の場合、4時間以上5時間未満の報酬を受け取ることが可能だ。しかし、介護報酬は利用者の自己負担に直結している。サービスを提供していない時間の報酬を上乗せし、それに対して利用者に負担を求めるという、なんともおかしな措置である。
6月中旬、友人から、「ふう、なんだかなぁ」というため息とともに、SNSメッセージが入った。母親が利用するデイサービス事業所から……
現場の声が行政を動かし訪問介護の感染対策が前進した(下)
中澤まゆみ
ノンフィクションライター
■密になる訪問介護の感染対策が手薄だった
現場の声を行政に、と考えたのは、私自身が介護の現場に実際にかかわっていたことも大きかった。講演の仕事が次々とキャンセルされ、時間ができたため、この際、コロナ下の介護の現場を見てみようと、4月から契約で訪問介護を開始した。週2回の“なんちゃってヘルパー”だが、そこで最初に気がついたのが、訪問介護での新型コロナへの感染対策への手薄さだった。
採用された大手事業所から渡されたのは、研修テキストをコピーした実に簡素な「感染対策の基本」A4裏表1枚と、ノロウイルス対策用キット(マスク、使い捨て手袋、ビニールエプロン、説明書1枚)のみ。仲間の介護事業者に聞くと……
現場の声が行政を動かし訪問介護の感染対策が前進した(上)
中澤まゆみ
ノンフィクションライター
■介護従事者の状況が報道されない
5月25日、首都圏と北海道で発令されていた新型コロナによる「緊急事態宣言」が、1か月半ぶりに解除された。「この半年は、コロナで終わっちゃったね」と、友人たちとため息交じりで苦笑する日々だ。
今回のコロナ禍では、これまでなおざりにされてきた多くの問題が噴出した。医療では感染症に対する認識の低さ、経済では非正規労働者やひとり親家庭に対するセーフティネットの弱さ、社会的には日本社会の根源にある同調圧力など、数えるにいとまはないが、ダメージを受けているのはいずれも「生活者」であり「弱者」だ。介護でも感染に対する対策の遅れと、利用者を支えるサービスの脆弱性が、大きく浮かび上がっている。
国内で「新型肺炎」の初の感染者が報道されたのは今年の1月16日。その後、武漢市が閉鎖され……
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