簡単に送迎計画作成の「らくぴた送迎」提供 施設の枠を超えた福祉介護・共同送迎サービス「ゴイッショ」も展開〔ダイハツ工業〕🆕

2025年 5月 14日

 ダイハツ工業は2018年から提供している送迎支援システム「らくぴた送迎」により、デイサービスの業務負担の約3割を占める送迎の効率化を進めている。さらに22年から提供を開始した福祉介護・共同送迎サービス「ゴイッショ」によって、地域全体での効率的な送迎システムの構築を目指している。

利用者カードを車両の枠に移動して作成
 らくぴた送迎を開発することになったのは、15年4月に社内で福祉の専門チームを立ち上げ、同社の社員がダイハツディーラーと一緒に全国の介護施設へ福祉車両の訪問営業をする中で、デイサービスでは送迎計画の作成に苦労しているという声を数多く聞いたことがきっかけだ。

タントスローパー

ダイハツの福祉軽車両「タントスローパー」

 そこで聞いた現場の苦労の声を基にして、らくぴた送迎の開発を進め、システムと専用スマートフォン(スマホ)により「送迎前」「送迎中」「送迎後」の各シーンで課題を解決するソリューションとして提供を開始した。

 クラウドサービスなので、パソコンとインターネットが使える環境なら、ソフトをインストールする必要がなく送迎計画を作ることができる。申し込み後に1事業所あたり1ライセンスを発行する。利用料は1万5000円/月(税込み1万6500円/月)。

 送迎中・送迎後のサービスを利用するには専用モバイル端末(スマホ)が必要で、3000円/台(同3300円/台)とモバイル端末保証料273円/台(同300円/台)でレンタルする。

 送迎計画の作成では、まず準備として「利用者マスタ」「車両マスタ」「職員マスタ」「事業所マスタ」の各項目に必要情報を入力する。

 利用者マスタには利用者の情報を入力するが、らくぴた送迎が連携している「ワイズマン」だけでなく、他の介護記録ソフトからもCSVデータを読み込むことで、すべての利用者の名前や住所、生年月日、電話番号、利用日などの基本データを一括して入力できる。

 あとは車いすや歩行器のあるなし、家の道が狭い場合などの軽自動車専用、相性が合わない利用者、希望する移動時間、薬などの持ち物といった詳細情報を入力することで利用者マスタは完成する。家と利用者の写真なども入れられるので、初めて行く職員もスマホを使えば家や利用者を間違えることはない。

利用者カード

送迎表には詳細情報が入力されるので、初めて行く職員も間違えることはない

 車両マスタには車の種類や乗れる人数、車いす搭載の可不可など、職員マスタには担当業務や運転可能な車両サイズなど、事業所マスタには事業所の情報を入力する。

 計画策定画面にはカレンダー機能があり、日を選ぶとその日の車両と利用者のデータが画像の形で出てくる。作成者は、利用者の名前が表示されたホワイトボードのマグネットのような四角い枠をドラッグし、各車両に移動させるだけで送迎表が作れる。利用者の座席位置の設定が行えるオプションもある。

 開発担当者である福祉介護MaaS分野介護ソリューショングループの日野昌浩グループリーダーによると、このカード状の枠を動かすだけで計画が作れるのが特長で「利用している施設の職員たちから特に好評を得ている」という。

日野氏02

日野昌浩グループリーダー

 ゼロから計画を作らなくても、自動作成機能で作成した計画を参考にしたり、前週の同じ曜日の計画やベースプランをコピーしたりすることも可能だ。

 送迎希望時間や車両、相性などに関して間違いがあった場合はエラーが表示されるので、そうした誤りが避けられる。また、ルートと送迎順を地図上に表示させられるため、新規利用や臨時利用の利用者があった場合、地図を見ながらそうした人を送迎ルートに組み込むことにより容易に対応できる。

 ルートが地図上へ表示されることは、初めてそのルートを走行するドライバーの不安を解消することにもつながる。この地図も含め、画面のデザインと表示が見やすいことも特長だ。なお、職員は作成した計画を、プリントアウトかスマホの画面で確認する。

蓄積した送迎記録で計画を改善
 送迎中は施設のパソコンと車両のスマホが連携しているので、施設からは車両の位置がリアルタイムに把握できる。これにより、利用者からの到着時間の問い合わせに回答したり、施設で出迎えの準備ができて混雑を回避したりする。

 利用者の送迎が完了し、スマホで次の利用者への送迎を開始する“出発”ボタンをドライバーが押すと、施設側のパソコンの送迎状況確認画面の利用者カードには送迎完了を意味する「✓(チェックマーク)」や、その人の送迎終了時刻が記録される。

 次の利用者に、1つ前の利用者宅を出発したことを自動電話で通知する機能もある。スマホで利用者に関する申し送り事項が確認できるため、ドライバーが変わっても引継ぎが不要だ。

 利用者の急なキャンセルがあった場合、ドライバーのスマホにメッセージと音声で連絡が入ることから、電話に出るために停車する必要がなくなり、スムーズな運行につながる。

 利用者に電話連絡が必要な時は、名前の横に電話番号が表示されているので、いちいち調べなくてもそれをタップするだけで電話がかけられる。

管理画面(利用者カードと地図)

管理画面のデザインと表示が見やすいことも特長だ

 送迎後はスマホに入力された実績が運行記録として蓄積され、月々の満席率や乗車時間などの記録がグラフで表示でき、計画の分析・改善に役立つ。このような乗車時間の分析により、他の人に比べて乗車時間が長い人がいることが分かれば、その人の負担を軽減させるため、計画が見直せる。

 あるいは、遅れたり早く着いたりすることが多いドライバーがいた場合、技量の問題なのか、ルートに無理があるのか、計画を詰め込みすぎているのか、といったことの要因分析が行える。

 「なんとなく遅れているのではないか」という感覚の問題ではなく、数字を見てドライバーとともに原因を突き止めることができる。

 その他、各利用者の移動時間・乗降時間の実績を学習し、その時間が計画に反映されることで、使えば使うほど、一層精度の高いものになる。

 また、日野氏が「開発した自分たちにとって、思いもよらない使い方をしていた」と話す実例がある。

 利用者が乗り降りに要する時間も記録できるが、ある施設では利用者の1人の乗降時間が延びているように感じていた。「要介護度が上がっているのではないか」と考え、記録を見たところ、半年前に比べて乗降時間が延びていることが明確に数字で示された。

 それをケアマネに伝えて調べてもらった結果、実際に要介護度が上がっていることが判明した。これにより、施設とらくぴた送迎の信頼が得られ、ケアマネから施設への新規利用者の紹介が増えたという予想外の成果もあった。

 送迎記録は3年間蓄積されるので、監査の際に活用できる。ただ、自治体によっては5年分の記録を求めるところがあり、施設からは年数の延長を求める声があるため、検討中だ。

地域全体で共同送迎へ
 このように、らくぴた送迎は各施設の送迎計画の作成や送迎自体の効率化に貢献するが、それを一歩進め、各施設が単独で行っている送迎業務を共同で行うことで、地域全体で送迎の効率を向上させるのが共同送迎サービスである。

 地域の中で送迎の運営や運行を管理する外部の団体を募って送迎の管理業務を集約し、複数施設の利用者が乗り合って各施設に通う仕組みである。

ゴイッショ_共同送迎の図

共同送迎のイメージ

 システム自体は基本的にらくぴた送迎と同じだが、地域全体のサービスになるため、利用者数が多く、しかも施設ごとの利用者数や利用者の条件などが異なり、データ処理が非常に煩雑になる。

 また、地域ごとの課題や目的が異なるので、それぞれの地域に合うように独自の仕組みを作っていく必要があることから、ダイハツはシステムを提供するだけでなく、仕組みの構築に対し、コンサルタントの形で支援することになる。

 具体的な進め方としては、自治体や地域の団体と連携協定や業務委託契約を締結するなどして、初年度は地域の介護サービスに関する課題を調査して共同送迎サービスの成立性を検証する。

 なお、ゴイッショは自治体が主体的に進める必要はなく、社会福祉法人など民間の事業者が主体的に推進することも可能だ。

 初年度以降は、運営主体とともに運営やマニュアルの構築など運営に必要な土台作り、介護施設との送迎に関する諸条件の調整・交渉などをサポートして社会実装に向けた準備を行うほか、共同送迎サービス導入後も参加施設や運行区域の拡大に向けた取り組みなどを支援する。

 すでに香川県三豊市と滋賀県野洲市が本格導入しており、三豊市では「一般社団法人みとよ交通システム事業団MiLAIS」(25年3月までは社会福祉協議会)が運営主体となって市内の介護施設などの送迎業務を集約しており、運行を地域のタクシー会社に委託した体制で22年6月から共同送迎を実施している。

三豊市実証事業

三豊市で本格導入前に実施した実証事業から

 一方、野洲市では一般社団法人が運営・運行主体として市内の介護施設などの送迎業務を集約しており、昨年10月からは日中の空き車両を活用して、市内の総合事業の利用者に対し、ショッピングセンターなどへの送迎による買い物支援を行っている。

 そのほか、島根県出雲市と岡山県高梁市で昨年から実証実験を行い、高梁市とは共同送迎サービス事業の実装に向けて25年3月28日に同市の社会福祉協議会を含めた三社連携協定を締結した。

 日野氏によると、共同送迎について「複数の施設持っている法人が送迎を束ねたいとか、10施設のうち7施設は共同送迎を行い、3施設は単独で送迎したいといったさまざまな要望や問い合わせが寄せられている」ことから、同社では今後、そうしたさまざまな送迎に関する共同化を検討していく考えだ。

このカテゴリーの最新の記事

介護施設向けシフト自動作成サービス「miramos」発売 特許出願技術で作業時間を大幅に短縮〔コニカミノルタ〕🆕

 コニカミノルタはこのほど、AIを搭載した介護施設向けシフト自動作成サービス「miramos(ミラモス)」を発売した。特許出願中の「夜勤・公休先行配置」により、少ない手直しで完成でき、シフト表作成にかかわる作業時間を大幅に短縮した。
 
■介護施設の要請でシフト作成ソフトを開発
 以前は複合機のソフトウエア開発を行っていた、デジタルワークプレイス事業本部miramosプロダクトオーナーの森田光貴さんがこのソフトを開発することになったのは、介護関連の機器・システム開発を行っているQOLソリューションズ事業部からの相談がきっかけだった。
 
 複合機は成熟した市場なので、新規事業を模索していたところ「介護報酬制度では加算の取得が必要不可欠だが、その要件が複雑なので介護施設が困っている。なんとかできないか」ともちかけられたのである。
 
 シフト表から解析すれば、加算の要件を満たすかどうかをチェックできることがわかり、協力してくれることになった複数の介護施設からシフト表を提供してもらい、どのような加算が取れるかを判定してくれるソフトを開発した。
 
 それを持って施設に行ったところ、既存のシフト作成ソフトは使い勝手が悪く、依然としてExcelや手書きで作成しているので、シフト表も作ってほしい、との要望が寄せられたためmiramosを開発することになった。
 
 2023年4月に着手。最初は施設側から「完璧なものじゃなくても、ベースができるだけですごくありがたい」と言われたこともあり、9割ぐらいの完成度でシフトを作成するソフトを作った。
 
 「これでいけるだろう」と最初は思っていたが、施設に持って行ったところ、使ってもらえなかった。実は残りの1割の部分が重要で、そこが既存のソフトが使われていない原因だったのである。中でも最大の問題が「夜勤」をずらすことだった。
 
■2段階でシフトを組むことで課題を解決
 通常、夜勤は「夜勤明け」「公休」とセットになっており、夜勤をずらすと、3日分をずらさなければならない。
 
 その3日先に「早番」「遅番」などが入っていると、それもずらすか、他の人に振り分ける必要がある。そうすると、玉突き状態で次々に修正しなければならず…

この記事は有料会員のみ閲覧できます。

介護タクシーで高齢者が気軽に外出できる社会へ 予約アプリ「よぶぞー」を提供〔IT FORCE〕🆕

 企業向けのシステム開発を行うIT FORCEが2023年3月から提供している、介護タクシー予約アプリ「よぶぞー」の登録者数が5000人を突破した。同社ではこのアプリの利用が広がることで、高齢者が気軽に外出できるようになることを目指している。
 
■開発のポイントは社会貢献とビジネスの両立
 同社は06年に創業し、14年から米セールスフォースのコンサルティングパートナーとして、営業支援や顧客管理など、業務を効率化するシステム「セールスフォース」を国内企業に導入する支援を行っている。
 
 業務の拡大を図るため、20年ごろから陰山光孝社長をはじめ経営陣が今後の方向性を検討したところ、蓄積したデジタルやITの技術を活用して社会に貢献していくことが、結果的に企業の発展につながるのではないかとの結論に達し、社会課題に挑戦していくことになった。
 
 介護タクシーに着目したのは「そのころドライバー不足と、団塊の世代が後期高齢者になるという課題がメディアを賑わせており…

この記事は有料会員のみ閲覧できます。

インナータイプのアシストスーツ「DARWING UT-Rise」発売 薄く涼しく着やすさを追求〔ダイヤ工業〕🆕

 ダイヤ工業(岡山市)はインナータイプのアシストスーツ「DARWING UT-Rise(ダーウィン ユーティーライズ)」を発売した。現在、アシストスーツは服の上から装着するアウタータイプが主流だが、装着性の良いインナータイプを普及させることで、さまざまな現場で働く人にとって、アシストスーツがより身近なものになることを目指す。
 
■筋肉スーツからアシストスーツへ
 ダイヤ工業は1963年の創業で、主に接骨院・鍼灸院・クリニックなどに向けて、日常用・スポーツ用サポーター・コルセットの開発・製造・販売を行っている。
 
 同社がアシストスーツを手掛けるようになったのは、筋肉スーツを製品化したことがきっかけ。「首から指先までほぼすべての部位のサポーターを作っており、サポーターの集合体のようなものを作りたいと考え、全身筋肉スーツを開発することにした」と広報の藤原舞利子氏は説明する。
 
 特徴は「二層構造で膝を持ち上げるパーツがあるので歩くのを補助したり、腰のサポートパーツが腰を支える機能を設けたこと」(藤原氏)。
 
 高齢者がいつまでも元気に活躍するサポートがしたいと考え開発したものの、スポーツから作業現場での労働支援など、特にジャンルは特定しなかったが…

この記事は有料会員のみ閲覧できます。

介護施設向け誤薬防止アプリケーション「メディアシ」 タカゾノの分包機と連携し手間をかけずに服薬を確認〔理経〕🆕

 技術商社の理経(東京都新宿区)は介護施設向けの誤薬防止アプリケーション「メディアシ」を開発し、6月から提供を開始した。グローリー社のエンジンを利用した顔認証技術と、薬局向け製品などを製造するタカゾノ(大阪府門真市)の分包機を連携することで、介護現場での主要事故の1つである誤薬を、手間をかけずに防止することを可能にした。
 
■自社開発の顔認証技術を活用
 1957年創業の理経はIT・エレクトロニクスの専門商社で、システムソリューション、ネットワークソリューション、電子部品及び機器という3つの分野で事業を展開している。
 
 商社なので基本的には国内外のメーカーの製品を顧客に提供したり、組み合わせてソリューションとして提供したりしているが、自社開発も行っており、顔認証システムもその1つだ。
 
 メディアシを担当するAIシステムセールスグループの鈴木利之グループ長によると、この技術を使ってメディアシを開発することになったのは、2年ほど前にタカゾノの販売代理店の方と話をしている中で「高齢者施設では誤薬の問題が結構あり、薬局にいろいろ相談が来ているけれど…

この記事は有料会員のみ閲覧できます。

患者情報の共有をICT化 ベッドサイド情報端末「ユカリアタッチ」開発・販売〔ユカリア〕

 病院の経営支援・運営支援をはじめ、ヘルスケア市場において広範囲にわたる事業を展開するユカリア(東京都千代田区)は、医療従事者向けベッドサイド情報端末「EUCALIA TOUCH(ユカリアタッチ)」を開発し、普及に努めている。6月18日には新製品「EUCALIA TOUCH with(ユカリアタッチウィズ)」の販売を開始し、来年1月から順次納品・稼働する予定だ。
 
■医療現場の業務改善のためにユカリアタッチを開発
 ユカリアは2005年に設立された。さまざまな理由により経営的な課題を抱える病院に対して、戦略立案・資金調達・共同購買・地域連携・人材確保・建替え対応など、あらゆる機能を提供し、経営の抜本的な改善と持続的成長を支援する病院経営サポートが同社の中核事業である。
 
 コンサルタントに限らず、時には同社に所属する医師、看護師などの専門チームを派遣し、あらゆる面において伴走支援が可能である点が強みである。
 
 日本の病院の7割が赤字という中で、「ヘルスケアの産業化」をビジョンとして掲げ、「医経分離」を提唱し、医師をはじめとする医療者はその専門性の発揮に注力し…

この記事は有料会員のみ閲覧できます。

1週間無料でお試し購読ができます  詳しくはここをクリック

新着記事は1カ月無料で公開

有料記事は990円(税込)で1カ月読み放題

*1年間は1万1000円(同)

〈新着情報〉〈政策・審議会・統計〉〈業界の動き〉は無料

【アーカイブ】テーマ特集/対談・インタビュー

コラム一覧

【アーカイブ】現場ルポ/医療介護ビジネス新時代

アクセスランキング(7月7-13日)

  • 1位
  • 2位
  • 3位 90% 90%
メディカ出版 医療と介護Next バックナンバーのご案内

公式SNS