上越5e協議会と丸互(新潟県上越市)、NTT東日本は、2024年8月から25年3月まで上越市の複数の介護事業所で「tsuzumi」を活用した業務効率化を目的とする実証事業を行い、業務効率を56%向上させることに成功した。
tsuzumiはNTTが開発した、軽量でありながら世界トップレベルの日本語処理性能を持つ大規模言語モデル(LLM)。同グループでは、これを使った商用サービスを24年3月に開始した。
今回実証を行った介護事業者では、利用者1人あたり1日の介護記録の登録に約40分かかっていた。そこで、パソコンのキーボードから手入力をする代わりに、スマートデバイスを模擬したノートパソコンから介護士が音声により報告内容を入力することにした。
その上で、tsuzumiを通じて音声認識した言葉を適切に文字化する「校正」と、音声認識した言葉を介護記録の適切な項目に仕分ける「仕分け」を行い、食事や排せつ、入浴などの介護記録として自動記録する実証を行った。
また、実証構成としては介護システムの提供を行っている丸互の事業所にtsuzumiのサーバーを設置し、NTT東日本のフレッツ・VPNプライオ回線を経由して遠隔にある介護事業所に接続して実証した。
2つの介護事業者の複数の介護士を対象として「体温や血圧などのバイタル」「入浴」「排泄」「食事」「レクやリハビリ」「その他の記録すべきケース」の記録業務を対象にランダムに実施し、業務効率化とtsuzumiの正答率の2つの観点で評価を行った。
その結果、業務効率化は56%(1人あたりの1日の介護記録の登録にかかっていた時間を、39分から17分へ削減)、tsuzumiの正答率は78%となった。
今後、丸互は介護システムとの連携のためのAPIを開発し、介護システムベンダーとの共創と商用化に取り組む。NTT東日本は誤認識となった出力部分の分析を行い、正答率の向上に向けてtsuzumiの改善を図り、将来的にはスマートデバイス化・フリーハンドによる記録を目指す。
なお、上越5e協議会は上越市の産・官・学・金・民の協力連携のもとで IT を活用することにより、ビジネスやスポーツ、教育、観光、健康など、さまざまな分野が抱える問題の解決を図り、地域活性化や生活の質向上を目指す団体。